第174話1年ぶりの再会
そのコンクールが終わって、しばらくして星田と柳井が家に到着した。二人とも、去年にもまして筋肉量がアップして、逞しい体つきになっていた。山陰をまわってくるルートは、山陽側よりも起伏が激しくてかなり大変だったようである。旅の様子も話してくれたが、夕日の沈む宍道湖や日本海の風景は格別だったようである。特に益田を過ぎて、萩にかけての海岸線はきれいだったと話していた。着いたその日は疲れているだろうということで、どこかに出かけるということはしなかったが、翌日は電車に乗ってどこかに行こうかということになって、私も地元民でありながら、まだ乗ったことのない宇部線に乗ってみようということで、自宅最寄り駅から電車に乗って小郡駅で下車。小郡駅ら宇部線に乗って宇部駅を通り過ぎて小野田駅まで行ってみることにした。宇部線を走る電車は105系で、国鉄が地方の短い駅間距離の短い路線向けに主に改造された車両で、元は103系などが種車となっている。加速性能は山陽本線を走る113系は115系に比べて素早いけど、高速運転には不向きな車両で、100キロ近いスピードでかっ飛ばす山陽本線の電車に比べると、最高スピードが85キロに抑えられていて、山陽本線を走る区間では後続の列車に差を詰められる現象もみられていた。その宇部線の105系に乗って、小一時間ほどのショートトリップが始まった。小郡駅を出てしばらくは田園風景の中を走っていくが、草江駅付近まで来ると周防灘がちらほら見え隠れする。そして時折轟音を響かせながら航空機が離陸していく。そう、ここは山口の空の玄関口である、山口宇部空港への最寄り駅で、空港もそばに見えるのであるが、空港連絡の役目は果たしておらず、もっぱら地元の人が乗り降りする程度である。ただ草江駅を過ぎると宇部市の市街地に入っていき、住宅密集地を、急カーブを繰り返しながら走っていくそして、かつては貨物発着トン数で日本一になったこともある宇部岬駅に到着。かつての貨物用に側線が放置されており、広大な敷地にかつての繁栄を垣間見ることが出来る。宇部岬駅を出てしばらく行くと、宇部市の中心市街地に位置する宇部新川駅に到着。ここからは小野田線も発着していて、私が初めて訪れた時は今よりも運転本数も多くて、利便性も高かった小野田線であるが、今では運転本数も削減されて、すっかりローカル線と化してしまっている路線である。小野田線は居能駅から左方向に分岐していき、宇部線はかつて貨物列車の行き違いのために設けられていた際波信号場を過ぎて左に急カーブして山陽本線との接続駅である宇部駅に到着。小郡駅から宇部までは山陽本線では23~24分ほどで着くが、宇部線回りだと1時間以上かかるため、通しで乗車する乗客はほとんどいないと思われる。その宇部線のショートトリップを終えて帰宅し、夕方からはBBQ 。1年ぶりの再会を祝ってのBBQは楽しかった。そして1989年の夏は受験に向けてみんな忙しくなるため、来ることはできないだろうなということもわかっていたので、心行くまで再会の一時を楽しもうと思っていた私である。そして、3日ほど滞在して、彼らは九州目指して出発していった。国道2号線を走り、関門トンネルを潜り抜けて門司に入った後は国道3号線をしばらく走ることになるそうで、唐津や松浦から平戸を経由して南北に細長い長崎県を南下して、野母崎を目指す旅になる。私は事故やケガには十分注意してほしいと願いながら見送った。
星田と柳井を見送った後は家でおとなしくしていたのではないかと思う。お盆休みが近いということで、部活も休みであったし、清田は帰省していないし、とりあえず勉強だけでもしておくイカと思って、机に向かって期末試験で見つかった課題などに取り組んでいたように思う。
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