魔力無し、チート婚約者ができる ～インテグリー＝フェイス 婚約者は裏ボスだった！？ 死の運命を変え、ゲーム本編をぶっ壊す！〜

第14話 平和な？ 夕食会

　レイドは夕食の場所まで来た。

　既にラジ、ソニア、ロイクが席についている。

　なんだろう・・・　ロイクはアザだらけなんだが。

「ただいま参りました。父さん」

　エレーヌはそう言うと席に座った。

　レイドもその隣に座る。

「おい！　エレーヌのとなｒ・・・」

　ロイクは何か言おうとしたが、止まった。

　ラジの殺すような視線を恐れたのだ。

「・・・皆、そろったようだな。では、料理を持ってこようか」

　ラジは執事に何か言うと、メイドたちが何やらとても大きな鍋を持ってきた。

　中身は・・・　スープに大きな肉が入っている。

　うーん、何か肉が後で付け足されたような感じがするな・・・

　そう思っていると、メイドに連れていかれていたカインが戻ってきた。

「いやー・・・　参ったぜ・・・」

　カインは珍しく疲れ果てている。どうしたのだろうか。

「生きていたのか、カイン。それより、お前がこれを作ったのか？」

　カインはこう見えても料理においては一流なので、高級レストランのような盛り付けも出来るのだ。

「そうなんだけどさ・・・」

　カインは語り始める。さかのぼること、カインが連れ去られた後・・・

「痛え、痛えよ！」

　カインはそのままメイドたちに厨房まで連行された。

「ほら、着いたよ」

　メイドが手を放した。カインは倒れこむ。

「あんた、料理が得意なんだろう？　じゃあ、今日の夕飯をつくってくれよ」

「は？　何を言ってるんだ？　シェフはいないのか？」

　カインが問う。

「いないよ。うちらメイドたちで手をまわしてるんだが、肉を単純に焼いているばかりなんだ」

「まじかよ・・・」

　この家は肉しか食ってないんか・・・　飽きないんかよ。

　カインは立ち上がり、厨房を見回し、設備を観察する。

（設備、食材もろとも大丈夫だ。これなら作れるだろう）

　カインはそう考える。

「おっしゃ、任してくれ！　俺がうまい飯を作ってやる！」

　そう言うと、カインはさっそく作業に取り掛かった。

「まずは、スープ類だな・・・」

　カインは鍋に香草類を入れ、煮込んでいる。

（あとは、野菜をいれてっと・・・）

　カインが夢中で料理を作っていると、さっきのメイドたちが戻ってきた。

　鍋の中身を見るや否や、メイドたちは何やら肉を持ってきた。

「ちょっと、肉を入れないと何も始まらないでしょ！」

　メイドが詰め寄ってくる。

「ちょ、まだ下ごしらえが・・・　あと、それはメインディッシュに・・・」

　カインが何か言おうとしたが、どうやら手遅れだったようだ。

「うるさい！　肉を入れるぞ！」

　カインが作った鍋の中身にどんどん肉を入れていく。

「やめろおおおおおお！！！」

　叫び声が厨房にこだまするのだった・・・

「と、言うわけだ・・・」

「まあ、バイセン家の皆には好評みたいだけどね・・・・」

　レイドはそう言う。

「うまいぞ！　うまいぞ！　久しぶりにこんなのが食えた・・・」

「今まで、肉を乱雑に焼いていただけでしたからね・・・」

　家族みんな、おいしそうに食べている。

　しばらく無心で食べていたのち、ラジがふと口を開けた。

「そうだ、エレーヌ。税収のやつはどうなった？」

「はい。大半が終わりました。レイドさんがものすごい速さで片付けていくんです」

　エレーヌは少し嬉しそうに話す。

「それは良かった。レイド君の実力は確かなようだったな！」

「はい。後、演算の仕方も教えてくれると」

「何！？　いろいろとすまない。私たちも何かできることがあればいいんだが・・・　あいにく・・・」

「いや、別に大丈夫ですよ」

　（この人たちの為に頑張るのは、悪くないかもしれない・・・）

　レイドは恥ずかしそうに笑うのだった。

（エレーヌと家庭教師ごっこだと・・・！　くそ！　あの猿め！　考えるんだ！　ロイク・・・　何か、あいつを懲らしめる方法を・・・！）

　ロイクは苦い顔をしながら悩んでいたが、しばらくたったのち、妙案を思いついたようだ。

「父上！　僕が剣術などの近接戦闘術を教えましょう！」

　ロイクが立ち上がって言った。

「何？　どうせ、レイド君のことを締め上げるのだろう？」

「いや、事前にレイド君との約束もあります。ぜひ、やりましょう！」

　ラジがしばらく悩んだ後、レイドに視線を向ける。

「レイド君、ロイクが剣術を教えてくれるようだ。君もここで過ごすには、強さが必要だろう。どうだね？」

「・・・分かりました。ロイクさんから教えを請いたいと思います」

　レイドはしばらく悩んだのち、そう言った。

（ここで強くなっておくべきだ。すべては俺、そして、エレーヌを守るため・・・）

　レイドはエレーヌに一目ぼれしている。彼の心境にも変化があったようだ。

「ふふふ、その意気だよレイド君。どんなことをしても、まあ愛のムチだとか言っておけば・・・」

　ロイクは他人に聞こえないようにブツブツ言っていた。

　レイドの戦いはまだまだ終わらない。これからどれだけ強くなれるかが、彼の運命に抗うためのカギだ。