第3話 美しい女性

「ハムスター獣人か!」

 うずくまって、言葉を失っている女性。しかし……見れば見るほど……美しい。肌の色がスノーホワイトだったから、髪の色もそれに近く、肩よりも短く、長さも均等に揃っている。瞳の色はミントブルー。吸い込まれそうな、魅力的な瞳。年齢は、20かその下か、相当若い。洗練された美貌の持ち主である。小動物の獣人は元々数が少ないだけに、その獣人にしか出せない独特の雰囲気を漂わせている。……百聞は一見にしかず、とはこのことだった。

「くっしゅ!」

「ああ。寒いよな」

「……」

 女性の顔をまじまじと見つめており、くしゃみに気づくのが遅れた。獣人は、獣と人に変身する際、裸になってしまう。近くにあったブランケットを取り、そっと女性の背中にのせた。

 こういうの、見すぎるのもタブーだ。ボストンバッグから、予備の服を出して、女性の近くに置いた。白のカットソーだし、サイズが大きいからすっぽり埋まりそう。

「ふう。にしても、こんな宿でハムスターに出会うなんて」

「……」

「びっくりだよ」

「……」

 背を向けて適当に壁と話しているが、女性は服を手に取らない。さらに、ブランケットを羽織っているように見えて、上手に活用できていないし。もしかしたら、裸であることに気づいていないかも、抵抗がないのかも。

「ほら、寒いでしょう。着てよ」

 なるべく下を見ないようにし、カットソーを女性の頭に入るように動かす。腕にも通し、ひとまず、一枚服を着た。多少、冷えはおさまっただろう。ブランケットを肩にのせて、顔を見てみる。……白いのだが、わずかに火照っている。

「……失礼」

 額を触るだけで分かった。……熱がある。かなり熱く、出来立てほやほやのドリアを素手で抱えているようなもの。俺は手を放し、女性をベッドの上に座らせた。足の動きがおぼつかない。……何か、深い事情があるのかもしれない。

「……さて」

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