遂に出来た‼
それから数ヶ月後。
「出来た‼」
曹昂は線に火を着けて火が付いた事を確認できた。
「やった。やった‼ 成功した‼」
火薬に着火したのを見た曹昂は火が付いた事の喜びを示す為か、諸手を上げながらピョンピョン跳ねていた。
「お、おめでとうございます。曹昂様」
「おめでとうございます?」
何を喜んでいるのか分からない貂蝉と練師は頻りに首を傾げていた。
「ありがとうっ。よし、早速。配合率を書いておこう」
曹昂は竹簡に火薬の配合率を書いた。書き終えるとその竹簡を仕舞った。
「貂蝉。直ぐに人を集めて素焼きの土器を大量に用意して」
「は? 土器ですか?」
「そう。それも出来るだけ大量に」
「はぁ、分かりました」
何をする為に集めるのか分からないがとりあえず命令通りにする貂蝉。
「練師。史渙さんに頼んで人を集めて」
「は、はいっ」
練師も何をするのか分からないが、とりあえず言われた通りに行動する事にした。
二人が一礼して離れて行くと、曹昂は空を見上げながら考えた。
(さて、火薬を使った兵器の実験は目立たない所でしないとな。何処かあったかな?)
少し考えたが、地図を見て決めようと思い曹昂は自室に戻った。
それから更に数日後。
濮陽にある一室。
其処には曹操がおり頬杖をつきながら、不機嫌そうな顔で卓を指で叩いていた。
「また曹昂は何処かに行ったのか?」
「は、はい。今日も若君は何処かに向かわれました」
跪いて報告している部下は不機嫌な曹操の視線にさらされて、脂汗を掻いていた。
ここ最近、曹操は策略の事で曹昂と相談しようと思ったのだが、何処かに行っており捕まらなかった。
「……ええい。これで何度目だ? あやつは何をしているのだっ」
父親である曹操にも何も言わないで何処かに行っており、何をしているのか見当がつかなかった。
だが、曹操からしたらそれよりも今後の事で話がしたいのに、その相談できる者が居ない事の方が問題であった。
(荀彧は内政で今手いっぱいで相談できぬからな。その上息子は密かに何かをしておるからな……困ったものだ)
誰にも相談せずに今後の事を決めるのは問題ありと判断する曹操。
しかし、肝心の相談する者達が忙しくて相談できない。
歯ぎしりしながら考えていた。
「……ふむ。此処は荀彧を頼るか。おい」
「は、はっ」
「今から書状を書く。それを済北郡に居る荀彧の元に届けよ」
「畏まりましたっ」
曹操は筆を取り直ぐに竹簡をしたため、それを部下に渡した。
翌日。
曹操から書状を渡された者は馬を飛ばして済北郡に居る荀彧の元に向かった。
荀彧は元黄巾賊の兵を、この地に住まわせて屯田を行わせていた。
必要な手続きなどを行っていると、曹操からの使者が来たというので会った。
「我が君は何と?」
「はっ。詳しくはこの書状に書いてあるそうです」
そう言って男は書状を荀彧に渡した。
書状を渡された荀彧はその場で広げて中身に目を通した。
『最近、息子とお主が忙しくて策略の事で相談できる者が居ない。お主の出身地である潁川郡には優れた者が多いと聞く。誰か相談できる者はいないだろうか?』
と書かれていた。
「ふむ。若君も忙しいか。まぁ、黄巾賊の折衝をしているから。忙しいのだろう」
荀彧は少し考えると男に告げた。
「殿には近い内にうってつけの人材を推薦しますので、暫しお待ちをと伝えるのだ」
「はっ」
男は一礼して荀彧の前から離れて行った。
男が見えなくなると、荀彧は急いで文をしたためた。
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