ep:1-3
その後は
さて何をしようかと街をぶらつき金稼ぎを考える。すると、そこで皇子のお気に入りの娘の噂を耳にした。
ああ、この間のあの少女……トワのことかとユーリは思う。なんでも少女は皇子に身染められ、王宮に出入りしている話が出ているとかないとか。
それもお飾りのお人形としてではなく、なんと庭師として。
そういえば初めて会った時に花を見にきたと言っていたなと思い出す。
そんなことを考えているとトワを捕まえるという発言が耳に入った。
なんでもトワのような庶民が王宮内にいるのがおかしいと、本当の居場所に帰るべきと宣ってる男。
ユーリにとって不愉快極まりない。まるで意思すら与えられなかったあの頃のように、自分の居場所も立場も自由に選べなかった昔のように……そんな思いが滲み出て、少しちょっかいをかけてやろうと思ったのが運の尽きだった。
話を聞けば聞くほど、何やらただの妬みの話ではなく組織的な意図を感じる。こちらの手札も見せつつ、うまい具合に話を聞き出して、ユーリはレックスとトワのいる王城へと足を運んだ。
この王国の名はガーランド。美しい城に、活気ある街。人々も皆幸せに暮らす国。
そんな王国の皇子に
一つに緩く結んでいた鎖骨までの長さがある焦茶の髪をおろし、身なりを正して、客間で二人を待つ。
すると二人以外に三人もおまけでついてきた。護衛なのだろう腰に剣を刺す二人と何やらもう一人。囲まれた、下手なこと言えば処罰かななんて思いながらユーリはトワとレックスに明るく声をかける。もちろん、わざとだ。
案の定のレックスの怒る反応に笑いそうになりながら、悟られないようにする。
「それで、何のようだ」
レックスが明らかに不機嫌を
ああ、主人の意向に従う臣下そのものだとユーリはバカにしたように笑みをこぼす。その態度にレックスがまた何か言おうと口を開く前に、ユーリはその場に立つ。そしてトワに向かって頭を下げた。
「あの時は悪かった。もう会うつもりもなかったけど、おまえに話があって今日はきた」
ユーリの態度にレックス達が目を丸くする。トワは驚きつつもユーリの話を聞くことにした。そこでユーリは男のこと、トワを連れて行こうとしている話を耳にしたと伝える。話を聞きながらレックスはユーリに怪訝そうに突っ込んだ。
「トワが城にいるって話したのか」
「相手の情報を得るにはこちらもカードを切る。話し合いの定石ですよね?それに、おれが言わなくてもトワが城にいることは噂で皆周知でしたし。まあ、絶対にいるって確証はなかったんでしょうけど。それでも不利な情報を渡したとは思ってません」
ユーリの堂々とした物言いにレックスも確かにと納得する。その後の流れは簡単だ。自分はこの場でさよならをする予定だった。
それなのに、男の顔はユーリしか知らないからという当たり前の理由で城に残され、翌日から探し回るハメになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます