第4話 仲間との再会
「フィデリア様、本日はお越しいただきありがとうございました」
座長の言葉に続いて、一座の皆がお辞儀をする。
「こちらこそ、素晴らしいお芝居を見せていただきました。本当に嬉しく思います」
「光栄です」
フィデリア様のお言葉に、皆がさらに一層深くお辞儀をする。
「さぁ、堅苦しい挨拶はここまでです。私達は旅の仲間ですよ。お忘れですか」
フィデリア様の言葉に、歓声が上がる。流石フィデリア様や。うちは大好きや。
「コンスタンサ、元気やったか!」
真っ先にうちに声をかけてくれたのは座長や。
「はい!」
「エスメラルダ」
「お祖母様」
フィデリア様が大きく広げた腕に、エスメラルダ様が包まれた。素敵や。
うちら旅芸人は、声が大きい。皆が一斉に喋るから、もう何がなにやら。そんなときや。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ」
辺境伯イサンドロ様の雄叫びが響いた。驚いた皆の視線の中心では、高々と抱え上げられたエスメラルダ様がおられた。流石辺境伯様や筋力が違う。
「やったぞ。エスメラルダ、やっとだ」
エスメラルダ様も楽しそうに笑ってはる。
「コンスタンサ、君のおかげだ。良くやった。やってくれた! 」
エスメラルダ様をおろした辺境伯イサンドロ様が、うちを高く抱き上げた。
「あれとの婚約解消だ。ありがとう。ありがとう。それも先方からの申込み、神殿の神官もいらっしゃった。我々ももちろん、君も何ら落ち度はない。良くやってくれた! 本当に良くやってくれた! 」
イサンドロ様だけやない。フィデリア様もカンデラリア様もエスメラルダ様も笑顔や。
うちは辺境伯様御一家のお役に立てたんや。
「ありがとうございます。お役に立てて光栄です。経験させていただいただけやなくて、本当に」
「コンスタンサは素晴らしかったのよ」
あとはもう、お祭り騒ぎやった。
言うても次の日も舞台はあるから、お祭り騒ぎは早々に終わったけど。またあとで、辺境伯様が、お祝いやからと一座をお屋敷に招いてくれはることになった。嬉しいわぁ。
「素敵よ、素敵よ、素敵だわ。ありがとうコンスタンサ。あなたのおかげよ。本当に楽しかったし、私は幸せだわ。コンスタンサは私のお友達よ。お祝いには必ず来てね。あと、砦への巡業も忘れないでね。待っているわ」
エスメラルダ様とうちは、再会をお約束してお別れをした。
お友達やという言葉が、本当に嬉しかった。うちら旅芸人は、町から町へ、村から村へ巡業をする。どこにいっても余所者や。村や町に入れてもらえへんこともある。下に見られて、宿に泊めてもらえへんこともある。
盗賊に襲われて、イサンドロ様に助けてもろうて、フィデリア様とカンデラリア様とエスメラルダ様に優しくしてもろうて。お父ちゃんもお母ちゃんもおらん旅芸人のうちにとっての夢のような時間は今日までや。明日からはまた芝居や。
「おかえり。コンスタンサ」
「ただいま」
皆と一緒の天幕で
明日からの芝居に、どうか沢山お客さんがきてくれはりますように。うちらの芝居を喜んでくれはりますように。辺境伯イサンドロ様と御家族の方が、この先もずっとお幸せでありますように。
王都にいる間に、大地母神様の神殿にお参りにいかんとな。お礼のお祈りと、あと、多分あそこに居はる神官様、どなたかわからん御方のお陰でエスメラルダ様は、婚約がなくなって喜んではったから、その御礼のお祈りもある。
うちは、イサンドロ様に再会させてくれはった大地母神様に感謝とお祈りをして、お参りにいくことも心の中でお伝えしてから目を閉じた。
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