急報

 彭城を陥落した曹昂は移動せず駐屯した。


 兵達も略奪を終えたのか、奪った戦利品を見せ合い自慢し合っていた。


 


 城の大広間。


 曹昂は下邳県で陶謙軍と衝突し壊滅状態にしたという報告を聞いていた。


「陶謙はまだ捕まらないのか」


 逃げ足が速いなと思いつつ報告しに来た兵に訊ねる曹昂。


 兵も申し訳なさそうな顔をしながら答えた。


「はっ。後一歩という所まで追い詰めたのですが。劉備、関羽、張飛の三名が殿をした事で討つ事が叶いませんでした」


「ふむ。流石は劉備三兄弟と言うべきかな」


 武勇に優れているとは知っていたが、此処までとは思っていなかった曹昂。


 今度戦う時は十分に策を練ってから戦った方が良いなと思った。


 話をしていて兵が思い出したのか、もう一つの報告も上げた。


「劉備達と戦っている時に、参謀の盧植に矢が当たったそうです」


「へぇ。盧植が」


 劉備が幽州に居た頃に参謀としてその下に居ると聞いてはいたが、曹昂は幾ら戦場に出ているとはいえ矢に当たるとは思わなかった。


「そう。ところで孫策達はどうしているのかな?」


 曹昂は会った事もない人なので気に留めず、孫策達の事を訊ねた。


「はっ。今は下邳県にて態勢を整えております。攻撃の命令が下り次第、陶謙が居る東成県へ侵攻するとの事です」


「そうか。分かった。下がって休んで良いよ」


 曹昂は報告しに来た兵に下がらせる様に命じると、兵は一礼し部屋から出て行った。


「頼もしい御方ですな。孫策殿は」


 劉巴は孫策の勇敢さを称えた。曹昂も同意する様に頷いた。


「確かに。とは言え、下邳県を降伏させたとは言え兵糧はそれほど無い。其処に于禁、朱霊将軍の隊と合流したんだ。東成県まで行く程の兵糧は無いだろうから兵糧を輸送しないとな」


「はっ。では、その用意は私めが」


 劉巴が兵糧の準備に取り掛かろうとしたところに、兵が駆け込んで来た。


「何事だ?」


「申し上げます‼ 豫州の蔡邕様からの使者が参りましたっ」


「先生が? 何事か?」


「詳しくは分かりませんが。火急の事態が起こったとの事です」


「火急の事態?」


 兵がそう言うのを聞いて劉巴は首を傾げるが、曹昂は目を瞑り顎に手を当てて考えるフリをするだけであった。


(ああ、やっぱり呂布と張邈さんが一緒に反乱を起こしたか。此処は史実通りか)


 一応配下の『三毒』を総動員し、曹操が濮陽に居る事は秘密となっていた。


 張邈が治める陳留郡には情報を通らない様にしていた。加えて『帥』の旗を持った軍が暴れているという情報が入っている。


 その為、張邈は濮陽には曹操が居ないと思い込み反乱を起こしたようだ。


(そう言えば張邈さんが反乱を起こした理由って何なのだろう?)


 陳宮に唆された、徐州で行われた虐殺行為に心を痛めた、友人の曹操が台頭していくのが気に入らなかった等と色々と言われている。


 曹昂の張邈に対する印象だと、どれも違う気がしていた。


(まぁ、とりあえず使者の話を聞くか)


