Cotton Candy.

羽澄 蓮

1.憧れ、≠ ?(1)

 憧れのひとは、

 いつもニコニコしてて、ともすれば軽薄そうに見えるのに、影で努力してて、何事にも一生懸命な、そんなひと。


 たとえば、同期で同じ苗字の鈴木瀬那、とか。

 たとえば、


「みーなみちゃん。」

「…なんですか。」

「自販機で当たったからあげる。」


 そう言って、私の好きなカフェオレをデスクの上に置いていく3つ上の先輩、とか。


「い、いらないです…!」

「でも俺、甘いの飲めないし。」


 じゃあこんな甘いの、選ばなきゃいいのに。

 その言葉をぐっと飲み込んで、私は綿谷さんが自分の席に戻るのを見送る。

 憧れのひとにもかわいくない反応をしてしまう私は、かわいくない言葉をできるだけ閉じ込める。


 ほんとうはもっと、話したい。

 もっと、近づきたい。

 でも、それよりも“苦手”、“怖い”、が、先にきてしまう。


 彼だけじゃない。

 私は、男のひとが苦手だった。

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