第4話二人での帰省
そして迎えた夏休み。私が1年生になった夏休みは、姉と二人で山口の祖父母の家に遊びに行くことになった。T駅から電車と地下鉄に乗って新大阪へ。父と母は入場券を買って新幹線乗り場までついてきて、姉に切符を手渡して、指定された席に座って、両親は車掌さんに私たちが山口まで行くから、下車駅で卸してほしいと告げて、新幹線から降りていった。やがて新幹線の博多行きひかり号は静かに新大阪を離れて、出発していった。初めての姉との二人での列車の旅。ちょっとだけ成長した自分が誇らしかった。
姉と二人で新幹線の車内でおしゃべりしたり、両親に買ってもらったお弁当を食べたり、おなかが満腹になって眠り込んだり。気がついたら私たちの乗ったひかり号は、長いトンネルを抜けて広島に到着するところであった。広島を出てしばらくすると車掌さんがやってきて
「もうすぐ降りる駅だよ。忘れ物がないように気を付けてね」
と、そういって私たちに降りる準備をするように促してくれた。
「お姉ちゃん宿題持った?」
「持ったで~。あんたも忘れ物ない?」
「うん、俺は忘れものないで~」
「ほんじゃあ、ドアのとこに行こうか」
そして駅について新幹線を降りて叔父のところへ。
「おっちゃ~ん。来たで~」
と駆け寄ると
「また大きくなったなぁ。元気にしちょったか~?」
「うん。元気にしちょったよ~」
などと話しながらおよそ30分ほどで祖父母の家へ。家に着くと大阪から持ってきた荷物を家の中へ入れて、祖父母に挨拶をしていると、。叔母が畑から帰ってきて
「1年見ん間にこがいに大きくなってぇ。背が伸びたねぇ」
と言ってくれた。
夏休み初日に山口に行って、8月末までの1か月半を山口に滞在することになった。
去年の夏休みと大きく変わったことといえば、二人共学校の宿題をしなければいけなくなったことである。中でも日記は毎日書かなくてはならず、1日でも抜けると2日分書かなければならないのでなかなか大変である。それともう一つ変ったことといえば、私もラジオ体操に参加しなければならなくなったことであろうか。毎朝天気のいい日は、朝6時に起きて、祖父母の家から子供の足で15分くらいのところにある小学校まで行ってラジオ体操をして、カードにハンコを押してもらって家に帰ったら朝食を食べて、涼しいうちに宿題を済ませると、昼からは小学校のプールに行ったり、家のすぐ近くを流れる小川に沢蟹を捕まえに行ったり、近所の子供と遊んだり、何かと忙しく過ごしていた。時には叔父が運転する車に乗って母の姉の家に遊びに行って海で泳いだりもした。そのおかげもあってか、7月が終わるころには、ずいぶんと日焼けをしていた。
そしてお盆休みに両親がやってきた。山口で毎日外に出て遊んで、すっかり日焼けした私たちを見て驚いていた。
そんなある日、激しい雷雨が降った。私は雷が大の苦手で、雷が鳴っている間中泣きべそ書いて母にしがみついていた。今でも雷は嫌いであるが、このころの私は雷が嫌いというレベルではなくて、恐怖を感じていた。その激しい雷雨がやんで、天気が回復したころには、私は泣き疲れて眠ったようで、起きたら暗くなっていた。夕方から寝てしまったので、夜遅くになっても眠れずに、天井を見ていると、天井の模様が人の顔のように見えてきて、何か怖いお化けでも出るんじゃないかと思えて、布団の中に潜り込んで眠くなるのをじっと待っていた。
翌朝、なかなか寝付けずに朝を迎えたので、目の下にクマができていて、姉が
「あんたその顔どうしたん?」
と聞くので
「あんなぁ、ゆうべ全然寝られへんかったんや」
というと
「ものすごい顔になってるで」
と言われて、鏡を見てみると、確かに物凄い顔になっていた。
その日はゆうべ眠れなかったということもあって、調子がよくなくて、ラジオ体操と宿題を終わらせると家でおとなしく過ごしていたように思う。
両親は父の仕事があるうえに、足が転倒事故以来良くない祖父も預けているため、お盆休みが終わると帰っていった。
再び姉と私の二人での山口での生活が始まって、8月もお盆休みが終わると夏休みの宿題の追い込みの時期に入る。私も姉も宿題はほぼ片付けていて、残るのは植物の観察日記など、毎日記録を取らなければいけないものだけになっていた。
そして夏休み最後の日、私と姉は祖父母や叔母に別れの挨拶をして、叔父の車に乗り、駅まで送ってもらって新幹線に乗った。叔父は
「また来年来いよ」
と言って私たちを新幹線に乗せてくれた。新大阪につくと両親のほかに従姉妹の弘姉ちゃんややよ姉ちゃんが迎えに来てくれていた。
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