 曹昂は考えるのを止めて使者を呼ぶ事にした。


「使者を此処に」


「はっ」


 報告に来た兵が一礼すると、使者と共にやって来た。


「遠路ご苦労。豫州で何かあったのかな?」


「詳しくはこちらに」


 使者が懐に手を入れると、封に入った手紙を出した。


 使者はその手紙を掲げると、劉巴がその手紙を受け取り曹昂の前までやって来て跪きながら手紙を掲げた。


 曹昂はその手紙を受け取り封を開けて手紙を出して広げた。


「…………えっ⁉」


 曹昂は手紙を端から読んで行くと驚きの声を上げた。


「如何なさいました?」


 曹昂が驚く様子を見て劉巴も気になり声を掛けた。


「……」


 曹昂は何も言わず手紙を劉巴に渡した。


 劉巴はその手紙を広げて中を見た。


「……これは兗州で反乱! 張邈が呂布を領内に招き一軍を預けて濮陽へ侵攻してきたと書かれておりますぞっ‼」


 読み上げていき書かれている内容を見て驚く劉巴。


「……ああ、そうなんだ。まぁ、父上は濮陽に居るから、問題は無いと言えば無いと言えるから良いんだ」


「……確かにそうですな」


 兗州で反乱が起きたと書かれていたので驚いたものの、曹操が濮陽に居るので対処は問題ないと思いつく劉巴。


「それに、豫州には夏侯淵殿と甘寧殿が居ります。御二人を援軍に出せば問題ないですな」


「父上の方はそれで良いんだけど。問題はその後だよ」


 曹昂が困った様に呟くので、劉巴は手紙の続きに目を通した。


「……兗州で反乱が起きた事で夏侯淵と甘寧の両名を援軍としてそれぞれの軍を率いて出発させてから数日後、汝南郡にて黄巾賊が発生し勢力拡大、早く鎮圧せねば潁川郡にまで被害が広がる模様。急ぎ帰還されたし。……殿、これは火急の事態ですぞっ」


 劉巴が手紙を最後まで読むなり叫んだ。


「そうなんだけど。困ったな」


 曹昂は頭が痛いとばかりに溜め息を吐いた。


「陶謙を討てば徐州を得られるが。豫州は失うかもしれない。豫州に帰還すれば、陶謙を討つ事が出来なくなる。どちらを選ぶべきか」


 どうしたら良いか悩む曹昂。


(汝南郡で黄巾賊が暴れるのは蝗害の後だと思っていたが違ったか。まぁ、問題は退くか進むかだな)


 進めば徐州を得るが豫州を失う。退けば豫州は守れるが徐州を得る事が出来なくなる。


 あまりに大きな問題に曹昂は唸った。


「殿。この劉巴、進言いたします」


「ふむ。何かあるかな?」


「此処は豫州へ撤退する事を具申します」


「後もう少しで陶謙を討ち取る事が出来るのに?」


 曹昂からしたら、それで豫州に撤退するのを躊躇していた。


「豫州は殿の父君からお預かりした土地です。其処を失う事になれば、面目を失います。更には、この反乱に乗じて他の勢力が豫州に侵攻してくるかもしれません」


「……成程。……いっその事、孫策達に陶謙に当たらせて、僕達は豫州に帰り黄巾賊を討伐。終わったら徐州に取って返すとかは?」


 少し考えて自分の意見を言う曹昂。それを聞いた劉巴は首を振る。


「それでは兵糧が足りなくなります。本隊は五万ですよ。進軍しないというのであれば、量を減らすなどしてまだ兵糧は保つでしょうが。豫洲に向かい黄巾賊を討伐するとなれば大量に消費します。豫州で食糧を得られるかも分からないのですよ」


