第4話 僕の創作遍歴④~書いて、書いて、書きまくる!~
『とても感動しました』
「一瞬の夏」へのコメント欄に書いてあった言葉を見て、僕は思わず手が震えました。カクヨムで書き始めて一年足らずの僕の作品に「感動」してくれたなんて……果たしてコメント主(この方のペンネームから、以下「Tさん」とします)って、一体どんな人なんだろう?
僕は好奇心から、Tさんのリンクをたどってみました。そこには、当時の僕には想像できない世界がありました。Tさんは僕よりもカクヨム歴が長く、当時すでにたくさんの作品を掲載しておりました。物語はいずれも重厚かつ展開がドラマチックで、読んでいるうちに胸にグイグイと迫ってくるものがありました。フォロワーの数は数百人を抱え、どの作品も星の数が100をオーバーしており、数えきれない位たくさんのコメントが付いていました。
こんなすごい人が僕の作品に目を止め、『感動しました』というコメントを置いていったことに、驚きと震えが止まりませんでした。そしてTさんはコメントに留まらず、連載終了後に素晴らしいレビューまで残してくれたのです。このレビューを見て、たくさんの方が作品を読んでくれました。
Tさんとの出会いがなければ、僕はきっと自分には人に読んでもらうだけの作品を書く力がないと思って、ネット小説から手を引いてしまったかもしれません。
そうそう、年末の風物詩・カクヨムコンに誘ってくれたのもTさんでした。
「コンテストだけど、これは『祭り』だから、楽しんで参加してみては?」と。
カクヨム内にあまた生息する作家の皆さんが入賞めざして腕を競い合うこのイベントに、自分なんかが果たして太刀打ちできるんだろうか? と、応募期間が始まってもずっと二の足を踏んでいましたが、Tさんの一言で僕はだいぶ気が楽になりました。
「カクヨムコン」は十万字以上という応募条件があり、わずか二カ月の募集期間中に書き上げる自信がなかったので、僕は一万字以内で参加できる「カクヨム短編コンテスト」の方に応募することにしました。
この時応募したのは「『風見鶏』で待ってます」と「チャリじいの夢」の二作品です。いずれも自分の過去の体験がベースになっており、幼い時に父親が連れていってくれた近所の喫茶店や、学生の頃に住んでいた東京近郊の町の自転車屋を思い出しながら綴りました。
「チャリじいの夢」は、暴力的で破天荒な「チャリじい」のキャラクターが受け入れられるか心配でしたが、予想以上に反響がありました。そしてこの作品で、僕はカクヨム短編コンテストの中間審査を見事に突破することができました。
Tさんのアドバイス通り、肩の力を抜き、「祭り」だと思って楽しみながら書いた結果なのかな? と思います。その後も毎年カクヨムコンに応募しておりますが、年に一度の「祭り」だと思って楽しみながら書いています。(あ、楽しみつつも、一応中間審査突破は目標にしています(汗))
そして僕はカクヨムコンを通して、自分の作品を「カク」だけでなく、多くの作品を「ヨム」ようにしました。そして、感想を書かずにいられない時には、感じたことを素直にコメントとして残していきました。
この「カク」と「ヨム」を繰り返しているうちに、僕はたくさんの作家さんをフォローし、僕にもたくさんのフォロワーが付いていました。
Tさんとの交流もカクヨムコンを通してさらに深まりましたが、ある時、Tさんは自分の作品の中でカクヨムの在り方に疑問を呈し、「今後はネットではなく公募で自分の力を試していきたい」と言い、退会してしまいました。
Tさんとお別れするのは本当に辛かったですが、作品が評価されず思い悩んでいた僕をここまで導いてくれたことに、今も心から感謝しています。
「カクヨムコン」を通して小説を書くことがますます楽しくなった僕は、以前から挑戦してみたかった長編を書き始めました。
まずは「小さな名探偵」以来となるミステリーに挑戦した「バーテンダーは名探偵?」、タワーマンションに置かれた廃棄寸前のピアノが住民たちの心を結び付けた「紡ぎの調べ」、そして開始から四年経った今も続く「大きなケヤキの樹の下で」です。
長編と並行して、カクヨム内で実施される様々なコンテストにも積極的に応募しました。
「海辺の町、それぞれの夏」は『カクヨム2020年夏物語』、「黄金の水」と「あの夏の蛍」は『角川武蔵野文学賞』、「いつもそばに、赤と緑と君がいる」は『心にしみる(マルちゃん 赤いきつねと緑のたぬき)コンテスト』に応募した作品です。
そして2021年からは、「カクヨムコン」に加えて「KAC」にも参加しております。KACは、矢継ぎ早に繰り出されるお題(これがまた「推し活」だの「住宅の内覧」だの、小説としてまとめにくいものばかりで……)に沿う作品を仕上げるべく毎度必死に頭をひねり、出題後わずか数日後に設定された締め切りまでに投稿するという「千本ノック」のようなイベントです。例年、自分の仕事が忙しい三月に開催されるので、夜遅く帰宅した後に休む間もなく必死にパソコンに向かう日々が続き、完走した後は、頭も心も疲れ果て、いつも抜け殻状態になっております(笑)。でも、この容赦ない千本ノックで鍛えられたおかげで、書き手としての幅が随分広がったような気がします。
ここまで振り返ってみると、僕はこれといったポリシーも持たず、行き当たりばったりでコンテストやイベントに向けて作品を書きあげているかもしれません。でも、アラフィフになってからカクヨムに参加した「出遅れ組」である自分としては、腕を上げるためには「書いて書いて書きまくるしかない」と思っています。
色々難点を指摘されたら素直に直し、つまんないと言われたら「そうですよね」と頷いて、いかに面白くするか考えながら書くしかない。書いては反省し、歓喜し、あまり休まずに次の作品を練り、書き始める……。
そんなことを繰り返しながら、ここまで六年間、カクヨムで多くの作品を掲載してきました。
カクヨムへの投稿は毎回大変ですが、とても楽しく、仕事で疲れていても毎日チェックし、少しずつでも作品を書くことが習慣になっています。作品を通して作家の皆さんとの交流も増え、とても充実した活動ができていると思います。
一方で、カクヨムでの活動だけではだんだん飽き足らなくなってきたのも事実です。カクヨムでは多くの皆さんに自分の作品を読んでいただいておりますが、カクヨム以外の世界、ネット以外の世界で自分の力がどこまで通じるか試してみたい、という思いがありました。
そんな時、僕が目にしたのは、地元で開催される文学賞の広告でした。
公募は本当の意味で自分の実力が試されるので、カクヨムコンでやっと中間審査を通過する位の自分の実力では勝ち目がないと思っていました。しかし僕は、これは自分の今の実力を測るチャンスだと思い、あえて応募することを決意しました。
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