第11話 登録テスト3

これまで1つ目と2つ目のテストを順調に突破していったジュンタ。体調を万全に整え、遂に、最後のテストに臨む。


ギルドマスター「ここまでよくぞ試練を潜り抜けた。次で最後じゃ!」


ハルド「いよいよだな!」


ジュンタ「ああ。」


ギルドマスター「今回は、冒険者の行動により近しいものにした。最後の締めにピッタリじゃろう。」


ジュンタ「と、言いますと?」


ギルドマスター「最後の試験内容は………」


ギルドマスター「『3日間外出』じゃ。」


ハルド「3日間………外出?」


ジュンタ「そ、それだけですか………?」


ギルドマスター「それだけとはなんじゃ!」


最後のテスト、しかもより冒険者に近しい内容と言っていたので、どれ程高難度なのかと思っていた。しかし、言い渡されたそれはあまりにシンプルだった為、2人は拍子抜けしていた。その様子を見てギルドマスターはこう告げる。


ギルドマスター「………お主、甘くみておるな?よいか。ただの日帰りの外出でも、100%生きて帰って来れる保証はない。それに外出中は、いつ何が起きるか分からん。もし、万が一トラブルがあっても、周りに誰もおらぬ事が多い。故に、自分で何とかするしかないんじゃ。」


ギルドマスター「外出即ち命を落とす可能性が1%でもある。これは誰にでも言える事じゃ。それをお主は数日間続けるのじゃぞ?油断禁物とはよく言うが、これは決して冗談などではない。」


ギルドマスターがジュンタに歩み寄る。


ギルドマスター「1度出かけたきり、帰ってこないということは、誰にでも起こりうる。冒険者となる以上、これは宿命なのじゃ。次にまた、お主の顔を見れる事を願っているぞ。」


ジュンタ「戻りますよ、必ず。」


ギルドマスター「あ、そうじゃ。言い忘れたが、外出をした証拠を持ってきて欲しいのじゃ。魔物の素材を10個以上持ってきてくれ。今日は準備に時間をあて、明日から3日間出かけるんじゃ。」


ジュンタ「分かりました。」


ギルドマスター「あとコレ、回復薬じゃ。」


ギルドマスターが試験管のような容器をいくつか渡してきた。それは、怪我が付き物の冒険者にとっては必須中の必須のアイテム、回復薬だった。


ジュンタ「ありがとうございます。でもいいんですか?アイテムを自分で準備するのもテストの一環なのでは?」


ギルドマスター「いいから受け取れ。それに、それは“元から”お主のじゃ。」


ジュンタ(元から………?ハッ!)


ジュンタ「分かりました。では、遠慮なく。」


ジュンタはギルドマスターから回復薬を受け取り、ハルドと共にギルドを出て、テント携帯食料、戦闘用の暗器、自分の装備である青銅ロングナイフなどを念入りに準備した。そして、明日の朝を迎えた。


ハルド「冒険者デビューまで、目と鼻の先だな。無事に帰ってこいよ。」


ジュンタ「ありがとう。必ず帰還するよ。」


2人はグータッチした。


ハルド「行ってらっしゃい。」


ジュンタ「行ってきます。」


こうして、ジュンタの最後のテスト『3日間の外出』が始まった。


~1日目~


ジュンタはメルン町を出てからしばらく草原を歩いていた。ジュンタは薬草採りをしている。


ジュンタ「テスト中に採った物が自分のになるなら、薬草はガンガン採った方がいいな。」


また、先日狩ったプレーンキャットを探して倒し、外出の証拠となる素材を獲得していった。既に1匹倒し、素材を1つ獲得した。残り4つである。


ジュンタ「たぁー!」


ズバッ!


ジュンタ「これで素材は2つ目だ。もう1匹は不利だと判断して逃げてったな。」


ジュンタは薬草採りとプレーンキャット狩りを並行して丸1日行った。そして、そのまま草原でテントを張って、携帯食料を頬張り、夜が明けるのを待った。


~2日目~


1日目を難なく終え、2日目の朝を迎えたジュンタはテントを片付ける。素材の方は、プレーンキャットをたくさん狩って、もうとっくに10個以上は集まっている。今の悩みは、昨晩の食事で食料が尽きた事である。その為、ジュンタは森まで食料を求めて移動した。


ジュンタ「腹が減っては戦はできぬ。またアレ探すか。」


ジュンタは森を歩きながらある事を思い出していた。


ジュンタ「そういえば、俺はこの森に飛ばされたんだっけな。そして、ここで1週間も過ごした。今思えば、これって運いいよな。」


物思いにふけるように、一旦立ち止まって空を見上げる。


ジュンタ(師範は元気かな………。あの少女は無事なんだろうか………?って、考え事してもしょうがない。今は食料確保だ。)


ジュンタは再び歩きだし、異世界に来て初めて食べたあの実を探し回った。


………………が、しかし、今日は何故か例のブツを獲得する事ができず、ずっと彷徨っている。そして、昼を迎える。


ジュンタ「お腹空いた………あの実は採れないし、ゴブリンの1体も出てこない。」


ジュンタ「ギルドマスターは『死ぬ可能性が1%でもある』って言ってたけど、このまま食べられる物見つかんなかったらヤバイな………」


ジュンタ(あ、そういえば、出かける前ハルドに食料について質問してたな。確か………)


~回想~


ジュンタ「ねぇ、ハルド。プルとか魚以外にも食べられる物はあるの?」


ハルド「ああ。種類にもよるけど、魔物を食うこともあるぜ。」


ジュンタ「魔物!?」


ハルド「この間料理に使ったあの肉も魔物の肉だぜ。」


ジュンタ「マジか。」


ハルド「外に出かける時、食料に困ったら俺もよく、魔物を食うことがあるぜ。でも、味は保証できねえから参考までにな。」


ジュンタ「分かった。」


~回想終わり~


ジュンタ(………っていう会話をした気がする。よし!早速探してみるか。)


ハルドのアドバイスを思い出したジュンタは魔物を探し始めた。だが、またしても発見することができず、体力が削られ、腹の虫が鳴き止まないまま、森を縦横無尽に歩く。


~3日目~


あれから食物を求め歩き続けたジュンタは未だに腹を満たすことができずにいた。腹の虫すら死滅するほど衰弱しつつある。それでもジュンタは必死に生命力を保ち続ける………


ジュンタ(これは流石に堪えるぞ………昨日から一口も飯を入れてない。しかも歩きっぱなしで体力も持ってかれてる。1日食べないだけでもこんなにキツイとは思わなかったな………前世の俺がどれだけ恵まれてるか思い知ったわ………)


ジュンタ(何か無いか………何か………せめて、一口でも口に入れたい………)


今猛烈に口にするものを欲している。そして、瀕死の腹の虫たちが必死こいてジュンタに合図を送る………


ジュンタ(ん?あれは………?)


To be continued

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