第2話 ガン細胞を攻撃

 オーラを見ることが出来るようになってから、他人のオーラに意識を向けると、その人が何を考えているのか、感情、生きてきた軌跡を、言葉で表現しにくいが、立体的に把握出来る様になってきた。即ち、誰も俺に嘘つく事が出来ないのだ。

 

 一日中何もする事がないので、空気中に漂っている光の粒子を動かし続けていた。意識その物にもエネルギーがあり、意識で光の粒子を動かす事が出来た。

 面白くなってきたので、意思の力で物を動かしたいと思った。しかし、“意思”をオーラの延長線上にあると意識して動かそうとしてみたが、透り抜けてしまった。一日中頑張ったが、全く動かすことが出来なかった。


 数日後、ベッドに備え付けてあるテーブルの上に置いてあるプラスチック製のコップの表面にそっと意識を近づけると、表面のほんの僅かな感触を感じられる様になってきた。気を抜くとコップをすり抜けるしまいそうで、表面に触れている状態をキープしながら、表面の内と外に意識をほんの僅かに動かして、物質の中と外との違いを感じとれるようになるまで、何度も試行錯誤しながら行った。

(あっ感じるぞ)

 分子とかそういう物質ではない“何か”を感じとれた。

「やっと出来たぞ!」

 物質の中にある”何か“を、オーラの中にも存在する同質な“何か”を使って動かしてみた。 少しだが、動いた。

「やったぞ!」

 織田は小さな掠れた声で叫んだ。練習を何度も何度も繰り返した。数日後、コップを自由に動かせる様にになった。


 超能力者によるスプーン曲げがテレビで放映された。自分でもスプーン曲げに挑戦してみた。出来たのである。念動力で硬いステンレスを力で強引に曲げたのではない。スプーンの首の部分を親指と人差し指で摘んで、曲がれと念じてこすっていると曲がった。曲がった部分が軟らかいステンレスになっていた。曲がれと念じたことで、物質の中にある“何か”に作用して、硬く結びついた物質の分子の結合が壊されて、軟らかいステンレスになったのではないかと思った。

 試したい事があった。自分の身体に巣食うガン細胞への攻撃である。ガン細胞はもの凄いスピードで増殖するので、それ以上のスピードで壊す必要かある。ガン細胞を壊すことができれば、これ以上の病気の進行を止めることができる。

「織田さん、奇跡ですよ。ガンの進行が止まって、小さくなっていますよ!」

 担当の若い医師が笑顔をいっぱいにして、朝から診察にやってきた。

「私が織田さん個人用に調合した抗がん剤が効いて、免疫力が高まったんです。いやー、本当に良かったです」

「今後の医学の発展のためにしっかり記録しましょう」

 担当医が自慢げに心なしか胸をはっていた。

「良かったですね、本当に」

 いつも世話をしてくれる若い看護婦が、涙ぐんで励ましてくれた。

(ちょっと違うんだけどなー、喜んでいるから、まあいいか。本当の事を話しても、どうせ信用されないしな)と俺は思った。


 

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