七百年の眠りR4

仲仁へび(旧:離久)

七百年の眠りR4



 人間がいくら滅びたってかまわない。


 けれど愛しいあの人の生活は守りたい。


 そう思った私は、世界を守るために眠りについた。


 聖女として、魔物から人を守る結界を作り出すために。






 私は聖女。


 とても強い力を秘めている。


 ほかの聖女よりも、何倍も強い力を。


 だから、私がその役目になったのだろう。


 七百年、眠り続けて、人間の世界を守るという役目を。


 正直、ほかの人間なんてどうでもよかった。


 いくら死んだところで心が痛くなることはない。


 親に捨てられ、孤児として貧しい中生きて、奴隷のように働いてきた。


 出会った人間たちはみな、クズだった。


 しかし、愛した人だけは私にやさしくしてくれた。


 だから、彼の生活は守りたかった。


 私は、彼のために眠りについた。







 そうして七百年眠りについた私だが、そんな私を見つめる存在がいた。



「今回の聖女はとてもよく頑張ってくれました。孤児で悲惨な境遇だったのが幸いだったのでしょうね」


 完全に眠りにつく前に、まだ感覚が働いていたのだろうか。


 私の耳が人の声を拾う。


「なに、簡単なことさ。恋人役として甘い言葉をささやくのは慣れているものだからね」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

七百年の眠りR4 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