そこに愛はあるのか
初めて見せてもらったアルフレッド様の魔法は、直径一メートルはあると思われる巨大な氷の塊を作る氷魔法だった。
それも軽く手を上げただけで私の頭上に生成してみせたのだ。
その迫力に私は言葉を失った。
ヒュン!
突然風を斬るような音と共に、ものすごい速さで剣先が迫ってきた。
慌てて身体を横に反らすと、アルフレッド様がすぐ側で顔を顰めた。
「チッ、逃げたか」
「当たり前です! 舌打ちまでしていきなりなんですか?!」
「戦場は常にこんなもんだ。 君も知ってるだろう」
「わかってますが!!」
「安心しろ。
ヒィィィィ!
アルフレッド様が扱うのはロングソードの類い、刀身が細く反りのない真っすぐな刃を持つレイピアに近い型だ。
魔法攻撃派のアルフレッド様らしい、突いて確実に攻撃を当てることを重視した剣だ。
当たると冗談抜きに串刺しになる。
魔法攻撃だけじゃなくて物理攻撃まで躱さなきゃならないなんて聞いてない!
気を抜いたら絶対に死ぬ!
「遅い! ツメが甘いぞ!」
「はいっ!!」
「次は五分間だ。 物理攻撃は止めてやるからしっかり逃げろ!」
「はいぃっ!!」
アルフレッド様が勢いよく手を振り下ろすと、宝石の様に輝く氷柱が幾つも発生して、容赦なく襲ってくる。
「躱すだけじゃ体力を消耗するだけだ! 魔晶石を使え!」
「ふ、『
片手半剣の柄を力一杯握り締め、リリアナ様が使った炎剣を必死に思い描く。
すると剣が赤く染まり、ぐんぐんと熱を帯びていく。
らしいけど。
刀身は相変わらず銀色に輝いてる。
もうこれは死なないよう逃げ続けるしかない。
「ホラこっちにもかかってこい! 死にたいのか!」
「無理です! 死にたくないのでもう止めてくださいぃ!!」
どんなに叫んだって、懇願したって、アルフレッド様は聞こえない振りして意地悪く笑うだけだった。
◇◇◇◇
「先ずは一週間よくやった。 褒めてやろう」
「こ、光栄、です……」
「だがやはり君と魔晶石との相性は悪いな。 早急に魔力を吸収出来る方を用意しよう」
「よろしく、お願いしま、す……」
今日も何とか猛攻を逃げ切り、私は息絶え絶えで地面に転がった。
想像以上にアルフレッド様は手厳しかった。
でもお陰で体力と身体能力の底上げができたのだから感謝しよう。
ついでにセロは魔晶石から魔力を引き出せない事も判明した。
『魔力が流れ込んでくる感覚』とアルフレッド様は説明してくれたけど、私には全く伝わってこなかった。
次からは魔力を吸収する魔晶石の可能性についてだ。
本当に研究熱心なアルフレッド様。
ただ私を使わないでもらえるとありがたいんだけどな。
果たして魔晶石はどれほどの量の魔力を吸収できるのか。
実証実験のついでに特訓を受けているけど、下手したら実証する前に死んでしまいそうだ。
まさに命がけ。
「よし、これまでよくやってくれた。 明日は一日休みにしよう」
「本当ですか?!」
「ただその間にフェリスと長剣を受け取りに行ってきて欲しい」
「フェリス様と、ですか?」
「あぁ、何か不満か?」
「いえ、折角ですからアルフレッド様とフェリス様とお二人でいけばいいじゃないですか」
聞いたら途端にアルフレッド様の顔が曇った。
「……俺は仕事だ。 それ以前にフェリスは君と行きたがってる。 ついて行ってやって欲しい」
「……承知しました」
この感じだと、やっぱり一緒に行きたかったんだろうな。
アルフレッド様はわかりやすいけど、フェリス様はどう思ってるんだろう。
親しくしてるから嫌ってる訳じゃないだろうけど。
まだまだ謎だらけの二人だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます