ガラケー、いつの間に黒歴史? 作者 歪風

@arin6131

第1話

「黒歴史放出中です」って友だちにメールした。

アーその時,SMSで送ったのだと気づくべきだった。

「わたしゃスマホじゃないから、見れるわけがないでしょ」

と、怒りの返信がきた。

ごめん、あなたがガラケーだなんて、暴くつもりじゃなかったのに、なんて罪深いわたし。

あなたとの友情を思いかえせば、

軍票というB円が、通貨だった小学生時代。銭湯でいっしょに入浴したね。

米ドルが通貨だった、中高生時代。わたしは失恋ばかりしていたのに、あなたにはすてきなボーイフレンドがいた。うらやましー。

日本円が通貨になった、大学生時代の後。パスポートはもう必要ないからって、ヤマト旅行を気軽に楽しんでいたあなた。

この島の黒歴史や世がわりを、ともに生きて目撃し、体験してきたわたしたち。

大切で掛けがえのない、貴重な友だちなのに、

ガラケーで縁が切れるなんて、思いたくない。切りたくない。

お願いだから、機嫌をなおしてちょうだい。

あなたは以前、「子どもは育てるのに必死で余裕がなかったけど、孫は目に入れても痛くないほどかわいい」と、笑っていたけど、

ほんとにそのとおりだと、今ごろになって感じる、鈍感なわたし。

あなたが敏感に気づいてくれるから、話しているだけで救われるわたし。

あの時も、スフレとセフレは大違いだと、あなたが教えてくれなかったら、「セフレください」と注文して、スイーツ店員にエロ婆だと軽蔑されるところだった。

それだけでなく、「フェチ」と「フェラ」は一字違いだから、ミスしそうだと悩むわたしに、

「フェラはフェチの一種のようなもの、だから気にしないで」と説明して、わたしを励ましてくれたでしょう。

物知りのあなたがなぜガラケーなの?理由を知りたい。

エエッ「年金が足りなくて節約している」ですって……。

B円、米ドル、日本円と通貨が切りかわるたび、お金が信じられなくなったから、老後のための貯金をしなかったわけ。

あなたその気持ち、よーくわかる。

それなら、XYZ世代を見ならって、ウェブ小説で稼いだらどうかしら。

頭脳が明晰なあなたのことだから、ベストセラーがきっと書けるって信じている、ぜったい応援するから。

ところで、ガラケーでもスマホでも、あの世とは通信できない。

だから、わたしが生きている間に、あなたのウェブ小説、読ませるって約束してください。

期待して待っています。

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