第34話 雑談、推し祭り?
「わたしも飛鳥馬さんも話したから、次は下田くんの番だよね。」
なんとなくヤバい予感はしてたんだけど、やっぱり来ちゃったか。
「でもオレ、またダメな答えなんですけど・・。初恋の思い出って無くて、っていうか、二次元ならあるんですけど・・。」
「えー、それ本気? そういう人が居るってネットとかで知ってはいたけど、実際に会ったのは初めてだよ。いやいや全然ダメな答えじゃないよ。ちょっと色々聞かせてよ。」
柏木さんの目が輝き始めた。
あれ?なんか変なツボに刺さっちゃったみたい?
「オレの場合、そもそも他人とのコミュニケーションが得意じゃいないんで、特に女子に興味がないって訳じゃなかったんですけど、なんか自分には関係ないというか、別世界というか、現実味が無いというか、関わりが無いってことですよね。で、初めて一緒に居たいって思った相手は中学生の時に見たアヴァンゲリオンの綾波レイ。側にいて全力で守ってあげたいって思ったんですよね。あと、一緒にいて落ち着くんですよ。って実際に一緒に居たことはないんですけど。ってか、相手は二次元だし。」
「なるほど、綾波レイね。アヴァは誰もが通る定番アニメよね。で、綾波レイ派とアスカ派に分かれるのよね。そして、陽キャはアスカ推しでヲタク系は綾波推しなのも定番よねー。」
「私も綾波推しだよ。ってことはヲタクってこと?」
「まさが違うと思ってたんですか?」
柏木さんが飛鳥馬さんのコメントを瞬殺した。
「ただ、綾波推しである自分を受け入れたら、あぁ、アニメキャラを好きになってもいいんだなって思えて、急に世界が広がったんですよね。そして次にガールでパンツァー、ガルパンの秋山さんが周囲に媚びず、自分自身の趣味趣向に真っすぐで、危なっかしいんだけど、ギリギリ一線を越えずに友達とうまくやってる感じが良いなって思って、この子とつきあってたら自分に正直に生きられて楽しいんだろうなって思ったんです。あとはもう手あたり次第で、見る作品毎に彼女がいるみたいになってましたね。銀河鉄橋ならメーテル、駅のホームでメーテル―って叫びたいですよね。銀多摩なら神楽ちゃん、ブランコで一緒に酢昆布食べたかったですね、けいあんならムギちゃん、一緒に紅茶とクッキー。ラブライブンならリンちゃんだにゃ。ゆるキャンパーなら斎藤さん、ちくわも一緒にキャンプ、なんならキャンプ場に住んでも良いですよ、もう。そしてスパッとファミリーならヨルさん、強さに裏打ちされた総天然色ですよね。」
「なんだか恋愛っていうか、推し祭りみたいな気もするけど、なるほどねー、例外もあるけど、ザ・ヒロイン的な感じじゃない子が多いよね。なんか下田くんっぽいな。わかる気がする。あれ?ちょっと待って、でも今は彼女居るんだったよね?」
「いやだから彼女じゃないですから。」
「だけど、彼女は二次元じゃないでしょ。」
「うーん、確かにそうですね。そう言われてみると、実在の女性に好意をもったのって、芦田さんが初めて?ってことは、芦田さんが初恋の相手!?」
「うわぁ、ぐるっと回って、またそこに戻った? 今日はピーターパンのレアポケモン推しで来るねー。」
「いやいや推してないし、ピーターパン症候群でも無いですから。まぁ、レアポケモンはそうかもしれないですけど。」
結局10時少し前まで3人のくだらない話で笑い転げるツマミ試食会という名の宅飲みが続いた。
「さて、一応私たちの部屋ではあるけど、基地内の宿舎でもあるんで、騒いでると迷惑になるし、そろそろお開きにしようか。明日も仕事だし。」
「そうねー。わたしも部屋にもどって、Netfrogでドラマ見ながら軽く一杯やって寝るかなー。」
「柏木さん、まだ飲むんだ。」
思わずつぶやいてしまった。
「そりゃそうよ、これが楽しみで一日お仕事したんだもん。」
「そうなんですか。もしかして飛鳥馬さんもまだ飲むんですか?」
「ん?私は、まだ〆が残ってるからね。」
「〆、ですか?」
「ほら、コレ。」
飛鳥馬さんが取り出したのは、さっき食堂で作ってたおにぎりだ。
「日本酒も米から出来てるでしょ。で、これを一口ずつ食べながら日本酒飲むとね、米と米のハーモニーで、浪漫飛行が再現できるんだよ。」
「浪漫飛行が再現?」
意味が分からないな。
「飛鳥馬さん、もしかして米米CLUBですか?わたしも懐メロで聞いたことある、ってレベルなんで、下田くんにはゼネレーションギャップですよ。」
柏木さんが助け舟を出してくれたが、結局良く解らない。ま、良いか、重要な部分でも無いし。流石の無敵酒豪族も酔っ払いモードに入ってて、支離滅裂になりかけてるし。
3人の宴は終了し、オレも柏木さんも部屋へ戻った。まぁ、飛鳥馬さんも柏木さんも一人二次会を開催中だと思うけど。
スマホを見ると、メッセージが着信していた。あ、芦田さんからだ。嬉しいのと同時に、ふとさっきの柏木さんのコメントを思い出してしまった。学校のアイドル、不動産屋の娘、フルコンボ、いやいやいや、だって、芦田さんは、まだオレが研究員になる前の1日だけの普通の高校生だった日に話しかけてきてくれたんだから。
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