第123話
翌日は起きたら昼過ぎだった。
騎士達も休日だったので起こされることがなかったわ。
こんなにのんびりと起きたのは久しぶりだった。
侍女が昼食を持ってきてくれている。どうやら騎士達は昨日飲みすぎて二日酔いなんだとか。街の人たちもまだ外は魔獣がいるとはいえ、お祭りのような騒ぎになっているみたい。
そうそう、結界はまだ維持されているのだとか。かなり倒したとはいえまだまだ魔獣がいるので結界は張りっぱなしなのだそう。
ゆっくり過ごした三日間。
もちろん何もしなかったわけじゃないわ。
畑や井戸に魔法を掛けたり、手紙類を王宮に届けたりと簡単な作業は休みの間もしていた。
そうして特別休暇が終わり、湧いて出た魔獣の討伐が始まった。
三つの団は各方向に討伐をはじめていった。私は毎日一つの団に付いていき、街に戻ってから他の騎士達に治癒魔法を掛けた。
毎日の討伐で魔獣たちは激減していく。閉じた空間の様子も確認しているが大丈夫だった。完全に塞がっている事にみんな安堵の息をしている。あと、倒した魔獣から玉を取り出して欲しいという要請が研究所からあった。
倒すのは難しくないが、玉を取り出すのが面倒で騎士達は文句を言いながら玉を取り出していった。
私は騎士達が倒して各所に山積みになっている魔獣たちを魔法で焼いていく。埋めるとなると相当の労力が必要になるからだ。
焼いた後に気づいたの。どうやら玉も骨と同じらしく、炎で焼いても残っていた。
それが分かってから騎士達は倒した後、玉を取り出さずに私が魔法で焼いてから玉を拾い集めることになった。ずいぶん助かったと喜んでいたわ。
そして焼いていて気づいた。
いつもの玉とは毛色の違う宝石のような玉が落ちていた。あまりに綺麗なのでいくつか貰うことにしたの。
二週間ほど同じように魔獣討伐を繰り返した。
街の外には魔獣の姿は見えなくなり、ようやく街の結界も解かれた。
街は落ち着きを取り戻し始めた。
団長達は話し合い、出張していた第九騎士団と第五騎士団、第十二騎士団の一部は徐々に王宮へと転移していくことになった。
この街は工業の街。異次元の空間でバタバタしてゆっくり街を散策する暇が無かった私。
騎士達は絹織物を買ったり、この街の特産品を買って笑顔で手を振って転移していった。
人数が減っていくうちに寂しい思いが出てきた。
この二週間、様々な出来事があり、とても賑やかで楽しかった。
「エサイアス様、私達もそろそろ次に移動する時期ですよね? 次の街はマーダイン公爵が住んでいる街に移動するのですか?」
「あぁ、そうだね。カシュトラールという街だよ。魔獣は少ないから数日の滞在になるんじゃないかな?」
駐屯所の食堂で次の街の話をしている時に父から手紙が届いた。
『一度、エサイアスと共に帰国せよ』
私達は驚いた。王宮へ戻る。
第十二騎士団の団員も私達と一緒に一度王都に戻る事になった。
私はローニャに連絡を取り、一時帰還の準備をしていく。
第十二団の騎士達も両手にお土産を持ち魔法円に入っていく。いつも家族へは手紙のみ郵送だったのでここぞとばかりに買い込み、持って帰るようだ。
「では皆様、準備は良いですか?」
「はい!」
騎士達は初めての転移で落ち着かない様子。それに短期間だが、王都に戻れるのはやはり嬉しいのだろう。どの騎士達もソワソワしているが、笑顔で転移を待っている。
「では先ほど説明した通り、別の隊もこの後転移するのですぐに陣から移動して下さいね」
「ハイ!!」
オリヒスさんや街の人達に見守られながら一日目は三分の一ほどの人数を王都に送った。
今回は三日間かけて人を王都に送る予定なのだ。
そしてオリヒスさんの提案で数人の魔力量が多い十人の子供を研究所に送ることになった。半数は親の居ない子供たち。残りの半数は生活に余裕のある家庭の子供たちだ。親の居ない子供はこの街に限らず多い。
魔獣が出る世界では当たり前なのだろう。
子供たちも必死に生きている。
魔法使いになって魔獣を倒したい、お母さんたちの暮らしを豊かにしたいと思いは様々だけれど、一人一人しっかりとした信念をもっている。
彼らは一旦神殿預かりとなり、神殿で生活しながら文字の練習や魔力操作から覚えていくと聞いている。
グリークス神官長も子供たちを受け入れるのに好意的だった。むしろ王宮での生活より神殿預かりをした方が彼らの成長に良いし、神殿の権威も上がるのだと積極的なようだ。
私と護衛騎士、エサイアス様と数人の騎士は最後に魔法円に入った。
「では転移します」
私はしゃがんで魔法円に指輪をあてて魔法を詠唱し、王都に転移した。
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