第5話


「あ!その衣装!コブラに出て来るレデイではないですか?!

とても素敵ですね!今日の仮装イベントに参加されるのですか?」


男性は驚きながらもレデイの様な姿をしているサキの姿を見て

仮装しているのだと思う。


(コブラ?レディ?仮装イベント???……)

「あ!はい。おかしくはないですかね……」

咄嗟にサキは恥ずかしそうに聞くが


「いえ!とても素敵ですよ!

私たちも仮装イベント会場へ見物に行くのですが、

貴女が男性の視線を独り占めする事は間違いないです」


男性は素敵なボディーラインがハッキリと判る程

薄手のボディスーツを身に付けていて可愛いサキに見とれている。


「あら!ありがとうございます」サキは二人にお礼を言うと

イベント会場へ行くと言う二人の後に付いて行く事にした。


(この星は今までに見た事が無いわ……

ワープリングは整備中なのでワープは出来ない筈なのに

おそらくどこか遠くの星までワープをしてしまったのね………)


 サキはそう思いながら二人の後に付いて行くと

大勢の人たちが集まっている場所の近くまで来た。


サキは道中沢山の男性から声を掛けられるが、

どう対応していいのか判らず笑顔を振りまきながら歩いていると

目の前を歩いていたおばあさんが、つまずきころんでしまう。


「あっ!おばあさん大丈夫ですか!」

サキは優しく声を掛けおばあさんを抱き起し

近くに有った長椅子に座らせ介抱した。


「ありがとうございます。助けて頂きありがとう。

助かりました。もう大丈夫です」

おばあさんはサキにお礼を言うと嬉しそうだ。


「あ!貴女、急がないと仮装イベントの受付には

間に合わないのではないですか?」

通りすがりの一人の女性が優しく声を掛けてくれるが


「あ!ありがとうございます。もう間に合わないと思います。

ありがとうございました」


サキは仮装イベントに行く気は無いので笑顔で言うと

ゆっくりと人が集まっている場所へと行ってみる。


 サキが人の沢山集まっている所へ来て辺りを見ていると

イベント会場を撮影していたカメラマンがサキを見つけた。


「あ!一平さん!凄くスタイルが良くて可愛い女の子が居ます。

仮装している様なので仮装イベントに来たのではないかと思うのですが、

参加せずに後ろの方で眺めているだけですね」


「えっ!どの子だ!?」

「あの、ウエットスーツの様な物を着ている女の子です!」

カメラマンが指さすと、


「おっ!スタイルはいいし可愛い子だな!

宇宙人の仮装かな?とても良く似合っている!」

すると横に居た中年の男性が


「あ~あれはコブラと言うアニメに出て来る

コブラの相棒のレディの格好のようだね。


レデイは頭も顔も覆っているし服はもっと攻撃的だが、

あの子は顔を出しているし服も攻撃的では無く

髪型はセミショートでボーイッシュな感じもするが

優しい感じのする可愛い目がとても素敵だ!


うん!あの女の子は本当に可愛くて素敵だねぇ~

若い人は知らないだろうけれど、

60歳、いや!50歳以上の男性なら多くの人が知っているよ」

と、笑顔になっている。


「えっ!そうなんですか!」一平は驚くが、

「勿論だよ!その辺の50以上の男性に聞いてみな!

殆どの奴が知っているから」

中年の男性は得意そうに言う。


「あの子を取材に行こう!」一平はカメラマンを誘う。


 一平はサキの傍に行くと

「すみません。このイベントを主催している者ですが

イベントに来ている方を撮影させて頂いています。

インタビューと撮影をさせて頂いても良いでしょうか」


突然目の前に来た一平とカメラマンにサキは驚くが

「え、ええ……いいですけれど……」

サキは此処で逃げて変に思われても困るので

インタビュー受ける事にする。


「レディの仮装をされていらっしゃるようですが、

仮装イベントには参加されないのですか?」


「あ!はい。もう受付時間に間に合わないと聞きましたので……」

サキは何とかごまかそうとするが


「あ!その子は先ほどおばあさんが転んだので

おばあさんを介抱していた子よ。


早く行かないと受付の時間に間に合わないのでは?

と心配していたけれどやっぱり間に合わなかったのね……」

一平たちの近くに居た女性が残念そうに言う。


「あ!そう言う事が有ったのですか!…………


でも、大丈夫です!

今回特別に会場に来られていらっしゃる皆さんの中から

私が選んだ方に特別賞を出すのですが、この子を選びました。

お名前は何とおっしゃいますか?」


イベントを主催している一平は

マンネリ化しているこの仮装イベントで

インパクトが有り優しくスタイルも良くて

可愛いサキがとても気に入る。


何よりもイベントに遅刻した理由が

おばあさんを助けていたからだと言うのが

一平の心に深く刺さった。


「は、はい。サキと言います」

サキは恥ずかしそうに答える。


「あ!サキさんと言われるのですね。

それではあちらのステージに上がってください」

一平はサキを連れステージに向かう。


 サキは一平に誘われ

訳のわからないまま3段ほど階段を上がり

ステージの上に立つと沢山の人たちが

遅れて来たサキを何事かと見ている。


 暫くすると、優勝は11番!

と言う放送があると、大きな歓声が上がり

沢山の人が拍手をしながら優勝した女性を見ているが


「今回はイベントを見に来られていらっしゃる方達の中から

主催者が特別に選んだ素敵な人がいらっしゃいます。

レディの仮装をされていらっしゃるサキさんです!」


と、アナウンスされると

殆どの中高年の男性は大きな歓声を上げサキを見ている。


サキが恥ずかしそうに顔を赤らめていると

直ぐに司会の若い男性がサキの手を取りステージの中央に誘う。


「おめでとうございます!主催者特別賞はサキさんです!」

男性が恥ずかしそうにしているサキの片手を高く持ち上げると、

更に大きな歓声が上り、多くのカメラのシャッター音がする。


「おめでとうございます。

トロフィーは無いのですがこれは特別賞の賞金です」


特別賞などを出す予定はなかったのだが、

一平の一言で急遽特別賞が設けられた為に

トロフィーは無いが、

一平は賞金を急遽用意して司会に渡していた。


司会者の男性から賞金を受け取ったサキは、

(えっ!賞金ですって!!!)

と喜び最高の笑顔になるとその瞬間、

先ほどとは比べ物にならないほどの数のシャッター音が鳴り響いた。


       続く

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