月夜のチュロス
森の書店
1章 フラフィ(ふわふわってこと)
フラフィは落ちこぼれ悪魔です。
魔界では悪さをすると1つランクがあがります。
でも、フラフィはいつも人助けをしてしまいます。
雨の日には傘を持たない人に傘を渡したり
飢えている子供にお菓子をあげたり
捨てられた子猫をネコ好きな暖かいお家に連れて行ったり
時に大きな失敗をして奇跡的に大勢の人間の命を救ったりしました。
その度に他の悪魔たちからはバカにされたり笑われたりしました。
フラフィは悩んでました。
「どうして僕は悪魔なんだろう」と。
そんなフラフィを見かねた魔王さんはがっかりしてその後、怒り出した。そして言いました。
「お前は悪魔失格だから人間界に追放だ!」
フラフィは人間界に追放されてしまいました。
人間界は魔界に比べてとてもキレイな場所です。
悪魔であるフラフィには少し住みにくいところでした。
ふらふらと暗い森の中を彷徨い、フラフィはボロボロのお屋敷に辿り着きました。とても古くて立派なお屋敷。けれども人の気配は感じられない。フラフィそのお屋敷のトビラを2回ドンドンとノックしました。
しかし、返事はやっぱりない。どうやら「空き家」のようです。
「ここで一晩寝られるかな…?」
フラフィが扉を開けると暗くて長い廊下が見えた。
何だかとっても不気味。でも悪魔のフラフィにとっては魅力的なものに見えた。
フラフィは少し笑顔になりながら歩き出した。
「ここなら悪い事も起こりそうだし、悪い事も思い付くかも!」
「迷子かい?」
「うわあ!」
フラフィがその声に驚いたのと同時にフラフィよりも背の高い本棚の上から月明かりと共にぬぅっと出てきたのは黒猫でした。
「驚かして悪かったね。俺は黒猫の『ライ』だ」
ライは本棚からストン、と降りて月明かりに照らされた窓に置かれた小さなテーブルの上で窓に背中を預けた状態で尖った耳を立てた。
「ライ?もしかしてRAY?それなら光ってこと?」
「フフ、面白いだろ?黒猫なのにライって。それで迷子のあんたは?」
「僕はフラフィ」
「フラフィ?ハハ、あんたのがよっぽど猫らしい名前だな。それで?ここへは何しに?もしかして「パーティー」の噂を聞いてきたのか?」
「パーティー?いや、僕は…ええっと…その…」
「ああ、いい。興味もない。悪かったな、野暮な事を聞いて。こんな時間にここに来るんだ。どうせロクなもんじゃないよな」
ライは後ろ足で首の辺りを掻きながら退屈な様子で話を続けた。
「あんたがどうであれ『ここ』じゃ関係ない。ここはそういう所だから。おっと、その前にあんたが「何か」ってのは聞いておきたい。あんたはなんなんだ?」
「え?僕?僕は」
「いやまて、当てよう」
ライは長い尻尾をくるりと動かしてフラフィの周りをくるりと回りながらフラフィの全身を詳しく確認し始める。
「ふむ、やぎの尻尾にやぎの下半身。上半身は人間の子供、頭に短い角がある。子供の見た目こそしてるが人間の子供じゃない。それでいてヤギでもないとするならば…あんたは一体何なんだ?」
「僕は…ええっと…悪魔なんだ」
「…そうか、悪魔か。へぇ。噂には聞いてたけどホントにいるんだな。俺も長い事猫をやってるけど、実物に会うのは初めてだ」
ライは後ろ足をあげて毛づくろいをしながら話した。
フラフィはその様子に目を丸くしながら頭を掻いていた。
「僕を見て驚かないの?」
「なぜ?」
「なぜって僕は悪魔だから」
「それならあとで驚くかもね」
「あとで?あとでってどうして今驚かないの?」
「猫は気まぐれだからね」
ライは伸びをしたあと月明かりの廊下を進む。
その様子を眺めていたフラフィにライは声をかける。
「今夜は『パーティー』だ。俺はもう行くよ」
「そうなの?僕、パーティーに呼ばれてないや」
「ハハハ、悪魔を呼ぶパーティーがあるなら是非見てみたいね」
そう言うとライは廊下をさらに歩き出した。
四足を並べてまるで月明かりの海を歩くようにスタスタと廊下を進む。フラフィは少し怪訝そうに口を尖らせたあとにライの後ろを続く。
ライはその様子を後ろ耳を立てて確認したあとに何事もなかったかのように廊下を進んだ。
しばらく無言の時間が経ったあと
月明かりが影を伸ばした頃、ライはある扉の前で立ち止まる。
ライは扉の前でちょこんと座っている。
フラフィがそれに追いつくと扉の向こうから大きな物音が聞こえた。何かが倒れるような大きな音にフラフィは肩を竦めた。
フラフィは怯えながらライに尋ねる。
「なにかいるの?」
「そりゃ居るさ。この部屋は「使用中」だからな」
「音が聞こえるけどなにがいるの?」
「何も居ないかも知れないし、何かいるかも知れない」
フラフィは恐る恐る扉に近寄る。
扉に耳を当てて見せる。
扉の向こうからお皿の割れる音やガラスを踏む音、何かが壊れるような音が聞こえる。
「よくわからないけど、良くないことが起こるかも」
フラフィはそう言うと扉からゆっくりと後退りした。
ライは右手をペロペロと舐めたあとに顔を洗いながら話した。
「じゃあ扉を開けよう」
「なんで?」
「なんで?おかしな事を。あんたは悪魔じゃないか」
そう言うとライは扉のドアノブに飛び掛り、押し開けた。
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