第6話 -二日目-対抗戦の説明
HRの時間
「今日はクラス別縦割り対抗戦についての説明を行う。」
HR担当の教師がそう言って説明を始めた。
「この対抗戦は高等部最大の行事であることは当然、全員知っているな?」
この教師の言う通りクラス別縦割り対抗戦とは魔法機関高等部が行う最大の行事であり、その試合の様子は全国で放送されているのだ。
魔法が普及する社会になってそこそこ日が経っているが、すべての人が魔法を使えるわけではない。この放送は魔法が身近でない人たちにも、魔法について知ってもらうためにと行われるようになったものだ。
「詳細はまあ知っていると思うが、この対抗戦は3種類の競技で行われる。」
「学年を問わずチーム内で5人一組の代表チームを作り戦う選抜戦争試合ウォーゲーム、年に6回行われる筆記テスト、各学年それぞれのクラスの中から一人の代表を選出し、競い合う個人戦の3つだ」
このうち放送の目玉となるのはウォーゲームだ。
筆記テストは普通にテストとしての意味も持っているため、放送はされていない。
担当教師からここまで説明が入った後、生徒から質問が出る。
「今日ここで試合代表を決めるのですか?」
すると教師はその質問を待っていたといわんばかりに「そうだ」と答える。
「今年最初の対抗戦は2週間後に行われる」
「なかなかハードなスケジュールだが選ばれたメンバーは頑張ってくれ」
するとまた別の生徒から質問が出る。
「対抗戦には報酬があると聞きましたが何が報酬なのですか?」
その質問に教師は一瞬ためらう様子を見せるも答える。
「専用魔具だ」
教室がどよめきに包まれる。
全国的に有名な対抗戦だが機関内でも高等部に上がるまではその報酬は隠されており、高等部生以上の関係者も全員他言無用となっていたため、進級したての一年生は毎年これを聞かされて驚くのが恒例だそうだ。
魔具とは魔法発動を補助したり、魔法の威力を向上させたりする魔法専用の道具である。
魔具の有る無しで魔法使いの能力は大きく変わる。
この魔具は森林化現象で現れた植物や魔獣などを利用し、
森林化で現れた植物を加工できるという情報は魔具の存在を知っている者でも知らない者がほとんどだ。
「この話は絶対に他言無用だ。機関本館以外では絶対に口にしないように」
教師が語気を強めに生徒たちに言いつける。
教室は騒然とし中々静まらなかったが、また新しい質問によって落ち着きを取り戻した。
「メンバーはどうやって選ぶんですか?」
「基本的には今までの成績が重要視されるが、ウォーゲームにおいては魔法の相性なども重要だからな。自薦でも他選でも構わない出場したいものはいるか?」
教師がそう言ったとたん生徒全員の目が一人の生徒に向けられる。
それまでぼーっと聞き流していた龍仁は居心地の悪さを覚える。
すると星が手を挙げる。
「推薦です。個人戦は龍仁様で決定でいいと考えます」
「おい星、いきなり決定なんて……」
周りを見ながら俺が反対しようとすると、全員が星の方を見て頷いている。
……まあ、異論がないのなら下手に抗うのも面倒だ。
「よし、じゃあわかった。みんながいいなら個人戦の代表は請け負おう」
負けても知らないぞ?というと星が「龍仁様が負けるはずありません」と確信した表情で言っていた。
生徒全員の一致に呆気に取られていた教師はそこでようやく調子を取り戻し、「よし、では個人戦の代表は黒命君に決定だな?」と最終確認を行った。
「では、ウォーゲームの方も決めてしまいたい。こちらは学年別ではないため候補という形になるが……」
すると先ほどとは一変して教室内が騒がしくなる。
それもそのはずまだ俺たちは先輩に会ってすらいないのだ。中等部以前で面識はあるかもしれないが全員と知り合いということもない。
さらに報酬があの魔具だということが判明したのだ。騒がしくなるのも無理はないだろう。
仕方ないと龍仁は「推薦です、と言って手を挙げた」
教室中がまた龍仁の方を向く。
「黒命君誰かね?」
「複数人でも構いませんか?」
「いいでしょう」
「では、銀世星と紫乃雪乃を推薦します」
そう言うと教室はまぁそうだろうなという空気に包まれた。
しかしそこで星から声が上がる。「龍仁様に推薦していただけるのはありがたいのですが……私はその……」
「わかっているよ星、今日確認を取りに行こう。無理なら雪乃が頑張ってくれるはずだ」
思わぬ提案に星は顔をほころばせ、雪乃は恥ずかしそうな顔をしていた。
「ほかに推薦はいないか?」
「まぁ、このクラスは三人が突出してるからなぁ」
教師の質問にあきらめの混じった声で生徒が反応する。
すると別の女子生徒は期待したような声で質問をした。
「先生、学期末一位のクラスには全員に報酬があるんですよね?」
「ああ、そうだな。しかしそちらは魔具ではないぞ?」
「そうですか、でももらえるならやっぱり実力で選んで勝ってもらう方がいいよね」
「ははっ、それもそうだな。全員これでいいか?」
教師が最終確認を行い、誰も反論しなかったため無事にウォーゲームの候補メンバーも決定した。
「代表にならなかった者たちも筆記テストの総合点には関わるのだから勉強は怠ることのないように」
決まり文句のように生徒を諫める。
「それとウォーゲームの顔合わせは明日の放課後だからそのつもりでな」
最後にそういうとHRの時間は終わっていないにもかかわらず教師は教室を出ていった。
俺は適当な教師だなあと考えていると後ろを向いた星から声をかけられた。
「龍仁様、あの今日は……」
何かを期待するような照れているような表情と声。
「そうだな、授業が全部終わったら、星の家に行って確認をとろう」
そう言うと星は「その……龍仁様の魔装車で一緒に行っても構いませんか?」と聞いてきた。
「ああ、もちろんだよ。一緒に行こうか」
「はい!」
最高の喜びと言わんばかりの表情をする星を雪乃は羨ましそうな目で見つめていた。
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