第48話
私は指輪を貰ってすぐに魔法が使えたため何にも考えていなかったけれど、ローニャはそうだった事を思い出した。
今は魔法が使えるためすっかり忘れていたけれど、ローニャは何度も練習をしていたわ。
「金色の指輪で魔法が使えたのならその指輪で練習を重ねていったほうが良さそうですね。指輪を変えて何か感じが変わったのですか?」
「いえ、最初は変わらなかったのですが、戦っている時の力の入れ方を思い出しながら唱えてみたんです。そうしたら出来たんです!」
グリークス神官長は興奮しながら話をしている。
指輪を元のものに変えてみたがやはり金の指輪を通している方が魔力が動いているのを感じやすいのだとか。
自分にとって使いやすい物が一番だろう。
彼は話をしながら何度も魔法を使おうと神官に向けてヒエロスを唱えていた。
「グリークス神官長、そんなに魔法を使って大丈夫ですか?」
「……どういう事でしょうか?」
「魔法は底をつくと倒れてしまう人もいるらしいのです。
私達は魔力が底を突けばお腹が減り、補うために食事を摂っています」
「……なるほど。今は何ともありませんが気を付けます。あと、私がもう少し魔法を使えるようになったら魔力を持つ人間を見つける事は可能でしょうか?」
「もちろん可能だと思います」
ナーニョの話を聞いて笑顔を見せたグリークス神官長。
教会に限らず治療や攻撃魔法が使える人々は一人でも多い方がいいに決まっている。
ただグリークス神官長は自身が練習すれば魔法を使えると考えているようだが、ナーニョは彼の治療魔法は一日に四、五人が限度だろうと思っている。
その理由はやはり魔力の量だ。
獣人は幼い頃から魔法を使わなければ魔力はあまり増えない。増えても元々少ない人だっている。
それは人間でも同じことが言えるのではないかと考えた。
それに加え、治療時に魔力を診るため大まかだが魔力量も分かるからだ。
グリークス神官長は体内で魔力を循環して自分自身の魔力で力を補う人は体外に出さない分ロスが無く魔力の消費量は少ない。
その分魔力を大きく消費する事が今まで無かったのだろう。
魔力量は少ないように思えたからだ。
私達が魔力を持つ人間を探し出すにはやはりコツコツと治療をしながら探すしか方法はないように思う。
ただ、その話をしてがっかりさせるのも悪いと思いナーニョはそれ以上口にはしなかった。
「ナーニョ様、ローニャ様。私はここで魔法を扱う練習を行います。お二人には私同様、魔獣狩りで傷ついた神官を回復させてほしいのです。
彼らも神に仕えるため士気は高いのですが長年の戦闘で多くの者が傷ついているのです」
「わかりました」
「ボッシュ、聖騎士団の連絡所にナーニョ様、ローニャ様をお連れしろ。無礼を働く者はいないと思うが、いれば切り捨てていい」
「畏まりました」
神官長は過激な事を言っているがボッシュという名の神官は取り乱す様子はないみたい。
私達はボッシュ神官の後を追って部屋を出た。
先ほどの連絡通路を通り、一般信者の多くいた通路を出て神殿横にある聖騎士団のいる建物に入った。
「失礼します。聖騎士団長のフォンスレイド様はおられますか?」
「しばしお待ちください」
受付の修道女が問い合わせに行ったようだ。しばらくすると修道女が戻ってきて私達を連絡所の奥にある聖騎士団長の部屋へと案内してくれた。
部屋に着くとすぐに立ち上がり敬礼する聖騎士団長。
「ナーニョ様、ローニャ様、お待ちしておりました! 私、王都の神殿で聖騎士団の団長をしておりますフォンスレイドと申します。神官長より魔法を使い、聖騎士団の者達の治療して頂けると聞いているのですが……」
フォンスレイド様はどこか嬉しそうにしながらも少し不安気な様子で聞いてきた。
「私、ナーニョ・ヘルノルド・アローゼンと言います。先ほどグリークス神官長と話をした後、こちらに来るように話がありました。
今日だけで全ての聖騎士の方々の治療は出来ませんが、これから毎週神殿の方に来る事になりますので治療を続けていきますね」
「!! 有難うございます」
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