第11話 狩人の街 アミアン

「ぜぇ、ぜぇ、ロイクの奴どこへ行ったんだ?」

 カインは辺りを見回す。


 走り去ったロイクを追いかけるためにこちらも走ってきたが、見つからない。

 ついにはアミアンに着いてしまった。

 堅牢な石造りの壁に囲まれているこの街は、東の国境の最前線である。


「アミアンに着いてしまったな・・・ ひとまず中に入ってみよう。流石のあいつも少したったら俺たちのことを探し始めるだろう」

 レイドはそう言って街の検問所に向かった。

 

 特に何も起こることが無く入ることが出来た。必要だったのはお金だけだったようで、今まで働いた分とコレル子爵からもらった分で十分に足りた。


 検問所から真っすぐに伸びている街道には、さまざま店が並んでいる。

「ジャイアントベアの肉が手に入っているよ~ 早い者勝ちだ!」

「俺に買わせてくれ!」

「いや、俺だ!」


「すまない、武器を買いたいのだが・・・」

「・・・ここに並んでいるやつを自由に見ていきな。安くはしねえぞ」


 人々でにぎわっているのが分かる光景だ。 

「なあ、レイド様。腹が減ったよな。よかったらあれを食わねえか?」

 カインはそう言って少し先にある食堂を指さす。


 (確かに、もう昼を過ぎているころだ。お金は十分にあるし、いいかな・・・)

「ああ、いいぞ。食いに行こう」

 レイドとカインは食堂へ向かった。


 食堂の中に入る。すでに中には沢山の人たちで溢れかえっていた。

「いらっしゃい。そこのテーブルに座んな」

 店員のおばさんにそう告げられ、レイドたちは外の見えるテーブル席に座る。


(さてさて、メニューは・・・)

 レイドはメニュー表を開いた。


 ~ ダムラヤの酒場 今日のメニュー ~


 ・ジャイアントベアのそのまんま丸焼き

 ・歴史あるポイザスネークのかば焼き

 ・ホーンラビットのジューシーすぎる唐揚げ

 ・各種酒類


 これはこれは。肉類で埋め尽くされているな。これも、狩人の街ならではの光景だろう。 

「とりあえず、一つ頼んでみようぜ」

 カインはそう言ってホーンラビットの唐揚げを注文した。

 

「へい、おまち!」

 しばらくたったのち、来たのは山盛りの唐揚げだ。明らかに一人では食べきることが出来なさそうなので、レイドとカインは協力して食することにした。


 うまい。うまいのだが・・・ いかんせん量が多すぎる。こんなの胃が持たれてしまいそうだ。

 レイドたちが夢中で食べている中、こちらを見てくる人がいた。


「おい、あの小僧が身に着けている剣。どう思うよ」

「ああ、あれはどう見ても魔剣だ。あいつはただ者じゃねえぞ・・・」

「きっとものすごい強者なんだろうな・・・」

 数人の戦士がそう話している。


(何かに見られているような・・・)

 レイドは、皆から畏怖の目で見られていることには気づいていなかった・・・


 数十分後、レイドたちはようやく食べ終わる。

「ふー、腹がいっぱいだぜ・・・」

 カインは満足そうな顔だ。


 ざわざわざわ・・・

 何やら外が騒がしい。

「なんだ? なんかの見世物か?」

 カインがそうつぶやくが、どうやら違ったようだ。


「レイド君! 探したよ~ 急にいなくなるからさあ」

 青髪の青年、ロイクだ。

 

「おい、あのロイクと知り合いならしいぞ! やっぱりただもんじゃねえ・・・!」

「あの狂人の・・・」

 先ほどの戦士たちがまた話し始める。さらにレイドは勘違いされることとなった。


「貴方が意味の分からないことを言いながら、走り去っていったじゃないですか!」

 レイドはそう反論する。

「え? そうだっけ? もう忘れちゃったよ! あはは!」

 ロイクはどうでもよさそうに反応する。


「それより、先に家にこのことを伝えておいたよ~ 一応迎え入れてくれるみたい。良かったねえ~」

 ロイクは万歳! の格好をする。


「ありがとうございます。今から向かいますか?」

 レイドはそう問う。


「うん。あ、一個先に言っておくね。 可愛い可愛いエレーヌに何か変なことをしようとしたら・・・ リアルに爆殺するよ?」

 ロイクから目の光が失う。


「やりません! やりません!」

 怖え・・・ レイドは顔を引きつらせながら言う。

「それでよし! じゃあ行くか!」

 ロイクはレイドたちを引き連れてバイセン家へ向かうことにした。


(ようやくのエレーヌとの初対面だ。俺は何があっても生き残る・・・ 運命を、変えるんだ!)

 レイドはそう決意する。


 エレーヌとの初対面。いや、再開とも言うべきだろうか・・・ レイドにとってこの出会いは、彼の意識を根本から変えることとなる。


 ちなみにあの後、レイドはアミアンの人々に、"狂人の犬” と呼ばれることとなる・・・ もちろん、彼はまだ知らない・・・

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