第47話 ”黒き魔獣”の再来

「バルゥゥ・・・!」

「舐めるなよ! そりゃぁ!」

「キャン!」

 

 レイドの剣はフォレストウルフをいとも簡単に真っ二つにした。

 他の個体はそれを見て警戒し、距離を取り始める。


「しかし、囲まれたか・・・」

「どうしますか? 詠唱魔術を放ちますか?」

「いや、確かに強力だが、隙を晒してしまう。ここは無詠唱魔法だ」


「ガルゥ!」

「消えてください! それ!」

 エレーヌの魔術が炸裂する!


「ガ・・・ ゥ・・・」 

「・・・ふぅ。それにしても、数が多いですね・・・」


 エレーヌの攻撃が余り響いていない。無詠唱魔術で威力が減ったためだ。


「・・・僕が呪術で応戦するよ! 魔術と違って近接戦闘向きだ!」

「ああ、頼む!」


 呪術は自分の魔力を使う魔術とは違い、大気中の魔素などを使用する。魔力切れが無い優れた攻撃手段だ。


「Menj el! Menj a pokolba!」

 ロベルトがそう唱えた途端、地中から手が生えだした!

 

「ヴヴォァァ・・・ ヨコセ・・・ ヨコセ・・・!」


「何だ? フォレストウルフ共が引きずり込まれた・・・?」

「さあ、僕にも行き先は分からないよ?」


「Menj el! Menj a pokolba!」

「ギャゥゥ!」

 

「Menj el! Menj a pokolba!」

「ギャン!」

 

「Menj el! Menj a pokolba!」

「ガリュアァ!?」


「何て詠唱の速さだ・・・!」


 フォレストウルフは一匹もロベルトに近づくことは出来ず、そのまま半数が倒されてしまった!


「ふう・・・ こんなものかな?」

「よし! これはいけるぞ! 残りのフォレストウルフを殲滅するんだ!」

「・・・僕は少し疲れたよ、休んでいいかな?」

「ああ、助かった!」


「行くぞ! インテグリー! うおぉぉぉ!」

「バルゥゥ!」

「・・・遅いっ!」


「ギャゥ!?」

「まだまだ! 次だ!」


 レイドは残るフォレストウルフを掃討していく。


「・・・なんだ、十分強いじゃないか?」

「レイド、日に日に強くなっていきますね・・・」

 

 ――あっという間に残りを倒してしまったのだ。


「ふぅ・・・ これで最後か」

「レイド、一瞬でしたね! ・・・私は余り活躍できなかったですが。これからは近接戦闘も・・・」


「いいや、俺は近接戦闘、エレーヌは遠距離。それで良いじゃないか。二人で一組だ」

「レイド・・・」


「・・・僕は部外者かな?」

「あっ、ゴホン。取りあえず耳を切り取っていこう。討伐の印となるから」

「えぇ・・・ この量をですか・・・」


 数百体のフォレストウルフを倒してしまったので、これは相当な時間がかかりそうだ・・・

「仕方ない。やるとするか・・・」



 ~それから数十分後~


「よし、ようやく切り終えたぞ・・・!」

「はぁ・・・ これで随分と時間を取られちゃったよ・・・」


「さて、次の魔獣を探しますか?」

「ああ、頼むよ。エレーヌ」

「任せてください! Μαγεία... κάνω τους γύρω μου... 」


 エレーヌが索敵魔術を始めた。しばらく時間がかかるようだ・・・


「ロベルト、さっきも呪術は何だ?」

「さあね。呪術というのは周りの魔素から力をもらうから、場所によって影響されるんだ」


「そうなのか・・・ そこは使い勝手が悪いな・・・」

「・・・魔素は人の怨念が一番かかわり深いとかいう説もあるんだよ?」

 ロベルトは不気味な笑みを浮かべた。


(こ、怖いから止めてくれ! それなら、”あの手”は何だったんだ!?)

 そういうのは無理なレイドであった・・・


「レイド・・・」

「どうした、エレーヌ。何か見つけたか?」

「ええ、見つけましたが、どうやら様子がおかしいです・・・」


「何? どういうことだ?」

「まず、ここの森ではありえないような強さの個体です。そして、誰かを追っています!」

「まずいぞ! 今すぐ助けに行くんだ!」


 レイドたちはすぐに走り始めたのだった・・・!



「ゴルァァァァァァァ!!!」


「・・・まだ遠く離れているのに、こんなに聞こえるのか!?」

「恐らく相手は大型魔獣です! 気を引き締めていきましょう!」


 しばらく疾走を続けた後、開けた場所へとたどり着いた。


「た、助けてくれぇ・・・!」

「あれは、 ・・・マルク?」


 追いかけられていたのはマルクとファブリスだった。

 その後ろには・・・ 黒き魔獣だ!

 恐らく、ジャイアントベアーが”黒化”したものだろう・・・

 

「・・・! あれはレイド! おい! 我を助けろ!」


「ああ、マルク様! 待ってください! はぁ・・・ はぁ・・・」

 ファブリスは豊満な体を揺らしながら走っている。

 しかし、余りにも遅すぎたのだ・・・


「ゴルゥ!」

「ああっ! 何をする! 俺様を誰だと思っている! 止めろ! 止めてくれぇ! ア゛ア゛!」


「エレーヌ、見るな・・・」


「ギャァァァ! 腕がァ! ア゛ェ ア ァ・・・ タス・・・ ケ・・・」

 悲痛な顔をレイドたちに向けてきた。 ・・・もう頭しかないのだ。

 

「あらら・・・ 食べてしまったよ・・・」


「ファブリス! ファブリィーース!!!!」

 マルクは嘆いている。それに比べて、三人は何かを悟った顔だった。


「・・・ここになぜ黒き魔獣がいるのか分からない。ただ、倒さなければならないのは確実だ・・・!」

「ええ・・・ これ以上犠牲者を増やすわけにはいきません」


「ゴルァァァァ!!!」

 レイドたちと、黒き魔獣の戦いが再び始まる・・・

 

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