不安だらけの鬱蒼と茂った森の中で

みっちゃん87

第1話 迷い込んだ森

深く、暗い森の中、風が木々を通り抜ける音だけが、不安に震える心に響き渡る。ここは、誰もが避けて通る場所。だが、少年・ハルは、その中心に立っていた。


「どうしてここにいるんだろう…」


ハルの心は、不安でいっぱいだ。父の退職、母の入院、そして最も恐れていた父の透析開始。これら全てが、ハルの心に重くのしかかる。さらに、彼自身の発達障害、昔受けたいじめの傷…。これらは彼を日々、深い不安の森へと引きずり込んでいた。


森はハルの心を映す鏡のよう。彼の一歩一歩は、自分の不安との格闘を意味している。進めば進むほど、森はより暗く、鬱蒼としてきた。そして、ハルは気づく。自分の足が、自分の意志とは無関係に動いていることに。


「逃げ出したい…でも、逃げ場はないんだ」


少年の心は、戦いと逃避の間で揺れ動く。その時、ふと、遠くから声が聞こえた。人の声?いや、違う。これは彼の心の声だ。過去の自分からの、そして未来の自分への叫び。


「強くなれ、ハル。君は一人じゃない」


不意に、ハルの足が止まる。深呼吸を一つ。彼は、周りの暗闇を見渡し、自分の内なる声に耳を傾け始めた。恐怖はまだ彼の心を離れてはいない。だが、その声はハルに小さな勇気を与えていた。


この物語は、不安だらけの森を抜け出す少年の旅の始まりだ。彼はまだ知らない。この旅が、彼に何を教え、彼をどこへ導くのかを。だが、一つ確かなことは、この第一歩が、彼の変化の始まりであるということだ。


ハルは深く息を吸い込み、もう一度、未知の森の奥へと足を踏み出した。

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