第11話

「いつからそこに居たにゃあ」

 言うと同時に、ジュラルミンはそそくさと数歩近づき、先端がギザギザした一本の長い指先を、生命体の右腕のど真ん中にドッスンと突き刺す。生命体は、刺された自分の腕を見て、ウウーンと首をこっくりとかしげ、オマエニンゲンヲミタノカ? とジュラルミンに問う。


「そうかにゃるほど、俺の質量に反応したのにゃあ? これにゃ?」ジュラルミンは突き刺したギザギザに思考を集めて爆発させると、何本ものギザギザが、ジュルジュルと生命体の腕を突き通していく。


 顔色一つ変えない生命体は、ジュラルミンの顔を片手でアイアンクロウのようにつかみ、ズルッと顔面の部分の皮を剥ぐと、皮の下からジュラルミンの本来の顔が出てきた。トタンのような金属で形成された機械人形だ。オマエニンゲンジャナイナ? ヤハリアノトキノヤツカ?


「おみゃあ、昔に工場であったことがあるにゃ。あのときゃあ多勢に無勢だったからにゃ。今日は負けないにゃ」機械仕掛けのようにジュラルミンの目がくるくると滑稽に動き、合わせて口が開いたり閉じたりを繰り返す。ほどなく鼻がグーンと伸びたかと思うと、生命体の胸にズンと突き刺さっていく。


 次の瞬間、生命体の目が赤く発光し、素早く動いたかと思うと、ジュラルミンの顔がガチャンと破壊され、首から大量の機械油が噴き出していく。生命体は壁に打ち付けられて動けないなか、床には生命体の右手が転がっている。


 僕たちは、生命体のドロドロの右手を大事にかかえて、走行器械に乗り込んで湖まで走り、アジトへともどる。そのあいだも、生命体の右手の指はゆっくりと蠢き続けている。この右手はいったい何を探し求めているのだろう。

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