第46話子供会の遠足

 そんな中、学校では文化祭の練習が始まっていた。いつものようにどんな内容のストーリーで劇をするのか、ストーリーが決まったらだれがどの役を担当するのか、役が決まるとセリフを覚えるところまで進んで、皆で役になり切って、衣装もなるべく役に似合うような色の服を着て本番に臨むことになる。私はわき役であったが、自分のセリフはきちんと覚えて、かむことなく全部言えた。自分の役を演じ切ることが出来てほっとして、4組の演劇は終わった。文化祭は11月の文化の日の前後に行われており、文化祭が終わるといよいよ晩秋を迎える。

 そして、子供会の遠足で、和歌山県の紀見峠に遠足に行くという催しがあった。実は以前も紀見峠に遠足に行くというのがあったのであるが、この時私は高熱を出していて、とてもじゃないけどいける状態ではなかったので、姉だけが行ったのであるが、最後まで

「俺も行くねん」

と、泣きながら言い張っていたようである。今考えれば、高熱を出していていけるわけがないのはわかり切ったことであるが、どうしても行きたかったのであろう。

 この日は小雨模様であったが、私自身は健康そのもので、T駅から南海電車の難波駅に出て、ここから高野線に乗り換えて紀見峠へ向かった。

 夏に乗ったばかりの高野線。夏は深い緑に覆われた中を進んでいったが、11月も半ばになると紅葉が進んでいて、夏の深緑とは違った風景を楽しむことが出来た。紀見峠付近は自然が多く残っており、手軽なハイキングコースとしても親しまれているところで、周辺は国定公園にも指定されている。

 駅に着いたころには雨もやんで、盛りを迎えた紅葉の中を歩いて行った。山の中ということもあって、私たちが住んでいるところよりも寒くて、冷たい空気に包まれていた。そんな中、電車を降りてトレッキング開始。川のせせらぎや小鳥のさえずりをBGMに進むトレッキングは最高に気持ちよかった。前回は体調不良で参加できなかった紀見峠へのトレッキング。2年越しのリベンジが果たせてよかったと思った私である。

 途中で昼食も食べたが、自然に囲まれながら食べる昼食と言うものは、同じ食べ物であっても、なんだかおいしく感じられる。

 やがて太陽が西の空に傾きだしたころ、駅に戻って、難波行の電車に乗車。2年生だった男の子が私に

「なんでこの駅は小さい電車しかけえへんの?」

と言っていた。私は

「この辺りは急カーブが続くから、大きい電車は入ってこられへんのや」

と教えてあげたら

「そうなんやぁ」

と納得したようであった。やがてだんだんと冷え込みが強くなる中、難波行きの急行電車が到着。皆で乗り込んで難波駅へ。暖房のきいた車内は心地よい眠りに誘う。トレッキングに参加したほとんどの子供たちが寝ていたようで、私も車内で爆睡していた。 

 やがて電車は難波駅に到着し、乗り換えてT駅に到着したのは日が暮れたころだったと思う。家に帰ったら急におなかが空いたような気がしていたが、ゴンの散歩に行かなくてはいけないので、帰ったら息つく暇もなくリードをもって散歩へ。日が暮れて暗くなっているので、いつものように1時間かけての散歩ができなかったのが、ちょっとかわいそうであった。 

 散歩を終えて帰ったら夕食ができていたので、熱々のご飯をおいしく食べた私である。

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