時計の針と羅針盤

永寝 風川

1針目 「私はあいつが気に入らない」

公立砂鳥高等学校こうりついさごどりこうとうがっこう、そこはとても自由な校風の代わりに、とても偏差値が高く。ギリギリ受かっとしても、授業について行くのがやっとな人続出するような高校です。

そして私は、今年そんな砂鳥高校に推薦で入学した、1年生の針風 時はりかぜ ときと言います。名前だけでは男と思われるのですが、女性です。

そして皆さん....といっても私に友達はいませんので、クラスの人達が言ってる風の噂程度の話ですけど。

どうやら私はこの高校では少々有名なようで、時計の針のようにチャイムがなると同時に移動したり、次の授業に使う教科書をいつの間にか出している様子が、どうやら周りに人は変な人と思われているそうで、そのまま安直な時間じかんさんというあだ名と呼ばれているそうです。


(次の時間が移動教室の時、私が移動し出すと、クラスのみんなが準備し始めるのは、このあだ名のせいですかね?)


まぁそれは放っておいていいんですよ、気にしていないので....

さて本題ですけど、私の所属しているクラス...つまり1年B組に嫌いな女性がいるんですよ、その人の名前は旅針 風たびはり ふうさん。どうやら周りからはたびちゃんという相性で呼ばれているそうですが....

うるさいんですよ!休み時間勉強してる近くで話されるの...!集中出来なくてありゃしません。

そしてパッと見、勉強が得意という感じではなく。ポニーテールで金髪...そして服装は学校指定のものですが、ブレザーを腰に結んでるのが、いかにもギャル...?みたいな見た目のなのが気に入りません。そのくせ私よりは低いですけどテストの点数が高いところとか、そこがさらに気に入りません。

....なぜわざわざ嫌いな人の説明をする理由ですけど、それは今話しかけられたからですね。


「時ちゃん!一緒に放課後遊ばない?」


私はその質問にお答えせず無視を貫きます。わざわざ昼休みという、勉強が出来る時間に話しかけないでください。放課後でしたら笑顔で断るんですけどね。


「無視しないでよ〜、友達全員急な用事があって、今日ひーまーなーのー!」


(うるさいですね、暇でしたら本を読む、勉強する。色々あるじゃないですか、あと一人で遊ぶという手もありますよ?なんでそんな事が考えつかないんでしょうか、この人は)


彼女は手をブラブラさせて私の注意を引こうとしてますけど、正直いって少し邪魔なだけで、無駄です。


「お願い!パフェ奢るから!」


「....」


(甘い言葉には裏があるです、惑わされないでください、私)


彼女は目の前に来て、手を合わせて頭を下げる。お願いするポーズを取ってきますが、今は勉強に集中です。そろそろここら辺が完璧に頭に入りそうなんですよ。


「お願いします!パフェ奢る以外にもなんでもするので....!」


旅針さんの言った一言に私は眉毛ひとつも動かさずに、正直に言います。


「旅針さん正直言います。私は貴方が嫌いです。勉強の邪魔になるので、誰かと遊ぶ約束は他の人に頼んでください」


ここまで言ったらさすがに、このギャルでも引き下がるでしょう。これで引き下がらなかったら馬鹿という称号を私の中で与えて差し上げますよ。

周りの人は若干引いてますが...周りの人からの好感度なんて私は気にしませんので、ほら旅針さんもそのポカーンとした表情をやめて早くどこか


「購買のコーヒー牛乳も奢...」


「いいでしょう」


「ぇ...?」


「あ....」


....

(ま、間違えたぁぁぁ!!?)


(なんでコーヒー牛乳で反応したんですか私ぃ!バッカじゃないですか私!)


「あ、遊んでくれるの?」


手を合わせて頭を下げたお願いしますのポーズから一変して、旅針さんはパァァァっと明るい笑顔でこちらを見てきました。

ウザイです、やめてください。その勝利が確定した時のような笑顔をやめてください。ウザイの一言です。


「どこで遊」


「....すいません言い間違えました。訂正すると、いいでしょうではなく、いい加減にしてくださいです」


私はそこまでいうと、勉強ノートに目をやります。集中させてくださいよもう...





あれから放課後です。教室で周りの人達色々雑談しながらも帰る準備をしていますね。そういえば昼休みのあれから旅針さんは再びポカーンとした表情になってどこかに行ってしまいました。もちろん勉強も問題なく進められたので最初っからああ言えば良かったなと思いました。さて、準備も終わりましたし、そろそろ立ち上がって教室をでよ....


「時ちゃん!コーヒー牛乳持ってきたから一緒に遊ぼー」


....嫌な展開になりましたね。

横を見ると旅針さんが居て、彼女の手には2本のコーヒー牛乳があって片方のコーヒー牛乳をこちらに差し出しています。

さてどうしましょうか...


