第3話 浅井家の英雄…ではなく!祖父との会合
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天文17年1548年 2月 六角義治
浅井家から母親ごと押し付けられている浅井長政こと猿夜叉君は、お母さんと一緒に六角の城である観音寺城下にある一つの館を与えられているみたいだった。こちらから露骨に会いに行くと警戒される可能性もあるし、周りから何か言われるのも面倒くさいので、たまたま付き人とともに散歩をしていたらたまたま同年代の男の子と出会って、たまたま仲良くなる予定である。
しかし、待てど暮らせど猿夜叉君とは出会えなかった。それもそうである、猿夜叉君は人質であり好き勝手に外に出ることもできず館ないで安全に暮らしているのであろう。俺みたいに出歩いたりなど難しいのだ。俺だって付き人が護衛兼見張り役についてようやく少しの時間外に出れるくらいなのだ。彼の立場なら難しいことは明白であった。
さて、どうしたものかと自分に与えられた部屋で悩んでいると祖父である六角定頼が偶々母親に会いに来ており、自分も挨拶をすることになった。
「お久しゅうございまする。御屋形様にお目にかかれることまっこと嬉しいことにございまする。常日頃からお祖父様とは交流を深めたいと思っておりました所この様な機会が頂けて望外の喜びにございまする。」
噛みそうになりながらもしっかりと口上を伝える。定頼は目を見開いて驚いた様子で母を見るが、母は知らないと首を横に振り同じ様に驚いていた。
「ふむ、物付きか?年齢の割には賢しからであるな。一体わしと何が話したかったというのじゃ?」
祖父である定頼はこちらを面白そうに、しかし見定めようとしっかりとこちらを見つめた。
「はっ、出来ますればお祖父様が戦に出た時のことや、何を考えて家臣達を城下に集めたのかなどについてもお聞きしたいと思っておりまする。」
「何故に?」
「この戦国の時代を生き抜くためにございまする…。この前高熱にうなされていた時、枕元に頼朝公が立たれて、お前の手で六角家を苦難から守るのだと私に知識を授けてくれました。その事から私はできるだけ多くの物事を学び心身を鍛えて六角を継ぐに足る男となりたいと考えているのです。」
「亀松丸は面白いことをいうのぅ。よし、そこまで言うならばこの後少し時間を取ろうではないか。」
祖父は柔らかい顔をして母との用事を終えると俺を引き連れて祖父の部屋へと戻っていった。祖父の部屋は庭園が見える場所で静かで落ち着いた所だ。部屋には刀が飾ってあり、掛け軸や壺などが鎮座している。質素であるが何故か風靡を感じずにはいられない様に思える。
「良い部屋ですね。とても落ち着きます。」
お世辞抜きに思ったままの言葉を伝えると祖父は顔を緩ませてそうかそうかと頷いていた。
「さて、話をするとしようか。」
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