たられば

もう少し早く出会えてれば

もう少し遅く生まれてれば

もっと勉強ができれば

もっとユニークさがあれば

もっと賢ければ

もっと可愛ければ

もっともっともっともっと


初めての経験、恋人がいる人を好きになった。

聡明な言葉の節々から知性を感じる人だ。

年齢が私より下なのに年上に思えた。

私が見てきたどの年下の人たちとも違う雰囲気を持っていた。

初めて見る人種に私は惹かれ、魅了された。

賢い人独特のとっつきにくい雰囲気はなく、話しやすい。

人の意見を否定することはなく、そんな考え方もあるよねと真摯に受け止める。

好奇心が旺盛で、沢山話を降ってくれた。

自分自身にすごくストイックで自分のやりたい事・やる事には妥協をしない印象を受けた。

顔も好きだ。凛々しい眉、キリッとして吸い込まれそう目、綺麗な鼻筋、バランスの取れた口。

何も文句がない、どこを見ても格好がついている。

私が接していても賢さが滲み出てくる。

しかし嫌な感じがしないのだ、全く。

自慢するでもなく、驕り高ぶるでもなく、ただ謙遜。

人間としての人格ができているのだろうなと、思うと同時に年齢と精神の不一致さに少し違和感を覚えた。

褒められたことがあまりないのだそうだ。

この話を聞いてこの人は大人にならなくてはいけない状態で成長してきたんだと感じた。

私がただ感じだだけで、本当のところはわからないのだけれど。

大人にならないと、大人として振る舞わないといけなかったのかもしれない。

そんな妄想だけど、もっと好きになった。

明るい所があれば影ができるように、微かだけど影を感じた。

今まで明るい事ばかりじゃなかったのかと。

明るく振る舞っているように見えるが何か暗いものはずっと付き纏っているように見えた。

恋人について話す様子はとても微笑ましい。

本当に好きなのだろうと思った、生き生きとしている。

もっと聞きたいと思う自分ともう辞めてくれと言う自分が必ずせめぎ合う。

君には恋人がいる、君には大切な相手がもう存在しているという事実。

それ以上にはなれないという壁。

高校生かよ、ただの片想いを拗らせている、成人にもなって。

幸せな君が好きだ、幸せな君を見ていたい。

君が不幸せなところなんて見たくない、なのにそれを望む自分に嫌気がさす。


幸せにしたいと思うのはエゴだろうか。

もう幸せにしてくれる人はいると云うのに。

解っている、私ではないこと、私では役不足なこと。

だからたらればを垂れる。


君ともっと仲良くなれたのに

君と同級生になれたのに

君と同レベルの会話ができたのに

君を沢山笑わせられるのに

君が満足する話題を供給できたのに

君に選ばれたのかもしれないのに


手が届くことはないのだろうと、今日も思う。

でももう少しだけ、あと少しだけ許して欲しい。

あぁでもダメだなぁ、話せば話すほど気持ちは強くなっていく。


君が私を選んでくれたらなぁ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@Uxuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る