弐
わたくしは まだ男を知りませんでした。
年頃の女がひとり、
だからかしら、
男は、何の不思議も抱かず、
黙って穴を掘り続けました。
わたくしが、
「白いわね」と
ようやく 男は「だから、穴を掘っているのさ」と答えました。
そうよね。
そうですわよね。
桜の花びらが、こんなに白いだなんて、
あぁ、わたくしは なんて罪深いのでしょう。
男が掘った穴を埋めてしまったのです。
男が、一生懸命に掘った穴を。
桜のために。
埋めてあげました。
だからでしょう。
翌朝の桜は、なんとも美しい
あぁ、やっと 桜の花が咲いた、と。
✿
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