第14話 冒険者の活動と仕組み

ジュンタは冒険者登録の3つ目の試験の最終日に森を彷徨うシーヤという女性の冒険者と出会い、彼女の困り事に協力していた。そして、その最中に盗賊の2人組に遭遇し、戦う羽目になった。杖を無くした影響で戦闘面で心許ないと語ったシーヤはジュンタの指示で町へ応援を呼びに行く形で逃走し、ジュンタは数的不利な戦いを強いられることになった。そして、激闘の末、ジュンタが2人を討ち取り、帰路に着いた。


ジュンタ「ギルドマスターや他の人が言った通り、異世界は魔法が使えるのが当たり前だもんな。ハルドやラルスさんとの手合わせが無かったら俺は死んでいた。」


ジュンタ「それにしても、この世界に来てから今までずっとピンチばかりたな。」


と、考え事をしていたら2つの人影がこちらへ向かってくる。


ハルド「おーい!ジュンター!」


シーヤ「はぁ…はぁ…待ってください…」


ジュンタ「ハルド、シーヤさん。」


先程町へ逃がしたシーヤがハルドと共にやってきた。


ハルド「このお嬢ちゃんに戦いに加勢するよう頼まれて急いで駆けつけようとしたんだが、もう終わったみたいだな?」


ジュンタ「まあ、何とかね。」


シーヤ「ご無事で何よりです。」


ハルド「聞いたぞ~。何でも2対1だったらしいじゃねえか。よくそれで勝てたもんだ。流石だな。」


ジュンタ「いや、本当にギリギリだったよ。でも、どうしても杖を取り返したくてね。はい、どうぞ。」


手に持っている杖をシーヤに渡した。


シーヤ「本当にありがとうございます。助けていただいた上に、私の杖まで。」


ジュンタ「どういたしまして。」


ハルド「ホントにやるなぁ、お前。こんな可愛い子助けてよ~?かなり頑張ってたそうだし、くっつくんじゃねえか?」


ジュンタ「やめてくれ(汗)。まだ知り合ったばっかなんだよ?」


シーヤ「そ、そうですよ…。それよりも、ここで時間を潰さない方がいいんじゃないですか?」


ハルド「それもそうだな。」


ジュンタ「じゃあ、町に戻ろう。シーヤさんも一緒にどうですか?」


ハルド「おお、サラッとナンパまでこなす。」


ジュンタ「うるさいなぁもう。」


シーヤ「ふふっ。そうですね。また危険な目に遭ったら元も子も無いですし。」


ジュンタたち2人にシーヤが同行する形でメルン町へ戻り、ジュンタは無事試験を終え、帰還することができた。そしてそのまま、冒険者ギルドへと向かう。その頃にはもう日が暮れてきた。


