第12話 トラブル発生

現在、ジュンタは冒険者登録の最終テスト『3日間の外出』の真っ最中。1日目と2日目が過ぎ、最終日である今日を迎え、腹を空かせすぎて衰弱し切っていた。食料を求め歩くジュンタが見つけたのはスライムと1人の女の子だった。見た感じジュンタと年齢が近く、金髪でポニーテールでピンクと白が混ざったワンピース型の冒険者用の服を着ていた。


ジュンタ「飯だああああああ!」


???「えっ!?何!?」


その場でオロオロしている女の子を他所に、ジュンタはスライムを仕留めて食べようとする………


???「えっ………ちょっと!?」


ジュンタ「………………」


ジュンタ「ブフェッ!まっず!」


しかし、スライムの味は決して良いものではなかった。スライム自体は無味だが、野生特有の臭みと土の味が口いっぱいに広がった。


???「あの………大丈夫ですか?お腹壊しますよ………?」


ジュンタ「あ、こんにちは。お気遣いありがとうございます。一応腹は満たせたので大丈夫ですよ。」


???「そ、そうですか………」


???(絶対大丈夫じゃないな………)


???「一応、水持ってますけど口直しします?胃を保護するものも一緒にあれば良かったんですけど、生憎持ってなくて。」


ジュンタ「お気遣いありがとうございます。」


???「どういたしまして。」


女の子は返事をし、キョロキョロと辺りを見回す。


ジュンタ「何か探し物ですか?」


???「はい。杖を無くしてしまって、今探してるんです。」


ジュンタ「そうなんですか。もし、よろしければ一緒に探しますか?」


???「いいんですか?」


ジュンタ「ええ。俺で良ければ協力しますよ。」


???「ありがとうございます。」


ジュンタ「あ、まだ名を名乗ってませんでしたね。俺はジュンタです。」


???「ジュンタさん、ですか。私はシーヤです。」


ジュンタ「シーヤさんですね。よろしくお願いします。」


シーヤ「はい。こちらこそ。」


ジュンタはシーヤと名乗る女の子と自己紹介をし、本題に入る。


ジュンタ「それで、今『杖を無くした』といいましたが落としたのはいつ頃ですか?」


シーヤ「昨日、この森で戦闘しまして、自分がやられそうになって命からがら魔物から逃げた時にどこかに落としてしまいました。」


ジュンタ「なるほど。とりあえず、立ち止まってるだけでは何も進展しませんし、話しながら探しますか。」


シーヤ「はい。」


ジュンタはシーヤと共に杖を探すことになった。そして、歩きながら杖や互いの話をする。


ジュンタ「昨日どの辺で戦ったか覚えてます?」


シーヤ「いえ。逃げるのに必死だったので、あまり………確か奥の方だった気がします。」


ジュンタ「じゃあ、奥へ行きましょう。」


歩きながらジュンタが1つ質問を投げかける。


ジュンタ「あの、シーヤさんは冒険者なんですか?」


シーヤ「はい………かなり弱いですが。ジュンタさんも冒険者ですか?」


ジュンタ「いや、まだ冒険者ではないですね。」


シーヤ「えっ、危険ですよ!?」


ジュンタ「大丈夫ですよ。ここには用事があって来たんです。話すと長くなりますけど。」


シーヤ「そうなんですね。」


ジュンタ「まあ、ともかく冒険者志望の俺からすればシーヤさんは先輩ですね。色々話を聞きたいです。」


シーヤ「そ、そんな………先輩だなんて………私そんなに強くないですよ?杖があるからまだまともな魔法攻撃ができるのに、杖が無かったらただの雑魚ですよ。」


ジュンタ「いや………」


ジュンタ(まあ、否定できない。実際目の前にいても強者特有の気配は感じられないし。)