「そうか。そういう可能性もあるか……仕方がない。此処は撤退だ」


 曹昂は少し考えた後、断腸の思いで豫洲に撤退する事を決めた。


「至急、孫策達に伝令。直ぐに彭城へ帰還せよっと伝えよっ」


「はっ!」


「同時に撤退の準備を進めておいて」


「承知しました」


 曹昂は撤退する事を決めるなり、この部屋に居る兵と劉巴に命令を下した。


 劉巴達は一礼し部屋を出て行ったが、曹昂は兵を呼び止めた。


「済まないけど、刑螂を呼んできて」


「は、はっ」


 兵は刑螂に何をさせるのだろうとふと思ったが、自分が気にする事ではないと思い直ぐに命に従った。


 少しすると、刑螂が大広間に居る曹昂の元にやって来た。


「殿。お呼びとの事で参りました」


「ああ、刑螂。もっと近くへ」


 曹昂が手招きすると刑螂は曹昂の側にやって来た。


「君にある仕事を命ずる。必ず遂行してくれ」


「はっ。何なりとご命令を」


 刑螂は曹昂がどんな命を下してもやり遂げる気持ちで応えた。


「……先程、豫州の蔡邕先生から文が来た。兗州で反乱が起きた」


「兗州で⁉」


 曹昂がそう告げると刑螂も驚いた顔をしていた。


「それだけなら、まだ対処はできたのだけど、豫州で黄巾賊が暴れ出してね」


「豫州でも騒動が起きたのですね。では、我が軍は」


「撤退する。その前に片付けたい事がある」


「と言いますと?」


「仇の一人である陶謙は今東成県に居る。討つ事は難しい。だが、仇の一人でもある陶応と張闓が居るだろう。豫州に撤退するのに一族の仇を連れて行く事もないだろう」


 曹昂が刑螂にそう告げるのを聞いて、刑螂は頬に汗が流れた。


「……承知しました」


 刑螂は唾を飲み込んで曹昂が何を言いたいのか察して頭を下げ、一礼し部屋を出て行った。


 


 曹昂達が撤退の準備をしている最中、刑螂は百騎ほどの兵を連れて陶応と張闓達が居る部屋になだれ込んだ。


 刑螂は張闓の姿を見るなり、愛用の戦斧を振り下ろし張闓の頭が真っ二つに斬られ、血が滝の様に噴き出した。


 その血が掛かり陶応達は悲鳴をあげだした。


 程なく、刑螂が連れて来た兵達が陶応達に襲い掛かり、部屋から悲鳴絶叫が聞こえて来た。


 悲鳴が止むと、刑螂達は身体が血に染まっていた。刑螂の手には布に包まれた何かを持っていた。


 その布は赤い染みが出来ていた。


 刑螂は部下と共に身体を綺麗にした後、部下を解散させてから、刑螂は布を二重に巻き曹昂の元を訊ねた。


 曹昂は城内にある部屋で休んでいると聞いてその元に向かった。


 刑螂は部屋に入ると曹昂以外に誰も居ない事を確認してから刑螂は頭を下げた。


「ご命令通りに陶応と張闓とその部下達を討ち取りました。陶応と張闓の首は此処に」


 刑螂は持ってる包んでいる布を床に置き、包みを解いて広げた。


 包みからは陶応と張闓の二人の首があった。目はふさがれており、口元から少しだけ赤黒い染みがあった。


 その二つの首を見て曹昂は無言で目を瞑った。


(武人の嘘は武略というからね。一族の仇ではあるのだから悪く思わないでね)