ギルドマスター「ジュンタよ、よく帰ってきたのう。」


ジュンタ「はい。ただいま戻りま…ゔっ…お腹が…」


ハルド「ど、どした?」


ジュンタ「オロロロロロッ!」


シーヤ「ジュンタさん!?」


ハルド「おいおい、大丈夫かよ!?」


ギルドマスター「全く、外で何か変なものでも食べたかのう?とにかく片付けるぞい。」


外出時にスライムを食べてしまったことにより、ジュンタはお腹を壊してしまった。そして急いでブツを片付ける。


ギルドマスター「何はともあれ、無事で何よりじゃ。それで、その子は誰じゃ?」


シーヤ「初めまして。Eランク冒険者のシーヤです。」


ギルドマスター「ほう、冒険者じゃったか。ワシはこの町のギルドマスターをしておる。」


ハルド「そういや、ギルドマスターは普段からギルドマスターって呼ばれてっけどよ、名前なんだっけ?」


ギルドマスター「なんじゃお主、知らんのか。まあ良い。確かにほかの都市にもギルドマスターはおるからのう。名前は知っておいた方が良い。」


ギルドマスター「ワシの名はロドフ。呼び方は好きにすれば良い。」


ジュンタ「ロドフさん、ですね。よろしくお願いします。」


ロドフ「お主らは本当に礼儀が成っとるのう。それに比べてこのド阿呆は…」


ハルド「俺だけ非難されてるぅ!?」


ジュンタ「とにかく、本題に入りましょう。テストについて。」


ロドフ「そうじゃのう。外出した証拠となる素材と外でのことを少し聞かせてもらおうかの。」


ジュンタ「そういえば、証拠渡すんでしたね。こちらです。」


ジュンタは出発前に言われていた魔物の素材を提出し、加えて外出先での出来事を簡単に述べた。


ハルド「ブッハッハッハッ!お前スライム食ったのかバカだな~(笑)。そんなヤツまずいねぇぞ?」


シーヤ「それは私も驚きました…。」


ジュンタ「もう、ハルド笑いすぎだよ、知らなかったんだし。第一君だって、食べれる魔物がいるとか言ってたじゃないか。」


ハルド「だとしても…スライムて(笑)…。」


ジュンタ「もう少し具体的に聞かなかった俺が悪いけど、教えてくれたっていいじゃないか。」


ロドフ「まあ、終わったことをとやかく言っても仕方あるまい。それよりも、結果発表じゃ。」


ジュンタ「いよいよか…」


辺りが一瞬シーンと静まり返り、緊張感が漂う。そして間を開けて、ギルドマスターのロドフの口から結果を言い渡される。


ロドフ「合格じゃ。」


ジュンタ「っ!」


ハルド「ぃよっしゃー!!よくやったな、ジュンタ!」


シーヤ「おめでとうございます!」


ロドフ「これでお主も晴れて冒険者じゃ。」


ジュンタ「ありがとうございます!」


ロドフ「正直な所、お主は知識もほとんど無く、能力も無いため戦闘に向かず、簡単な試練でも苦戦するのではないかと思った。しかし、お主はそれを解った上で工夫を凝らし、無事に乗り越えた。冒険者にとって最も重要なのは、己の力と向き合う事じゃ。自分の強みは何か、逆に弱みは何かをよく理解し、あらゆる工夫と努力を重ねる。それをただひたすら続けることで如何なる力を持とうとも、人は成長する。ワシはお主にはそれができると感じた。」


ジュンタ「ロドフさん…」


ロドフ「お主の冒険はまだ始まったばかり。分からないことも多いじゃろう。じゃが安心せい。お主には仲間がおる。仲間との一日一日を大切にし、精進し続けよ。お主の伸び代は無限大じゃ。しかし命を懸ける以上、もしかしたら1人前になること無く死すかもしれぬ。それでもワシはお主とお主の仲間を信じておる。これからの旅路に幸あらんことを。ワシからは以上じゃ。さあ、手続きしてこい。」


ジュンタ「はい。ありがとうございました!」


冒険者登録試験に合格し、ロドフから激励の言葉を貰い、ジュンタは正式に手続きする事になった。


マーシャ「冒険者登録試験、合格おめでとうございます。それにしても凄いですね。ギルドマスターが用意されたクエストを己の身1つでクリアしてしまうなんて。」


ジュンタ「ありがとうございます。でも、クリアしたのは俺1人の実力ではありません。ハルドのサポートとロドフさんのアドバイスがあったお陰です。」


マーシャ「素晴らしい返答ですね。仲間や周りの方への感謝を忘れない人は必ず良い冒険者になれます。では、正式な登録手続きをさせて頂きます。」


ジュンタ「お願いします。」


ギルドの受付嬢の元でジュンタは正式に新規冒険者登録の手続きを済ませた。そして受付嬢から冒険者の主な活動や冒険者ギルドの仕組みを説明される。


マーシャ「手続きが完了致しました。こちらギルドカードです。身分証も兼ねておりますので紛失にご注意下さい。本来は手続き終了後に今お持ちの青銅のナイフ若しくは剣を支給するつもりだったのですが、ジュンタさんはそのままそのナイフを使いますか?」


