勇者限定 至高の愛の言葉〜予知能力者の女辺境伯さまは婚約者を救いたい!〜

よろず

本編

プロローグ

 女神の託宣で見出され、聖女とともに旅に出た。

 勇者などとおだてられ、悪い気はしなかった。

 人類の滅亡を目論む魔王と呼ばれる存在を倒すためには各地にある女神の神殿を巡り、祈りを捧げ、聖物から力を得る必要があったため、ようやく役目を果たせた時には十年の時が過ぎていた。


 十四で旅に出た当時、家の繋がりで決められた婚約者がいた。

 初恋の人だった。


「五年前、グレンデス侯爵領は、魔族の襲撃で壊滅したわ」


 王都で報奨をもらい、まずは実家へ寄って家族に会おう。互いの無事を喜び合ってから、彼女のもとへ、正式なプロポーズをしに行こう。

 彼女はきっと、待ってくれているから。


 そう、信じていたんだ。


「壊滅って……俺の、家族は……?」


 家同士の利益のための婚約だったが、共に過ごすうち、恋に落ちていた。


「目的を果たすまでイヴァンには言わないほうが良いと、わたくしの判断よ」


 彼女は辺境伯家を継ぐ人だったけど剣の才能には恵まれなかったから、彼女に足りない部分を補うための婚姻。


「それならリリィ――リリアーデがいた、バルリオスは? 辺境伯領は……」


 バルリオス辺境伯家とグレンデス侯爵家は領地が隣接していて、頻繁に交流があった。


「グレンデスまで攻め込まれたのだから……わかるでしょう?」

「バルリオスは、防げなかったんだよ」


 彼女が領地を治め、騎士団を率いる役目は配偶者が担う。十四で、経験が浅いことに自信が持てなくて、与えられた勇者の役目に飛びついたのは自分だ。


 その結果、守りたかったものを全て、失った。

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