ジュンタは相手の力量を肌で感じることができるので、何とも言えない顔をしていた。シーヤは自分で言うだけあり、残念ながらあまり強くない。


シーヤ「………今絶対失礼な事考えてましたよね?」


ジュンタ「いやっ………そんなことないですよ(汗)。」


2人は会話を弾ませながら、杖を探した。がしかし、一向に見つかる気配はない。やがて日差しが強くなり、昼時になった。


シーヤ「なかなか見つかりません………そして、お腹も空きました。」


ジュンタ「じゃあ、そろそろ昼にしましょう。」


シーヤ「はい。」


近くの木陰で昼休憩をしようと思ったその時………


ゴブリン「ヴゥゥゥ………!」


ゴブリンが現れた。今回は10体と少し多めである。


ジュンタ「こういう時に限って現れるよな。」


シーヤ「ひえっ!?いっぱいいる!?」


ジュンタ「シーヤさん、来ますよ!」


シーヤ「む、無理ですよ!あんなに相手できません!逃げましょうよ!」


ジュンタ「でもそんなに強くないですよ?それに、シーヤさん魔法使えるじゃないですか。」


シーヤ「や、やってみます!えい!」


次の瞬間、シーヤの手から雷の玉が出現した。


シーヤ「《エレキ》!」


《エレキ》

→雷の初級魔法。感電する性質を利用して、攻撃で相手を痺れさせたり、拘束したりする事ができる。使い方は自由なので、使用者の技量次第でで引き出しが増える。


それをゴブリンの群れのうちの1体に放ち命中した。しかし、当たりはしたものの絶命には至らなかった。


シーヤ「はぁ………はぁ………」


ジュンタ「息切れ!?1発撃っただけですよ?」


シーヤ「だから無理なんです!杖が無い間は。」


魔法を1回使っただけで体力が削れたシーヤはまともに戦えないので後はジュンタがやるしかない。


ゴブリン「ヴァァァ!」


魔法を喰らった個体が飛びかかってきた。動きが鈍っている。


ジュンタ「ハァッ!」


ジュンタはダメージを負ったゴブリンの胸部に発勁を放って撃破する。


シーヤ「凄い………」


ジュンタ「フッ!ハッ!フンッ!セイッ!」


2体目の首をナイフで掻き、3体目の首にもナイフを突き刺し、4体目に左の回し蹴りでつま先をコメカミに命中させ、5体目の腹を裂き、6~8体目の額に手裏剣を投擲し、9体目を袈裟斬りし、10体目の頚椎をへし折った。………こうして、ジュンタは怒涛の勢いでゴブリン10体を一掃した。


シーヤ(一瞬で………片付けた………?)


ジュンタ「ふぅ………今度こそ休憩にしましょう。」


シーヤ「え………あ、はい!」


2人は改めて昼食を摂ることにした。そして、シーヤが先程の出来事について話を振ってくる。


シーヤ「あの、ジュンタさん………」


ジュンタ「はい。」


シーヤ「さっきの凄かったです!滅茶滅茶強いんですね。あの数を一瞬でやっつけちゃうんですもん。」


ジュンタ「ありがとうございます。」


シーヤ「それで、気になったんですけど、どうしてそんなに強いのに冒険者じゃないんですか?」


ジュンタ「それは、ここに来た理由と関係してます。」


シーヤ「そうなんですか。」


ジュンタ「ええ。実は………」


ジュンタは魔法もスキルも使えないこと、それを武術でカバーしていること、それが危険だと判断したギルドマスターからテストを課されたこと。そして、今日が試験の最終日である事を全て話した。


シーヤ「そんな事があったんですね………」


ジュンタ「はい。」


シーヤ「それなのに私の用事に付き合わせてしまってすいません。」


ジュンタ「いえいえ。どうせ帰るだけで余裕もありましたし、気にしないでください。」


シーヤ「ありがとうございます!もし見つかったらお礼をさせて下さい!」


ジュンタ「お気持ちだけ受け取ります。それじゃ、出発しましょうか。」


シーヤ「はい。」


2人はシーヤの杖を見つけるべく、更に森の奥へと向かった。


シーヤ「ジュンタさん、森の奥はゴブリンより危険な魔物がいる事があります。気をつけてください。」


ジュンタ「ご忠告どうも。安全第一ですからね。」


森の深く進んだ事で、ゴブリンより危険な魔物がチラホラ現れるようになり、2人はより一層警戒するようになった。昼休憩から1時間ほど経って、日差しが更に強くなった。


ジュンタ「日差しが強くなりましたね。川へ行きませんか?」


シーヤ「ええ。そうしましょう。」


2人は川へ行くために進行方向を変えた。そして暫く歩いた時…


シーヤ「ん?」


シーヤが何かを発見した。続いてジュンタもそこに駆けていく。


ジュンタ「どうしました?」


シーヤ「ありました!私の杖です!」


ジュンタ「おお!おめでとうございます!もしよろしければ、メルン町までお送りしましょうか?」


シーヤ「いいんですか?」


ジュンタ「はい。帰るついでという事で。」


杖が無事に見つかり、ジュンタがシーヤとメルン町まで戻ろうと思った次の瞬間…


ジュンタ(っ…殺気!?)


ジュンタ「危ない!」


シーヤ「きゃっ!?」


何かの異変に気づき、ジュンタは咄嗟にシーヤを抱えて、横に跳んだ。 一瞬遅れて魔法が2人の横を通り過ぎた。


???「ケッケッケ………活きの良さそうなガキだな………!」


背後から声が聞こえた。2人組の賊のようななりの男だった。


ジュンタ「誰だお前たち!」


To be continued

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