〜転生少女、人生を歩み始める〜

0話:信じられるか? これ現実なんだぜ?

1️⃣

 2023年10月某日。私すめらぎ 聖愛まりあは死亡しました。なんともまぁ呆気の無い最期でした。酔っ払いがよたよたと歩く線路上で黄色い線の内側に立ち、次の配信の予定をスマートフォンで打ち込んでおりました時です。急にその酔っ払いが体勢を崩し私の方に倒れてきて、その衝撃に耐えられなかった私はつい今し方列車が滑り込んできたホームに落ちました。目前に迫り来る電車の運転手の、蒼白な顔面が見えて「ああこの人も不憫だな」と思えたものだから不思議なものです。


 こうして私の人生は、21歳を目前として終わりを迎えたのでした。




 ——……と、終幕したのが14年前の話になります。


「お嬢様、とてもよくお似合いですわ……!」


「えぇ! まるで5月に咲くマグノリアの花のように……!」


 メイド服を着た二人の女性は、いかにも“メロメロ”といった様子で鏡の前に立つ少女を見ております。そして私自身も、鏡に映っている私の姿・・・を見ました。


 陽光を照り返す白金プラチナの髪に、見る角度によって色を変える蛋白石オパールの瞳。陶器人形ビスク・ドールのような少女が、鏡には映っております。私はこれが私だと、未だに信じておりません。悪い夢でも見ているような気分です。


 それでも。


「さぁ参りましょうマリア様。ご主人様が首を長くしてお待ちです」


 御者付きの馬車に生まれて初めて乗せられて、私は本日婚約者となる青年との顔合わせに向かいます。


 嗚呼夢なら醒めてくれ。


 わたくしすめらぎ 聖愛まりあ、名を変えマリア=ダントルトン。記憶にある限り二回目の人生、異世界にて体験中の身にあります。一言で言おう、くたばっちまえ。

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