ボクノミコト。

穹乃 羽癒

花浜匙(スターチス)

「少し、おさらいをしようか」


「人間は命が尽きた時、一冊の本……命呼執みこととなる」


「僕たち命呼執守みこともりは、命祀めいしのほうにて保棺ほかんされている命呼執を管理することが主な仕事なんだ」


「他にも、彼らの人生は花として開花し僕たちはその花で栞を作る。そうすることで彼らの物語と残された者たちを繋ぐ導となる」


「まぁ要するに、栞は命呼執を読むための鍵ってことさ」


「例えば、この命呼執に咲いている『紫苑』。この花を摘んで作った栞を命呼執に挟むと表紙に花の名前が、扉と呼ばれる部分に花言葉が浮かぶんだ。紫苑の花言葉は『君を忘れない。遠くにある人を思う』だね」


 そう言いながら彼は、花を摘み取り栞を作る。

 その光景は、あの時と何一つ変わらなかった。

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