SW2.5を数値から考えてみる

瀬見原

振り直し三回と人間・冒険者生まれについて

 ソードワールド2.5の妙の一つはキャラ作成だと思う。ダイスを振りPCのステータスを設定し、どんなキャラにしようかと思い悩むのは昔から変わらない楽しさがある。

 「冒険者生まれ」はある意味その極地だが、トラブルの元になるためオンラインセッションではあまり使われない。筆者の周りでも暗黙の了解で使わないデータとなっている。振り直しを認めると、人間の限界を超えたステータスを持つデータが作れてしまうという話だ。

 しかし、そうなると気になってくる。この「冒険者生まれ」というデータは実際どの程度問題児なのか?また、そもそも振り直しはどの程度ステータスに影響しているのか?


 インターネット上では、各種族のステータスをダイスの期待値から論じているサイト様が多い。しかし、SW2.5のプレイ環境では、一般的にルールブックⅠに記載されている「三回振り」が採用されている場合が多い。この場合、各ステータスの値は単なる一回のダイスロールの期待値を上回ることが多くなるはずだ。しかし、厳密に計算された例は見たことがない。本稿では振り直しが、どの程度最終的なステータスに影響を与えるかを考えてみる。


 「3回振って最大値となった回をデータとして採用する」とした場合の期待値は、最大値がnとなる確率×nを、全てのnに対して求めその和を取ればよい。

 式は煩雑なので省略するが、1d6の場合その期待値は4.96、2d6の場合9.06となる。一回のダイスロールの期待値(1d6の場合3.5、2d6の場合7)と比較すると顕著に高くなるのが分かる。三回振り直しし一つのステータスに絞れば、比較的高い確率で1d6なら5以上、2d6なら9以上が出せるということだ。


 単純化のため、「三回振りし、最もステータスの合計値が高いものを採用する」と考えたときの各種族のステータスの合計値の期待値を考える。欲しいステータスだけピンポイントに低い、というようなことが無ければこれに近くなることが多いので、大きく実プレイとズレることはないと思う。



1位 グラスランナー、ティエンス 101.58

3位 ダークドワーフ 99.84

4位 ナイトメア 99.58

5位 ウィークリング(種族特徴+3を含む)96.01

6位 アビスボーン 95.84

7位 リルドラケン 95.58

8位 エルフ 95.30

9位 アルヴ 94.09

10位 ソレイユ 93.84

11位 シャドウ 93.58

12位 フロウライト 93.30

13位 メリア 92.33

14位 ドワーフ、ルーンフォーク 91.84

16位 リカント 91.58

17位 レプラカーン 89.30

18位 人間 89.10

19位 スプリガン 88.09

20位 ハイマン 86.09

21位 タビット 85.84


(参考:1回振りの期待値ではグラスランナー:97、人間:84、タビット:81.5)



 お察しのように、振り直しを加えることによりステータスが高くなる可能性は振れるダイスが多い種族のほうが高い。全てのステータスで2dが振れる人間は、ほとんどのステータスが1dのメリアより振り直しの恩恵を受けやすい、というのはSW2.5プレイヤーの体感にも合うだろう。

 グラランとかティエンス、期待値で100超えるのか……とか、ステータス貧者の下位三種族全部ダイス数少ないから更に差広がってるな……とか、色々感想はある。

 おおむね一回振りの期待値から+4〜5程度されており、種族の合計値の順位が変わるほどではないにせよ三回振りでステータス合計の期待値が高まっているのははっきりしている。


 さて、ではここで「冒険者生まれ」はどうなるのか、ということを考える。計算を簡略化するために、冒険者生まれに最も都合のいい心技体の値を三回振りし最も高い合計値で決め、さらにそこからステータスを三回振りする方法でステータス合計の期待値を出す。

 この場合の、人間・冒険者生まれのステータス合計期待値は96.11となる。一回振りの場合のグララン(97)にかなり近い期待値であり、一回振りの人間の期待値84を12以上超えている。スラングで言われる「人間の限界を超えたステータス」にまあ該当するだろう。既に頭痛がしてくる。


 三回振りで条件を揃えた、上記のランキングに挿入すると以下のようになる。



1位 グラスランナー、ティエンス 101.58

3位 ダークドワーフ 99.84

4位 ナイトメア 99.58

(人間・冒険者生まれ 96.11)

5位 ウィークリング(種族特徴+3を含む)96.01

6位 アビスボーン 95.84

7位 リルドラケン 95.58

8位 エルフ 95.30

9位 アルヴ 94.09

10位 ソレイユ 93.84

11位 シャドウ 93.58

12位 フロウライト 93.30

13位 メリア 92.33

14位 ドワーフ、ルーンフォーク 91.84

16位 リカント 91.58

17位 レプラカーン 89.30

18位 人間 89.10

19位 スプリガン 88.09

20位 ハイマン 86.09

21位 タビット 85.84



 ……迫害を受ける系の高ステ種族のド真ん中になってしまった。

 あくまで計算上とはいえ、運命変転持ちの人間でここまで高いステータスが期待値で作れてしまうのは問題があると言わざるを得ないだろう。

 ここまで緩い条件でやらず、例えば冒険者生まれだけ一発振りでやらせる、という手もあるが、それはそれで下振れが大きくなる訳で別の問題が出てくる。やはり紳士協定で「冒険者生まれ」は禁止にしてしまったほうがGMには安牌だろう。

 勿論プレイグループ内で合意が取れている、というのなら、それはそれで遊び方だとは思うが。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SW2.5を数値から考えてみる 瀬見原 @SemiHara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