目当てはそこだけ

 夏休み、なんの予定もない暇人の大学生がやることと言えば夜通し安酒を飲んで映画を見るくらいで、その延長で行った心霊スポットでは霊障と主張できるか微妙な程度の現象くらいしか起こらなかったはずなのだが、それからというものいつも雑な言動ばかりしていた先輩が品行方正になったり、かと思えばこだわりのないモノトーンばかりだった服が派手な柄のシャツになったり眼鏡がコンタクトになったり爪が赤くなったりして、明らかに別人のようになってはいたが顔立ちや体格に声なんかは先輩のままだったので、ガワが同じならなんの問題もないかと飲めなかったはずのブラックコーヒーを啜る先輩を眺めている。

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