第9話 3月28日 持ち出しリストその1 天国は明日で終わり、荷造り開始

 3月28日(木曜日)持ち出しリストその1 天国は明日で終わり、荷造り開始


 塾の春期講習も中盤に差し掛かった。

 涼子は、みゆを塾に送り届けて、さっそく荷造りの準備を始めた。

 明日はマサオが台湾たいわん出張から帰ってくる。


 まずは「とつぜんいなくなる時のカウントダウン持ち出しリスト」の作成だ。


 これは友人の彩子あやこの助言もあって、ひらめいた。


 彩子あやこの離婚した友達は、夫に「断捨離だんしゃり&衣替え」と称して、せっせとシーズンオフの洋服を段ボールに詰めては、彩子あやこの家に保管しに来ていたそうだ。

「1年後には洋服はほぼ残ってない状態になってたから、逃げる時の荷物が少なかった」と言っていた。

 なんてグッドアイデアだろうか。知恵を授けてくれてありがとう。


 彩子あやこは、いつも涼子の話をじっと聞いてくれる。この歳になっても頻繁ひんぱんに会っていて、数少ない高校の同級生の中で一番が仲がいい。

 お互いに相談し、相談され、大切な存在だ。そして涼子に何かあったときは助けてくれていた。


 2年前の夏、DV騒動で警察が来た時は、娘のみゆを預かってくれた。


 10日前の『コロス』があったときも、「しばらくうちに来ていいよ」と涼子とみゆを泊めてくれている。

 彩子は早くに結婚したので、娘ふたりは家を出て独立している。5年前に再婚したご主人は優しさを絵に書いたような人物で、彩子と同じように親身になってくれる。


 さて、涼子の場合、公営住宅へ申し込みをして引っ越し先が決まるまでは、荷物の運び出し先は実家になる。


 持ち出し荷物リストはとりあえず5つに分類してみた。


(1)決行日、その時までに少しずつ実家へ持ち出しリスト

(2)1週間前の持ち出しリスト

(3)2日前の持ち出しリスト

(4)前日の持ち出しリスト

(5)当日の持ち出しリスト


「(1)決行日、その時までに少しずつ実家へ持ち出しリストその1」について


 時間があるときに、少しずつ実家へ移動させるものたち。段ボール1個ずつでも、暇を見つけては実家へ置きに行こう。


 日常的には使っておらず、家からなくなっても誰も気づかない物たち...

 主には、シーズンオフの服や靴、新居で使う食器(もったいなくてまだ未使用の物)、愛蔵版あいぞうばんの本たち、思い出の写真、過去の10年日記2冊、いろいろ記録しているカレンダー。


 シーズンオフの家電(冬まで使わない物)、アンティークの間接照明ライト、しばらく出番のない学用品、マンガ、布団類(羽毛掛け布団、掛け布団カバー、シーツカバー、枕カバー)、未使用のクッションとカバー、コンセント類...


 ちょっと書き出しただけでも、たくさんあった。(多すぎる、もっと吟味ぎんみして少数精鋭しょうすうせいえいにしないといけないな)


 キャンプ用の折り畳みテーブルや椅子は引っ越し先が狭かった時に役に立つかも知れないから持ち出したいな。


 あと3日で4月1日だ。

 かなり暖かくなってきた。暖房も必要ないからサーキュレーターと加湿器は、ロフトに片づけたふりして持ち出していいだろう。

 扇風機はこれから使うかもしれない、用心して「(2)1週間前の持ち出しリスト」に移そうか。

 冬までこの家にいるつもりは毛頭ない。

 お気に入りのXmasリース、正月用飾りは持っていこう。



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