第13話:スタンピード

 またもやイレギュラーの起きたダンジョンを攻略し、Twixや各種SNSで大バズりしたオレとアルマ。

 ピロピロと通知が鳴りやまない――ことはなく、この前のアルマによる天才的なひらめきによって安らかな安眠を手にすることができていた。


 通知の原因であるチャンネル登録者も一週間の間に50万人増加するなど、とんでもない速度で数字と知名度を伸ばし続けている。前回で驚き疲れたと思っていたのに、想定を超えてしまってはもう腰を抜かすことで精一杯だった。

 だがケーナにその光景を見られて散々笑われたのは許せない。いつか復讐してやるつもりで虎視眈々とチャンスを狙っている。ぐへへ。


 と、そんな中。

 アルマとケーナと三人で、ギルド内で訓練をしたりもして充実した日々を過ごしていると、そこに緊急の知らせが――通知を唯一切っていない手段での連絡だ――オレとアルマのスマホから鳴った。


「メッセージってことは……何かまずいことでも起きたのかしら?」

「どれどれ――」


 メッセージアプリを開き、そこに書かれた文章を二人でのぞき込む。

 

〔現在、ギルドマスター及びほか数名が探索中のA級ダンジョン、「憤怒」にてスタンピード発生。ヴェインとアルマは至急救援に急行されたし。なお、非常時のためA級相当の権限をマスター名義で付与済みである〕


 同時に読み終わったのか、同じタイミングで顔を見合わせる。

 そして数瞬の沈黙の後、意を決した様子で呟く。


「「――行こう」」


 ◇


 ここは真紅の洞窟。またの名をA級ダンジョン「憤怒」と言う。

「ブモオオオ!」

「オラァッ!」


 眼前の赤黒い肌の牛人ミノタウロスが、その手に握る巨大な戦斧を振り下ろす。

 それを思い切り蹴飛ばすと、その勢いのまま距離を詰めて氷の剣で首元を掻っ切った。


 さすがというべきか、オレの剣では禄にダメージが入らなかったのにアルマの氷剣は面白いほどよく切れる。もうアルマなしじゃ戦えないね。


「〈ソードヘイル〉!」


 吹き出した血の雨が降る中、次は氷剣の雨が降り注ぐ。

 

 全身に炎をまとう牛人ミノタウロスが、それに対抗するように炎をぶつけていく。一つの剣に一塊の炎。それに飲み込まれた剣は蒸発していくが、残念なことに炎より剣のほうが数が多い。

 十秒もしないうちに押し止めることができなくなり、次々と氷剣が肌へ突き刺さる。


「モオオオ!」

「はあああ!」


 その名の如く白熱した戦い。しかし……


「オレはもう飽きたぞ」


 手に持っている剣をひょいと牛人ミノタウロスの首元に投げつけると、戦いの最中だと言うのにこちらに意識が向いた――人はそれを油断と言う――。

 そしてその隙に生み出された無数の氷剣が牛人ミノタウロスの全身を貫く。


「ナイスよヴェイン!」

「先を急ぐぞ!」

「えぇ!」


 ◇


 そもそもスタンピードとはなにか。

 一言で言い表すならば、「ダンジョンの暴走」といったところだろう。


 普段、魔物が出てくる量はそこまで多くはない。もちろんダンジョンによって違うものの、大抵は数と強さでバランスが取れていたりするものだ。


 しかしスタンピードはそのバランスが大きく変動する。


 このダンジョンは強くて数が少ないタイプだ。特に強さに偏っていて、階層ごとに数体が限界というレベルなはず。だが、なんとこの第二階層で既に8体ほど遭遇している。スタンピードの恐ろしさを感じざるを得ない。


「ちっ、また魔物か!」


 さすがに多すぎるだろ……と内心で毒づきながらも、行く手を塞ぐ魔物を見上げる。


 それは、少し前にダンジョンで出会った氷の巨人形、アイスゴーレムであった。


「ケーナさん、やっておしまい!」

「合点承知!」


 ケーナがオレとアルマの前に躍り出ると、アイスゴーレムの目の前でパンッという小気味よい音を響かせ両手を合わせた。それを仰々しく離していくと、中空に紅く燃え上がる炎が出現した。


「劫火の中で滅ぶが良い!」


 ボールを投げるかのように炎を投げたケーナ。

 しかしその速さは尋常ではなかった。なんと、瞬き一つの間に斜め上方に3メートルほど離れたアイスゴーレムのコアを綺麗に打ち抜いていたのだ。


「おぉ! 前回よりも狙いが正確になったな!」

「はっはっは! 妾の力を思い知ったか!」

「ケーナちゃん、さすがね!」


 そのとき、何かが動く音が――あるいは鳴き声のような――聞こえた。


「――!」

「嘘、コアを壊したはず!?」

「下がれ!」


 胸元に穴が空きながらも、思い切り振り上げられた氷の重い拳をなんとか受け止める。


「ぐっ……!」


 痛みはない。が、重さを感じないわけではない。

 いくら反作用とはいえ精神的な疲労まではさすがに消えないので、できれば早く倒してほしいものだ。本当に。


「主に――触れるなッ!」


 その思いが通じたのか、ケーナの手の中には白く輝く光があった。

 肌がその光から熱さを感じていることから、それが限界まで熱された炎なのだと分かる。


 そして――放たれる。


 またもや目で追えないほどの剛速球で飛んでいった炎はゴーレムに触れた部分全てを消滅させていき、上半身と下半身が分離したことでついに勝敗が決した。


「よくやったケーナ!」

「あ、危なかったぁ……ヴェインが死んじゃうんじゃないかってひやひやしたわよぉ……!」

「妾はそんな失敗せぬぞ!?」


 ……さすがは「憤怒」といったところか。

 死してなお、敵を殺すという怒りに似た執念で動き続ける。

 恐ろしく厄介だ。


『おっと、黒幕のお出ましだ。注意してね』


 頭の中に響いた聞き覚えのある声。どこからだと周囲を見回すが、それは「左手」にあったことを思い出す。


「ちょっ、なにこれ!?」

「妾の妨害術式も効果なしじゃと!?」


 足元から黒い霧が吹き出し、オレたち三人を覆うようにして広がる。

 光は一切通さないようで、ケーナが使っている魔法の光だけが唯一の光源となっている。

 まぁ、別に空気を遮断しているわけではなさそうなのでどうでもいいけど。


「この感じ、ギルマスとかに合流できそうだな」

「なんでヴェインはそんなに落ち着いてるのよ……」


 こっちには神がいますから。それもスキルを与えてくれた、ね。


 というか。このスキルがあれば大抵のことでは――というか寿命くらいでしか死なない気がする。攻撃はオレが壁になればほぼ確実に防げるし、呪いの類はケーナの得意とするところだ。

 これから何が起こるかまでは分からないが、アルマを守ることくらいはできるはずだ。ケーナは勝手に自己防衛するだろ。龍だし。

 ともかく、せめて油断はしないようにしよう。


『そろそろ到着だ。足元に気をつけてね~』


 =====

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 一つ言い訳といたしましては、7月の始めに期末テストがあるので更新が出来なかったというところでございます。課題がとにかく多く、こちらに手が回らなかった次第です。すいませんでした!!!

 更新は未定です。これを書いてるのも6月30日ですし。

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