今は耐える時

 馬超の蜂起は直ぐに漢陽郡に伝わった。


 雍州にも馬超の武名は轟いていた様で、蜂起の報を聞いた各県の殆どが馬超に呼応した。


 郡治を行っている冀県だけは呼応せず、郡太守と県令が籠り守りを固めていた。


 その報告を馬超は仮の拠点にしている成紀県の城内で聞いた


「ふん。わたしに従わないとは良い度胸だ。その愚かな行いの報いを与えてやる‼」


 馬超は一万の兵を率いて、冀県へと向かう。


 

 数日後。


 一万の兵を率いた馬超は冀県に辿り着いた。


 馬超は城を見るなり、全軍に包囲する様に命じた。


 その命令を聞き、軍勢は南門だけ残して他の門に展開した。


 各門の包囲が完了したと聞き、まずは使者を派遣して降伏する様に促す事にした。


 近くにいる兵を使者にして、城に送った。


 馬に跨る兵が城に近付き、城壁の傍まで来ると、城壁にいる何者かが矢を構えて放った。


「ぎゃあっ」


 放たれた矢は使者の胸に突き立ち、使者は落馬した。


 落馬した使者を見て、城壁に居る兵達は歓声をあげた。


「ぬうっ、愚かな事をしおって、良かろう。皆殺しにしてくれる!」


 馬超は直ぐに全軍に攻撃の命を出した。


「良いか。太守と県令を連れて来い、生死は問わん。それと、先程矢を放った者は絶対に生きて連れて来い⁉」


 その命を聞き、兵達は喊声をあげて突撃していった。




 馬超軍が突撃してくるのを、城壁から見る者が居た。


 その者の手には弓を持ってた。


 弓籠手を着け、動きやすい鎧を身に纏っていた。


 兜を被っているが、強い意思を宿した目と目鼻がくっきりとした顔立ちを持っているのが分かった。


 身長も七尺五寸約百七十センチはあり、手も足も長かった。


 その者が向かって来る馬超軍の兵達を睥睨していると、甲冑を纏った男が近づいて来た。


「妻よ。使者の口上を聞かずに射殺すのは、流石にやり過ぎだぞ」


「いえ、旦那様。これで、馬超に我らは決して降伏しないという事を示す事が出来ました。後は持てる力を全て使い、援軍を待ちましょう」


「そうは言うが、本当に援軍が来るのだろうか?」


 男が不安そうに言うと、女性は叱咤しだした。


「旦那様が馬超に従わないと決めたのです。一度決めた以上、最後の最後まで貫いて下さい。もし、敗れし時はわたしも共に九泉に赴きます」


「・・・・・・分かった」


 女性にそう言われ、男は頷いた。


 男の名は趙昂。字を偉章と言い、その趙昂が妻と呼んだのは自分の妻の王異であった。


 王異は迫りくる馬超軍を背にしつつ、弓を掲げた。


「この戦いに勝利した暁には、褒美を渡すわ。皆の者、奮起しなさい!」


「「「おおおおおおおっっっ‼‼‼」」」


 王異の檄に兵達は答えて、喚声をあげた。




 馬超軍が冀県を攻略している頃。


 陳留に居る曹昂は司馬懿と法正と龐徳を呼んでいた。


「お主らを呼んだのは他でもない。雍州にて、馬超が蜂起をした」


「馬超が⁉」


「これは早く討たねば、後々の禍根になりますな」


 司馬懿と法正の二人は事の重大さが分かっている様で、直ぐに対処すべきと考えていた。


「そうだ。龐徳はあの辺りの地理に明るいであろう。道案内をせよ」


「心得ました」


「主将は司馬懿。参謀は法正にし、兵は二万与える。急ぎ長安に向かい、夏侯将軍と合流せよ」


「「「はっ」」」


 司馬懿達は一礼し、直ぐに準備に取り掛かった。

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