「....購買のコーヒー牛乳って1本何円でしたっけ?」


その質問に彼女は困惑したそうで、少し思い出すように目を閉じ頭を少し上に動かすと答えてくれました。


「え?えっとー100円だよー」


「ありがとうございます」


私はそう言って、ポケットから財布を取りどし、その中から100円玉を取り出し、旅針さんが差し出してくれたコーヒー牛乳を受け取ると、その上に百円玉を握らせました。


「それではさようなら」


私はそう言って、彼女の顔を見ずに早歩きでスピードをだし下に降りると、靴を履き替え校門から帰路につきます。


「待ってー!時ちゃーん!!」


そう言って....後ろからガシッと誰かに、腕を捕まれました。いや、誰かは明白ですね、私の嫌いな旅針さんです。


「....なんですか?」


「い、一緒に帰るくらいはいいでしょ?」


彼女は「はぁ...はぁ...」と走ってきたせいか、息切れをしながら言います。結構なスピードを出したそうですね。


「....しょうがないですね、それぐらいならいいですよ」


私は流石に可哀想だなと、心は折れてしまったのでそれぐらいはいいと思って了承します。


「あ、ありがとう!」


「その前に、少し座って落ち着いてくださいね」


「わかった!」


私はこの時、旅針さんを犬みたいな人だなと思ってしまいました。実際あってましたけど。


「ねぇねぇ、時ちゃんはなんか趣味ないの?」


休憩した後、校門を出た瞬間。旅針さんがそんな事を聞いてきました。


「宿題、読書ぐらいです」


「え?他にないの?ファッションしてみるとか、ぬいぐるみ集めとか」


やはりと言うべきか、旅針さんはそんな反応をしてきました、普段の私を見てるならわかってると思うんですけどね。私は勉強一節です。


「ないですね」


私はそう否定して、教室で渡されたコーヒー牛乳パックにストローを突き刺して、少し飲みます。


(甘い...)


(少し気になってましたけど。美味しいですね...結構な量入ってますし、明日放課後買って帰りましょうかね?)


「あ、時ちゃんが可愛い顔してる」


「!?」


私はその一言にびっくりしてストローから口を離してしまいます。


「な、何言ってるんですか?」


私は一言そう否定しましたが、旅針さんは反応しなかったので、特に考えずにまたコーヒー牛乳を飲み始めます。

旅針さんから見て私がどんな顔をしてるのか分かりませんけど、普通の表情だと思います。多分....

あれから少したち、そろそろコーヒー牛乳がそろほろ無くなるなーと思ってたり頃。私が何となく旅針さんの方をみると、彼女は嬉しそうにこちらを見ていましたので、なんかムカッと来た私は少し強く質問します。


「...なんですか、そのニマニマした目は」


「いやー、なんでもー?」


「ならいいんですけど...」


絶対ろくな事思ってないなと、直感でわかりました。やっぱりこの人嫌いです。


「...無くなっちゃいました」


私の飲んでいたコーヒー牛乳はすっからかんになってしまったので、パックの横にある三角形の所を起こし畳みます。


「紙パックって、そんな風にたたむんだね」


「知らなかったんですか?」


「普段はあんまりコーヒー牛乳とかのパック系って飲まないからね、フラペチーノとかならよく飲むんだけど」


「そうですか」


私はそう返事して、ちょうど近くにあったゴミ箱に畳んだコーヒー牛乳のパックを捨てます。周りをみると前まで同じ学校の生徒が居たのですが、今はさっぱりいなくなりました。


(ここら辺はあまり同じ学校の生徒見かけませんし、当然ちゃ当然ですけど)


「おかわり....いる?」


旅針さんがそう言っできたので、彼女の方を見ると。旅針さんはニヤニヤした顔をしながら、彼女の手にはまだ開封してないコーヒー牛乳がありました。


「いえ、大丈夫です」


「まぁまぁそう言わずにー、また可愛い顔見せてよー」


私はその言葉に少しイラつきます。


(なんですか可愛い顔って....)


頭の中で旅針さんの可愛い顔というセリフチラチラと何回も出てきいて、なんかやり返したいと思っていると。ちょうどいいイタズラを思いついたのでやってみようと思い、私は旅針さんが持っているコーヒー牛乳を取ります。


(意外とすんなり取れましたね)


「やっぱいる...」


そして私は彼女の言葉が終わる前に素早くコーヒー牛乳のパックにストローを差し込み、旅針さんの口元に差し込んでいるストローを近づけます。


「お?飲ませてくれるの?」


私は旅針さんのその質問に答える訳もなく、無表情で彼女の目を見つめます。そして、もう少しグイッと旅針さんの口元近くに差し出すと彼女はさすがに気まずく感じたのか、少しするとそのストローに口をつけ、コーヒー牛乳の少し飲みます。


「うん、美味し...」


彼女が感想を言う前に私は旅針さんが口をつけたコーヒー牛乳を飲み始めます。


「あ....えっ....?」


「美味しいですよね、このコーヒー牛乳」


旅針さんに向かって私は一言だけ言いうと、何故か彼女はそのまま固まってしまったので、これはチャンスだと思いましたが、一言「ご馳走様でした」とお礼を言っそのまま早歩きで旅針さんの元から去りました。

旅針さんの最後のポカーンとした顔は面白かったです。


「明日...100円玉渡さないとですね」


私はそんな一言をつぶやきそのまま家に帰るのでした。

そしてゆっくり歩いていると、灰色の小さな一軒家に着きました、ここが私の家です。

私は玄関の前に着くと、胸ポケットから鍵を取り出し、その鍵をドアの鍵穴に入れて回すと「ガチャ」という音がなりました。

私は鍵を抜いて、玄関のドアノブをまわします。


「ただいま」


玄関に入った私はそう言いますが、反応はありません。親はだいたい夜の7時に帰ってきます。

現在時刻は4時37分、私はとりあえず着替えようと自分の部屋に向かうのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る