 曹昂は心の中で呟いた後、刑螂にこの二つの首は殺した者達と共に何処かに埋める様に指示した。


 刑螂は一礼し、布を再び包み直し部屋から出て行った。そして、曹昂は陶応達の事を忘れ撤退の準備に取り掛かった。




 数日後。


 手紙を読んだ孫策達が彭城へと帰還した。


 孫策達が到着すると、そのまま大広間へ通された。


 大広間には曹昂を含めた武将達が並んで待っていた。


「呼び出してすまない。こちらも大問題が起きたからね」


「いや、手紙は読んだから知っている。しっかし、後一歩という所まで追い詰めたんだがな」


 曹昂が孫策達を労うと、孫策は手紙の内容を読んでいるので気にしないとばかりに手を振る。


「兗州で反乱は起こるわ。豫州じゃあ黄巾賊が発生するとはな。しかも、俺が治めていた汝南郡で起きたときた。済まない。俺の不始末だ」


 孫策は深く頭を下げた。


 汝南郡太守をしているので責任を感じている様であった。


「こういうのは起きる時は起きるものだから気にしないでいいよ。撤退する事に決まっているけど、異論はあるかい?」


「いや、無い。俺達で城攻めをするとなると兵糧が先に尽きそうだからな。殿は誰にするんだ?」


「陶謙軍はもう徹底的に叩かれているから、殿は置かない。それよりも、問題が降伏させた徐州兵なんだよな」


「豫州に連れて帰れば良いと思うけど、違うのか?」


 孫策が不思議そうに訊ねた。


 敵軍の捕虜、降伏させた兵を自軍の兵に組み込んで連れ回す事など普通にある事なので、曹昂がそう話す理由が分からなかった。


 于禁、朱霊も同じ思いなのか不思議な顔をしていた。


「豫州で黄巾賊が暴れているから食料が手に入れられるか分からないからさ。其処が心配で」


 今の曹昂軍の内訳は豫洲軍五万。兗州軍一万。于禁軍五千。朱霊軍一万。臧覇軍二万。それに加えて徐州の各城を降伏させた元守備兵、劉備及び陶謙軍の捕虜を軍に組み込んだ軍一万。合計十万五千の軍となっている。


(臧覇は領地に于禁と朱霊は主君の元に帰って貰えば良いけど、残り七万か。その内の一万は僕の命令に従うかどうか分からないと来た)


 今は大人しく従っているが、何時まで素直に言う事を聞くか分からなかった。


 下手をしたら曹操が揚州で遭った反乱のような事が起こるかも知れなかった。


 そんな兵を連れて行って黄巾賊と戦っている時に反乱でも起こされたら苦戦すると思う曹昂。


 その為、この徐州兵達の扱いをどうするべきか頭を悩ませていた。


 孫策は曹昂の顔を見て何を悩んでいるのか分かり意見を述べた。


「扱いが困っている奴等が居るんだったら、解放したらどうだ?」


 孫策がそう言うのを聞いて、曹昂は身体を振るわせた。


 曹昂の顔にはその手があったかと書かれていた。


「孫策様。それは徐州兵を解放するという事になるのですよ」


 程普はその意味が分かっているのかという意味で訊ねた。


「ああ、その分兵力は減る。だが、その分兵糧が減る事は無くなるだろう」


「確かにそうですが」


 言っている事は分かるが兵力を失うという事が分かっているのだろうかと心配になる程普。


「それに、そんな何時裏切るか分からない奴等を連れて行って、ここぞという時に逃げられたり反乱を起こされでもしたら嫌だろう」


 孫策が実感が籠もった様に肩を竦めた。


 そんな孫策の態度を見て曹昂は孫策がどうしてそんな事を言うのか考えた。


(……ああ、そうか。反董卓連合軍の時に孫堅殿が連合に加わる前に、強引な手段で兵を集めた後、先鋒を買って出て、華雄と戦っている時に袁術に兵糧を断たれて飢餓状態になってるところに、夜襲を受けてその集めた兵の大半が逃げたって聞いたな)


 そんな事があったので孫策は信用ならない兵を率いる事を嫌がっているのだと察した曹昂。


 しかし、孫策がそういう事を言ったので曹昂はその言葉に乗る事にした。


「そうだね。それが良いね」


「殿。流石にそれは問題が」


「劉備が率いていた兵とか陶謙の配下の兵とか居るんだ。不満が溜まって何時反乱を起こすかも知れないからね。そんな者達を連れて行くぐらいなら、自由にさせた方が良いね」


 劉巴が流石に問題だと言うが、曹昂は気にしないとばかりに手を振る。


「という訳で、徐州兵達は自由にさせよう。ああ、戦利品は取り上げなくて良いから」


「……降伏した兵は我が軍と共に行動していましたので我が軍の内情を見ております。我が軍が不利になるかも知れません。連れて行くのが無理であれば、皆殺しにするという手段もありますが?」


