スライムスレイヤー ~イシノチカラ~
亜形
プロローグ
この世界のモンスター
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かつてこの世界は天変地異と呼ばれるほどの大災害に見舞われた。地形を変えるほどの大地の揺れから始まり、建物を吹き飛ばすほどの暴風、異常気象が続いたのだ。
残ったのは荒れ果てた大地、崩壊した建造物。
才ある王でさえ自然災害の前では何もできなかった。自分に都合の良い理想論を掲げたところで民は守れない。力を示せない権力は意味をなさない。
当時の王たちはその後、一人の人間として生きることを優先した。
やがて世界の領地を区切る国は無くなり人類が統治する以前の無法地帯へと戻った。
大災害で生き残った人類にまず立ちはだかったものは食料難であった。食料をめぐる人類同士の争いが始まるが人類が野人に戻った訳ではない。
数年後、食料難は解消。有力者も現れ出し、互いに協力して世界は復興を試みるようになった。
後年、世界の人類は大災害を決して忘れぬよう暦を『新興暦』、大災害のあった年を『新興暦元年』と定めた。
だが、世界が復興を順調に進め初めていたその矢先に人類の敵とも言える生物が出現した。この世界で『モンスター』と総称されている生物だ。
当初は新たな変異種と思われていた生物たちだが実はスライムが擬態した姿だということが分かり、現在でも研究され続けている。
スライムとは泥水のような色をしており、透明状の粘性のある生物である。スライムは他の生物を襲い、取り込んだ生物に擬態するので発見され次第討伐されている。何より問題なのは好戦的で擬態する前のスライムの質量に応じた大きさで擬態する上に擬態対象の爪や牙など攻撃性の高い部位を強化している点だ。スライムが擬態した生物はその狂暴さゆえにモンスターと呼ばれるようになったのだ。
始まりは中央大陸の中心にある火山が噴火した事だった。その後、世界中にスライムが出現するようになったようだ。スライムは各地で雨と共に降る『スライムの素』が引かれ合い、一定量集まると一個体の生命として誕生する。
スライムの素は火山の黒煙に含まれ雲に混ざった『魔粒子』が集まってできる小さな粘性のある滴のことだ。
スライムは取り込んだ生物にすぐさま擬態するという訳ではない。擬態する対象はそのスライムの嗜好によって違うようだ。スライムがいつ、何に擬態するのかは不明。この事からスライムには意思があると考えられている。
スライムは自身の質量より大きい生物を擬態対象としては取り込めないようだ。丸のみにすることでその生物の情報を読み取るのだろう。丸のみにできない生物に対しては溶かして自身の質量を増やす養分にする。
モンスターが元のスライムに戻ることは確認されていないようだ。
擬態には巨大化、部位の強化に加えると毛の類は精密に再現しない傾向がある。外見を造形のように雑に真似ているだけと言っていいだろう。
スライムが取り込んだ兎に擬態した場合で例えると髭やまつ毛もないハゲている兎の姿になる。勿論それは兎ではない。外見がゴムのような質感の兎の形体になるという事だ。毛の無いやせ細った兎というわけではなく、姿を似せているだけと言っていいだろう。人が見た目を似せて作った造形物に近いかもしれない。
兎に擬態したスライムのモンスター名は、『ゴム兎』と名付けられている。兎が生息する所には大抵生息しているだろう。
もう一つ、モンスターと識別できるのは眼の色である。平常時は緑、警戒時は黄、怒り時は赤に変化するようだ。
モンスターには動物のような血は流れていない。血の代わりに魔粒子が流れているようだ。魔粒子の存在は測れるが人の目には見えないので実際モンスターの内部で流れていることを確認するのは難しいだろう。
モンスターは絶命させると霧散し、『魔石』と呼ばれる物を落とす。
最初はモンスターの核と思われていたが魔石に魔粒子は含まれていないようだ。魔石はモンスターが絶命して霧散する際に初めて生成される物質なのだ。生きているモンスターの体内に魔石は存在しないということだろう。
現在、魔石は主に燃料資源として活用されており、珍しい魔石は観賞用としても売買されているようだ。魔石にはまだ判明していない活用方法があるのではないかと日々研究されている。
モンスターの特筆すべき点は異常に再生能力が高いことだ。時間経過で元の姿に再生する。切り離された部位は時間経過で霧散して新たに生えるが、霧散した部位に存在した魔粒子が本体に再吸収されているかどうかは不明だ。
例外として切り離された部位が残る場合がある。モンスター素材と言われている物だ。残った素材に魔粒子は流れていないのでそれは純粋な物質と言えるだろう。
素材はモンスターの抜け殻のようなものと考えられているが軽くて丈夫な為、今では武器や防具、道具等様々な素材に活用されている。
現状、人類がモンスターを倒す方法が3つある。
・モンスターの小さな核を見つけ出して壊す。
・現実的ではないが、隔離して絶命するまで待つ。
・魔粒子を浄化させる石の力を伝達させた武器で倒す。
魔粒子を浄化させる力をもつ石は、『
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白髪混じりの波打つ髪の白衣を着た中年の男は、書斎で読んでいた書物を書棚に戻すと鼻で笑った。
しかし、抗魔玉の力の研究は面白い。よくぞ見つけてくれた。
皮肉なものだが、モンスターが出現しなければ抗魔玉の力は発見されていなかっただろう。
男は書斎の窓から晴天の空を見上げた。
さて、今回は彼女たちに任せてみたがここにはいるだろうか?
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