6.会話

 冷や汗をかき、金縛りにあったように動けないモロ。

 言い表せない恐怖心に耐え、マントを肩に掛けてキョロキョロと視線を彷徨わせているジュウゾウに訊いた。


「父さんと母さんはどこに?そもそもあんたは誰だ?」


 モロの存在に気付いていなかったのか。

 声を掛けられたジュウゾウは驚いたような表情でモロを見た。そしてすぐに豪快に笑いながら肩を叩いてくる、


「ん?お、おお!君は俺の命の恩人君じゃないか」

「痛っ。痛っいですよ」

 

 この人、悪い人では、ないのか?

 モロはジンジンと痛む肩を擦いながら、首を傾げた。

 人狼キラーの身分証や銀の銃を所持していない事実。人狼を倒したという事実。父親と母親の姿が見えないという事実。

 

「もう一度聞きます。あなたは……」


 誰なんだ。

 そう尋ねようとした時、ジュウゾウの後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「モロ!」


 父親であるゲール。


「ああ、モロ。無事だったのね」


 母親であるカオル。


「父さん母さん!無事だったんだ」

 

 探していた姿を確認したモロは駆け出した。そして、父親と母親に抱きついた。


「よかった。本当によかった」


 再会を喜び、三人で抱き合っていると、ジュウゾウがゲールの肩に手を置いた。


「よかったなゲール…………じっちゃんやばっちゃんの避難は」

「ああ、避難場所に誘導した。そして、やはり、あいつの言っていた通りミダのじいちゃんも犠牲になっていた。さらにな……」

「何かあったのか?」

 

 ジュウゾウに訊かれたゲールはモロ達から視線を外して言った。

 

「タキさんやミダのじっちゃん以外にも、ゴゴさんやキッコさん、ポクさんの姿が見当たらなかった……つまり、あいつによる犠牲者は4人だったんだ。俺は……村長でありながら……」

「そうか」


 ゲールの肩を数回叩いた後、ジュウゾウは腕を組んで空を見上げた。そしてそのまま、何も言葉を発さなくなる。

 誰も話さず、そよ風の吹く音だけが聞こえる静かな空間。その沈黙を破ったのはモロだった。


「父さん。その人誰?」

「ん。ああ、モロは久しぶりだからな。いや、最後にあったのが3歳の時だから……覚えてないか」

 

 ゲールはそう言ってジュウゾウの背中をバシバシと叩いた。


「こいつの名前はジュウゾウ。元人狼キラー協会のエースで、この山を担当していた」

「元人狼キラー?」

「あ~」


 モロの言葉にジュウゾウはバツが悪そうな顔で頭の後ろを掻いている。そして、小さく息を吐いてポツリと言った。


「追放されたんだよ。17年前にな」

「追放?」


 オウム返しのように聞き返すと、ジュウゾウは観念したように大きくため息をつく。


「俺の身内にな。人狼側についた馬鹿がいるんだ」


 ジュウゾウは顔を顰めて言った

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