うそ!姫巫女様なのに?。

猫野 尻尾

第1話:魂の国の姫巫女。

変則系異世界からやって来た女の子シリーズ。



「花はみな女神が姿を変えたもの、もう花は摘まないで」と言い残して、

姫巫女様は蓮華草になった・・・。


なってないですぅ・・・私は現世で生きてます。


「私、「撫子なでしこ」」

正式には「初花撫子比売うぶはななでしこのひめ」って言うの。


ある日のこと、私が住んでる「留魂舎利るこんしゃり」に一人の男子「魂」がやって来たの。

まさに待ってましたってタイミングで。


私の住んでるところは天空に浮かんでいて、野山が広がって丘の上から

遠くに雲海が見えるの・・・夕方には綺麗な夕日も眺められるの。

でも、ここも長くいるから飽きちゃった。

だから他の世界を覗いてみたいって前から思ってたのね。


そこにジャストタイミングで私の前に現れた、私とそんなに変わらない

歳格好の男子。

見るからに頼りなさそうだけど、でもブチャイク男子じゃないからセーフかな?


彼は、私の母屋の前で、うろちょろしてたから他の人に持って行かれないよう、

これ幸いと声をかけたの。


「いらっしゃい」

「よく来てくれました、待ってたんですよ?」


「どうも〜・・・え?待ってたって?・・・俺を?」


「さ、中に入って」


で、よかったらと母屋の中に招待した。


「あの、俺を待ってたってのは?」

「あ、それはあとでね・・・とりあえずお茶でもどうぞ?」


「あの〜ここどこでしょうか?」


「ここは亡くなった人の魂が仮に来るところだね」

「「留魂舎利るこんしゃり」って天空に浮かぶ天界に近い場所」

「魂がここに来ると現世に帰れないまま四十九日過ぎたら魂は黄泉の国へ

行っちゃうの」

「今、あなたの魂はこの世界で彷徨ってる最中だよ」

「完全に死んだ人の魂は最終的には黄泉の国へ行っちゃうからね」


「え〜そうなんだ・・・黄泉の国って聞いたことはあるけど・・・」

「あの世って言われるところだよね」


「だね・・・」

「あなたみたいに、たまに死んでない人の魂がこの世界に彷徨って来る

ことはよくあるの」


「なんで、死んでないって分かるのかって言うとね」

「魂の色が違うからなの・・・生きてるのに幽体離脱した人の魂はピンク色

してるんだけど死んだ人の魂はもっとズズ黒い色してるからね」


「ってことは、あなたはまだ仮死状態で生きてるってことね」

「あなたのオーラはピンク色だもん」


「え?俺はまだ死んじゃったわけじゃないんだ」

「そうなんだ・・・え〜と・・・」


「あ、そうだ、俺「吉岡 祐希よしおか ゆうき」って言います」


「ユウキね・・・私、「撫子なでしこ」」


「撫子ちゃんか・・・」


「私、ユウキみたいにここに来た人の魂が迷わないよう無事に黄泉の国へ

送り届けるのが私の役目・・・つまり神様の使い、姫巫女さんね」


「はあ、そうなんだ・・・姫巫女さんね、よろしく」

「どうりで、神社の巫女さんみたいな衣装着てるんだ」


ユウキは自己紹介も兼ねて個人的情報となんでここに来る羽目になったのか

私に話して聞かせてくれた。


彼は、現在高校に通ってる男子・・・17歳。

ある日のこと・・・。

ユウキは寝坊して遅刻しそうになって慌てて家の階段を降りようとして一番

上から足を踏み外して下まで落っこちて頭をしこたま打って気がついたら、

まったく見たことのないような場所に来てたって・・・それがここ。

周りを見て、すぐに人間が住んでる世界とは違うって思ったらしいの。


「そう、気の毒ね・・・階段から落ちたの?」

「もっとかっこいい死に方ならよかったのにね」


「死に方にかっこいいなんてあるの?、ほとんどかっこ悪いでしょうが・・・」


「ここに来た人の中にビジュアル系バンドのボーカルの人がいてライブで

一曲歌ったあと椅子に座ったまま死んじゃった人がいるよ」

「それってかっこよくない?」


「そのボーカルの人、死なないで全曲歌って客と盛り上がってライブ

成功させたほうがかっこよくない?」


「あ、たしかに・・・まあ、いいです・・・それで」

「で、提案だけど・・・ユウキ、あなた現世に帰りたくない?」


「そりゃ寿命が来てこうなったわけじゃないからね・・・まだ生きてる

みたいだし、帰れるもんなら帰りたいけど・・・」


「じゃ〜四十九日過ぎるまえに向こうに帰らなくちゃね」


「四十九日ってまだまだあるけど、ちゃんと帰れるの?」


「ほんとはね、魂に干渉しちゃいけないんだけどね・・・魂を無事に黄泉

の国へ送り届けることが私の役目だから・・・」

「でも、いいんじゃない・・・バレなきゃいいのよ」


「うそ?、仮にも神様に使える姫巫女様なのに?いいの、そんないい加減で」


「いいの、いいの」


「アバウトだね・・・でもどうやって?」


「私をあなたの世界に一緒に連れて帰ってくれるなら帰してあげてもいいけど」


「・・・・今、連れて帰れって言った?」


「言った、言った・・・私、ここからまじ抜け出したいの」

「お願いユウキ・・・ね?」


つづく。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る