ジュンタ「はい。」


マーシャ「分かりました。それでは冒険者の活動及び冒険者ギルドの仕組みについて説明させていただきます。」


マーシャが新規冒険者に渡す資料をこちらに見せながら説明する。


マーシャ「まず、冒険者の活動は主にこの冒険者ギルドに発注されている依頼をこなしてお金を稼いだり、外を自由に探索す探索する事です。」


マーシャ「クエストは魔物の討伐からアイテムの納品など様々です。また、外での探索では基本何をしても良いです。ここまでよろしいですか?」


ジュンタ「はい。」


マーシャ「続いては我々冒険者ギルドの業務について説明致します。」


ジュンタ「はい。」


マーシャ「我々冒険者ギルドは主にギルドカードの発行、クエストの手続き、魔物のデータの更新、素材の売買、ギルドバンクでの金融、冒険者ランク昇格試験の監督、トラブルや犯罪の防止及び対応、緊急事態の対応など多岐にわたる業務を行います。」


ジュンタ「たくさんあるんですね。」


マーシャ「はい。一日の業務のほとんどはクエストの手続きで、依頼主側と冒険者側双方の受発注手続きを行います。場合によってはギルドを通して依頼主様と直接話し合っていただく事もございます。ここまでで質問はございますか?」


ジュンタ「はい。冒険者ランクとは何でしょう?」


マーシャ「先程の説明の中で“冒険者ランク”の昇格試験の監督も業務の1つだと申し上げました。続いては“冒険者ランク”について説明させていただきます。」


ジュンタ「お願いします。」


マーシャ「冒険者ランクとは、手続き終了後にお渡ししたギルドカードに記載されているアルファベットを指しております。冒険者の信頼や実績、そして何よりもご本人様の実力そのものの証でございます。ランクはEから始まり、D、C、B、A、A+、S、SSの8段階あります。」


ハルド「因みに俺はDランクだ。」


シーヤ「私はまだ1番低いEランクです。」


マーシャ「上のランクに行けば行くほどより多くの仕事を貰えますが、危険も伴います。そして、当然昇格試験も難しくなります。また、ランクが高いほどギルドの一員として仕事をする機会が多いので、ご自身の予定に制限がかかる事があります。まだ気が早いですが、ある程度のランクで自由に過ごすか、高ランクでバリバリ仕事するかは個人の自由です。」


ジュンタ「なるほど。ランクが高い事が必ずしも良い訳ではないと。」


ハルド「確かにある程度の自由は欲しいわな。」


シーヤ「高いランクはただでさえなるのが大変なのに、その上予定も組みづらい。何より高ランカーとしてのプレッシャーもあるため、なり手が少ないのも納得ですよね。でもその代わりお金はたくさん貰えるし、地位もかなり高く、周りからは信頼が寄せられる。」


マーシャ「そうですね。冒険者ランクに関してここまで教えるのはぶっちゃけ私くらいです。」


ハルド「まあ、高ランカーってのは冒険者の憧れだ。なるデメリットを教える奴なんてほぼいない。」


マーシャ「ここまでの説明で他に質問はございますか?」


ジュンタ「いいえ。」


マーシャ「分かりました。では、最後に1つ。無事ご登録された新人冒険者の方は登録された日の翌日に『新人基礎講座』を冒険者ギルドにて行います。冒険者としての最低限の知識やルール、マナーなどを教わり、その翌日から本格的に活動する事ができます。」


ジュンタ「分かりました。」


マーシャ「以上で説明を終わります。もし何か気になることがあれば、気軽に受付まで足を運んで下さい。後ろのお二方も大変お待たせしました。」


ジュンタ「はい。ありがとうございました。」


シーヤ「私も改めて聞けて良かったです。」


ハルド「基本的な事は何回聞いても損はねえからな。そんじゃ、3人で飯行くか?」


ジュンタ「賛成。」


シーヤ「是非。」


ジュンタ「それでは、さようなら。」


受付嬢に帰りの挨拶をする。


マーシャ「はい。お気をつけてお帰りください。」


その後、3人は酒場へ向かった。ご飯をたらふく食べて解散し、各自明日の行動に備えるのであった。


To be continued

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