 劉巴がそういう手段もあるぞと言うと曹昂は首を振る。


「項羽や白起みたいな事をしろと? そんな恨まれる様な事をするのはごめんだね」


 曹昂が例に挙げた二人は歴史に名を刻む偉人であるが、降伏した兵と捕虜にした者達を生き埋めにするという残酷な事をした。


 其処まで言われては返す言葉が無いのか劉巴は口を閉ざした。


 劉巴が何も言わないのを見て、根負けしたのだろうと思い曹昂は宣言した。


「徐州兵達に自由にして良いと布告を。後ついでにある話を広めよう」


「「「ある話?」」」


 どんな話を広めるつもりなのか気になる于禁達。


「陶謙は我が軍の武威に畏れ揚州に逃げたって、首を取る事が出来なくなったんだ。せめて、これぐらいはしないとな」


 曹昂からしたら彭城の戦い陶謙の首を取るつもりであったが、取れなかったのが悔しいのか腹いせに誤報を流す事で溜飲を下がらせる事にした。


「それはご随意に」


 劉巴は曹昂の好きにさせる事にした。


「では、皆は撤退の準備を。臧覇殿には約束通り朝廷に今回の戦の功績で琅邪郡の太守になるように奏上しますから」


「感謝する」


 臧覇は大した活躍はしていないのに一郡の太守になれると思い顔を緩ませた。


 その後、曹昂達は撤退の準備を進ませた。同時に徐州兵は自由にさせた。


 徐州兵達は家に帰る事が出来る者を喜ぶ者と劉備達の元に行く者の二通りに別れたが、曹昂は気に留めなかった。


 それよりも、撤退の準備の方が忙しいようであった。


 


 その夜。


 撤退の準備が終わり、曹昂は自分の部屋に向かわずある部屋へと向かった。


 その部屋の前に来ると、曹昂は部屋の主に声を掛けた。


「僕だけど入っても良い?」


『あん? 別に良いぞ』


 その声からに部屋の主は女性の様であった。


 曹昂は扉を開けて部屋に入ると、寝台に座る董白の姿があった。


「どうした? こんな時間に」


「…………」


 董白の呼び掛けに曹昂は答えず近付いた。


 そして、董白の隣に座ると、その胸に顔を押し付けた。


「あ、おい。いきなり、なんだよっ…………まぁ、あたし達は夫婦だから、問題ないか」


 いきなり抱き付かれて驚くよりも照れる董白。


 曹昂は董白の胸に顔を埋めつつ呟いた。


「……今回の戦は負けたよ」


「負けた?」


 曹昂がそう呟くのを聞いて董白は意味が分からず首を傾げつつ、曹昂の頭を撫でた。


「いや、負けたじゃなくて勝っていたの間違いだろう。陶謙を後一歩と言う所まで追い詰めただろう」


「……いや、城を降伏させたり劉備と戦って勝ったりしても、目的の陶謙の首を取る事が出来なかった。だから、負けなのさ」


 董白の胸の柔らかい感触を味わいながら負けたと呟いた理由を話す曹昂。


「ああ、成程な。そういう意味じゃあ負けだな」


「うん。そうなんだ」


 曹昂の言葉の意味が分かり董白は確かになと思い頷いた。


「まぁ、勝敗は兵家の常って言うから仕方がねえ。今度、陶謙と戦う事があったら負けない様にしようぜ」


「今度があったらね……」


 董白の胸に顔を埋め頭を撫でられながら呟く曹昂。


 前世の知識で陶謙が程なく死ぬ事は知っている。なので、再戦する事は無理だと知っている。


 なので、陶謙に勝つ事が事実上不可能だと知っている曹昂。


「? どういう意味だ?」


「深い意味は無いよ。もう少しこのままで良い?」


「……ふん。好きにしろよ。別に問題無いだろう。その、あたしらは……夫婦なんだし……」


 董白は照れているのか言っている途中から声が小さくなっていった。


 夫婦になって、それなりに経っているのにこの初心さは変わらないなと思いながら董白に甘える曹昂。


 その夜。二人は床を共にした。




 数日後。


 徐州兵を自由にさせ、臧覇達が開陽に帰還して七万五千となった曹昂軍は豫洲へと撤退を始めた。

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