第4話 国家権力との戦い
社長から『店長』という最高指揮官を仰せつかった僕は、さっそくアルバイトの求人を開始します。
当時の平均的な時給800円では心許ないと900円で応募。これに副社長は猛反対しましたが「専門知識を持つバイトで無ければ雇う意味がありません」と説得し渋々許可してもらいました。
開店当初はヲ客様も多数来店していただき順風満帆。
そんなある日、ダークカラーな制服に身を包んだ厳めしい方々がご来店されます。腰にはピストルも提げておられました。
「てんちょー、おれら逮捕されるんですかぁ!?」
怯えるバイトくん達を庇うように「僕が店長です」と立ち塞がりました。
普段、偉そうに指示している立場上、ここで逃げ出すわけにはいきません。
緊張感に震える僕を、けれどダークカラーな御方達は「いえいえ、ちょっとお願いがありまして」と満面のビジネススマイル。
「このお店は条例違反を犯しているわけではありません。けれど、このビルは家族連れで賑わうショッピングセンターです。……そちらの、ゲームソフトですね。棚分けとか出来ませんか」
どうやら「あのエッチな店をなんとかしろ」と苦情があったようです。
現在のように「アダルト」シールを貼って一般商品とは別にする法律が出来たのはこの数年後。だから、この時点では命令も強制も出来ないはずです。
「これらソフトはすべて合法です」
「ええ、それは存じております」
「……わかりました」
権力に弱い僕はアダルトゲームと一般ゲームを別の棚に分けることにしました。
営業中は不可能ですから閉店後の作業になります。すると相場より高い時給を払っているバイトくん達は残せません。副社長が激高するのは目に見えています。
僕はひとり、朝まで泊まり込みで棚分け作業に勤しみました。
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