第129話講師役・そして3学期
終業式の後は冬休み。冬休みになったからと言って我が家はどこかに出かけられる状態ではなかった。というのも姉の受験が迫ってきていて、私立高校の入試まで2か月もない状態だったのであるため、当然と言えば当然である。姉の進路は、当時は公立高校の女子高で、陸上部への入部も希望していた。受験生が家族の中にいると自然と気をつかうもので、私はなるべく姉の勉強の邪魔にならないようにしていた。勉強でわからないことがあれば、以前は姉に聞いていたのであるが、自分で調べるようにしたり、学校で友達に聞いたりしていた。今ならインターネットでチャチャっと調べられるであろうが、1985年当時の世界にそのような便利なものなどなく、調べごとをするときは百科事典や広辞苑を持ち出して調べることが多かった。
迎えた1986年、いよいよ姉は受験に向けてラストスパートに入っていた。解いている問題を見てみると、3年生で習う問題もあったが、中学2年生までに習う問題も含まれていて、いくらか私にも解ける問題があった。私が天文学大好きということで、理科の天体観察に関する問題では私が講師役を務めて姉に教えていた。その他、科学や自然観察に関する問題や、地質学に関する知識は、姉より私の方がたくさん知っていたので、2年生である私でも教えてあげることが出来た。その他、地理歴史なども私の得意分野だったため、姉に教えることが出来たが、やはり数学や英語は姉の方が私よりはるかに知識が上であった。姉が使っている受験用の参考書を見てみると
「俺も来年の今頃はこんな問題を解いているんだ…」
そう感じた。そして3学期が始まった。
3学期になると無理やり押し付けられた総務委員をやらなければならないため、実に気が重たい。やりたくない…。そういう思いが支配的であった。ただ救いだったのが1学期や2学期に比べると期間が短いということであった。実質的には3月20日過ぎまでの2か月ほど担当すればいいので、その点は助かった。でも、私が総務委員になったからと言って、糸田や末山・市山たちが言うことを聞くはずなどなかった。何か決めなければならないことがあると、糸田や末山たちが議事の信仰を妨害するのである。だから、なかなか物事が決まらず、議事の進行が遅れに遅れることが多かった。そしてしびれを切らした女子たちが糸田や末山たちに対して非難が集中するのであるが、それでも糸田たちは議事の進行の妨害をやめることはなかった。そんなある日、各クラスに2時間ほど自由時間が与えられた。何をするかは各クラスで話したって決めていいということで、この自由時間は男女に別れて話し合いをするという形がとられ、女子は皆で話し合った結果、近くの公園に行くということに決まった。一方で男子であるが、糸田と末山が議事の進行を妨害して、何をするのか決まらないまま時間が過ぎていった。女子と同様に近くの公園に行きたいという意見が出たのであるが、糸田と末山の議事進行妨害により、なかなかクラスの意見がまとまらず、先生の独断で教室内で自習ということになったのであるが、これに男子の大多数は賛成せず、先生がいない間にもう一回話し合いをして、近くの公園に遊びに行くということに決まったのであるが、これには先生が勝手に決めたということで納得せず、先生も交えた中でもう一回話し合うことになった。先生が
「あんたらは今度の自由時間で何がしたいんかね?議事の進行の邪魔ばっかりして、何も決められんで、私がいない間に勝手に決めてから」
そう言って、話し合いが始まった。クラスの中ではちょっとつっぱっているが、私とも不思議と意気投合することも多かった男子が
「お前らさ、リンダをこれだけ困らせて何がしたいんじゃ。俺は悪いけど公園に行って遊ぶぜ」
そう言いだした。その意見にほかの男子も賛成し、これでようやく女子と同様に学校近くの公園に遊びに行ってもいいということになった。
そして自由時間がやってきた。私も学校の外に出て、公園で柳本や途中で他のクラスの三田とも一緒になって、公園の中を歩いたり、この日に限って少額のお金を持ってきてもいいということになっていたので、公園内の店でちょっとした買い物をしたり、公園内をいろいろと話をしながら歩いたりして過ごした。この自由時間のさなかに、糸田が公園内に遊びに来ていた小さな子供がぶつかってきたことに腹を立てて、その子の母親を呼び出して、
「テメェーのクソガキがぶつかってきたんじゃ。謝れや」
などと凄んで、そのぶつかってしまった子を泣かしてしまったという事案が発生した。その子の親が後日学校にやってきて猛烈に抗議して、糸田がおこなったことが発覚したのであるが、糸田は
「ぶつかってきた方が悪い」
の一点張りで、反省や謝罪の言葉はなかったということで、この事態を受けて、この後は自由時間であっても学校の外に出ることは禁止された。
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