第30話
翌日、彼に研究所まで送ってもらい二人で朝の挨拶する。
「「おはようございます。今日も宜しくお願いします」」
「ナーニョさん、ローニャさんおはよう。ちょっと朝すぐにで悪いんだけど、これを見て欲しい」
第二研究員の一人が幾つかの金属を持ってきた。
「これは?」
「君達の持っている指輪について第二研究所は研究を始める事になったんだ。まず君達の話では指輪は装飾品を通して魔力を体外に放出させると聞いた。
ここにある様々な金属を準備した。触って魔力が通しやすいかどうかを確認して欲しい」
「あ! こらっ。長官からナーニョさん達に直接の接触はまだ許されていないでしょう?」
マイアさんがそう言って止めようとする。
「一刻も早く研究をしたいのはどこも同じだ。第一だけずるいじゃないか」
「おはよう諸君。まぁ、まぁ、お互いいがみ合っては新しい物は生まれない。
彼女達の予定は詰まっているがこの世界を救う研究を急ぎたい気持ちも分かる。
二人とも少しの間協力してもらえないだろうか」
「流石マートン長官!!」
私とローニャは第二研究所の人が用意した金属に触れてみる。
「私、これは無理かも~、こっちは大丈夫そう」
ローニャは怯えることなく触った感想を述べている。
ナーニョも一つひとつ手に取り、魔力が流れるかどうかを確認していく。
「流れやすい順に並べていきますね」
ナーニョは素材を全て確認した後、右から順に並べていく。
素材の中には宝石や石、木などがあったけれど、上手く魔力は流せないようだ。
そして魔力を流しやすいのは金属類。
金や銀は特に流しやすかった。富裕層の指輪が金だったのも納得する。
この魔力の通し安さなら上位魔法に使えるような気がする。
私達が使っているのは硬い金属。ずっと使い続けて傷は付いているけれど頑丈な物だ。
魔力の通しやすさよりも普段使いをするために作られたのだろう。そして大きさにもよるのかもしれない。
手のひらさいずの金はとても重くて持ち上げる事が出来なかった。
それに一度に体外に出る魔力があまりに大きい。
指輪を装飾する事で調整しているのかもしれない。
「研究員さん、この順で魔力は通りやすいです。例えばこの金塊、とても魔力を通しやすいです。これなら上位魔法が使えるのかもしれません。
実際私達の世界では裕福な人達は金色の装飾品を使っていました。
ですが、魔力がとても通しやすいけれど、この大きさでは重くて持ち歩くことは出来ないし、一度に大量の魔力を体外に放出してしまうため、大きさの調整は必要だと思います。
きっと装飾を施すことで使用する魔力量を調整しているのだと思います」
「ふむふむ。装飾、ですか。他の指輪にどのような装飾がされているのか分かりますか?」
「上位の物になればなるほど複雑な指輪だと聞いています。実際には見たことがありません。今装飾がある指輪はこれくらいでしょうか」
私は研究員に母の指輪を見せた。ローニャも父の指輪を見せる。
「ふむ。分かりました。また来ます」
「あぁ、そうだ。今日はナーニョ嬢達が入院している騎士達の治療する。立ち合うなら一緒に来るといい」
マートン長官が研究員に話をすると、研究員は途端に目をキラキラと輝かせている。
「それは本当ですか!? 是非参加します」
研究員は頭の中で何か図式が浮かんだように頷き第二研究室へ戻っていった。
「さて、朝から来客があったが今日の予定は騎士達の治療だ。我々はナーニョ嬢とローニャ嬢の魔法を観察し記録する。ナーニョ嬢達は我々を気にせずに治療してくれ」
「わかりました」
朝の打合せをした後、私達は医務室へと向かった。
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