第20話 魔剣の力

「侵入者、ハッケン! 侵入者、ハッケン!」

 そう言いながら現れたのは、からくり仕掛けの兵士だった。


「まさか、魔導人形ですか!?」

 エレーヌが驚愕する。

「魔導人形? こいつらはそう言うのか!?」

 レイドは剣を魔導人形とやらの方へ向けながら、エレーヌに聞き返した。


「奴らは古代兵器です! 魔力で動く人形ですよ!」

「くそ! 凄い量だ! この数じゃさすがに不味い! さっさと離脱するぞ!」

「ええ、 ・・・痛っ、あ、足が・・・」


 どうやらエレーヌは先ほどの崩落に巻き込まれた際、足をくじいてしまったようだ・・・

「は、走れそうにないです・・・」

 エレーヌが青ざめる。


(くそ! こうなったら!)

 レイドは追いかけてくる人形を尻目に、エレーヌの方へ駆け寄った。

「な、なんですか!? ああっ!?」


 レイドはエレーヌを抱きかかえると、全力で反対方向へ走り去る。

「ちょ、ちょっと! 痛いです! もうちょっとマシな持ち方は無かったんですか!?」

「今はそれどころじゃないだろ!」


「侵入者、ハッケン! 排除、スル!」

 人形たちは依然として追いかけてくる。そろそろ真っ暗になってきた。

 これじゃ逃げることもままならない・・・


「エレーヌ! ここら周辺を照らしてくれ!」

「!? ・・・・分かりました!」

 エレーヌは即座に杖を光らした。だんだんと建物の構造が見えてくる。


 レイドは、狭い通路を見つける。 これで追手の数を減らせるだろう。

「あそこの狭いところに逃げる!」

「ええ!? か、壁に当てないでくださいよ!」


 レイドは一目散に入る。

「きゃああああ! 怖いです!」

(いちいち注文が多いなあ!)

 そう声に出す暇も無い。しばらくの間、レイドたちは逃げ回るのだった・・・



「ぜえ、ぜえ、ぜえ・・・ も、もう大丈夫か・・・」

 レイドは肩で息をしながらも、何とか周りを見渡す。


「と、とんだ災難でした・・・」

 エレーヌはレイドに担がれたまま、ぐったりするのだった。

(なんか今まで気づいていなかったけど、なんかエレーヌからいい匂いがするなあ・・・)


「レイド? 早く降ろしてください」

「あ、ああ。い、今降ろすよ」

 そう言って、レイドはそそくさと肩から担ぎ降ろす。


「追手はいませんよね・・・」

 エレーヌは周りを見計らいながら、自身に治癒魔術を施す。

 杖が緑色に光った後、エレーヌの足は完全に回復したようだ。


「ふう。レイド、助かりました・・・ 感謝します」

「ああ。それよりも、だいぶ内部まで来てしまったようだな・・・」


 今レイドたちは、遺跡内にあった小部屋で人形たちの追跡をしのいでいる。

 部屋の中にはどうやら沢山の本が保管されているようだ。


「これは・・・ 何語でしょうか・・・」

 エレーヌがその中の本の一冊を手に取り、ぺらぺらとページをめくってみる。

 何語か分からず、一部が擦り切れておりまともに見ることもできない。


「私たちが知らない言語ということは、相当昔のものなんでしょう・・・ これは大発見ですが、今はそんなことを言っている暇はありませんね・・・」

「・・・いつまでもここにいることはできない。早くここから脱出する方法を探さないと・・・」


 レイドがそう言っていると、どうやら追手が追い付いてきたようだ。

「侵入者、ソウサク! 侵入者、チカクニイル!」

「!? くそ、もう嗅ぎつけてきたか・・・」


「侵入者、ハッケン!」

 勢い良く扉から2体の人形が飛び出してきた。

「おららああああ!!」

 先手必勝! 先に叩き込む!


 レイドは剣で勢いよく人形に叩きつける。

「ギギギ・・・」

 どうやら一回では倒れなかったようだ。ならばもう一回!


 レイドが1体の方へ夢中になっている間に、もう1体が既に魔法を詠唱し始めていた。しかし、レイドはそれに気づいていない。

「レイド! 危ない・・・! それ!」


 エレーヌがとっさにもう1体の方を魔法で攻撃した。

「!? エレーヌ! 助かった!」

「一人で戦いに行かないでください! 今は私が付いています!」


 そうだ、今は仲間がいるんだ。協力すれば、倒せるかも!

「おらああああ! くたばれ!」

 レイドは再び人形に切り込む。

「ギギギ!」

 

 人形も反応し、お互いの剣が交わる。

 ギリギリギリギリ・・・

 剣が火花をあげている。

(こいつ、なんて力してやがる!)


 徐々にレイドが押されていく・・・

「ギギギ・・・」

「させません!」


 エレーヌは詠唱が終わった大型魔法を繰り出す。

 人形の下に、魔法陣が浮かび上がった。そして、棘が飛び出し、人形を串刺しにした。


「ギガ!? ・・・・・・ガ」

 一体の人形はこと切れたようだ。

「ガガガ・・・」

 もう片方の人形は、また魔法を唱え、そして発射した。


(・・・エレーヌの反撃が間に合わなかったか!)

 そうしている間にも、魔法は止まらずこちらへ向かってくる。避ける暇など無いようだ。

(こうなったら!)


「うおおおおお!!」

 レイドは剣で魔法を迎え撃とうとしたのだ。余りにも無謀。だったのだが・・・


「!?」

 突如として、今持っている剣、インテグリーが光りだした! そして、人形が放った魔法をみるみる吸収していく・・・!


(な、何が起こっているんだ!?)

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