第8話 政府機関
翌火曜日、教室へ入ると直ぐに担任の山村先生がオレを呼びに来た。
一緒に校長室に入ると校長室には校長の他に2人スーツ姿の男が居た。
「おはようございます、下田君。突然なんですが、お客様がお見えです。あ、彼が下田君です。」
校長が少し申し訳なさそうな表情でオレを紹介すると、スーツ姿の若手が右手で握手を求めながら言った。
「初めまして、防衛省電脳競技局の坂田です。こちらは電脳競技研究所の長峰所長です。」
防衛省!?
「初めまして。。」
「突然のことで驚かれたかと思いますが、現在我が国には、下田さんと同様に、勉強で進学していた世界線から来たと思われる人達が何名かいます。我々は、そのような方達の保護と同時に、我が国防衛のためにご協力をお願いしている部署です。」
「保護と防衛、ですか?」
「はい、正直に申し上げますと、防衛に協力頂くことがメインなのですが、同時に皆さんのような特殊スキルの人達は、各国から存在自体を狙われることも事実ですので、我々で保護する、ということです。」
そうか、ゲームで優劣を付ける世界では、ゲームが強い人間自体が兵器ってことか。戦争相手のゲーマーを殺すとか、拉致して手駒にするとかもあり得るのか。なんだか怖い話だな。
「実は、アジアの某国が下田さんの存在を知って動き出したようなのです。」
「え?」オレが狙われてる?
「下田さん、昨夜グラ8の対戦をされましたよね? その対戦相手は某国系の企業でして、本国へ情報が伝わって、某国の機関が貴方の存在を確認しようとしているのです。」
「あぁ、やはり校外での対戦は止めておけば良かったですね。私達のミスですね、申し訳ありません。」
校長が頭を下げた。
「いえいえ、この手の情報は各国が常に網を張ってますから、いずれは必ず見つけられてしまっていたと思います。」
えぇぇ? 昨日はゲームが上手いだけでちょっとヒーローになれたみたいで良い世界だと思ったのに、翌日には他国に狙われるの?最悪じゃないか・・。
「・・オレはどうしたら良いのでしょうか?」
「そうですね、ここからが本題です。下田さんが我々に協力して頂けるのであれば、我々があなたを保護します。具体的に協力というのは、自衛隊電脳競技研究所の研究員になって頂くことです。」
「え、でも、オレは、まだ高校生で、卒業すらしてないですよ。」
「下田さん、まだ勉強の世界をイメージしてますね。この世界ではゲームの得点が全てです。下田さんの得点ならば大学院卒業相当の証明書が発行されますので問題ありません。」
高校2年にして院卒とは、超飛び級じゃないか。かつ、政府機関への就職まで出来るとは、やはりこの世界はバラ色の世界なのか?
「お役に立てるのであれば、もちろん協力したいですが、オレは元の世界でゲーム三昧の引篭もり系だったので多少ゲームがうまいだけで、別にゲームチャンピオンだったわけじゃないですよ?」
「はい、大丈夫です、そのための電脳競技研究所です。下田さんと同じ世界線のメンバーが研究所で訓練しています。ちなみに指導研究員は元あなたの世界線のeスポーツの準優勝経験者です。」
なるほど・・まさしくゲーム三昧ってことか。オレに向いてるかもな。
「わかりました。よろしくお願いします。」というか、狙われてるなら、これ以外の選択は無いよね。
「では、早速研究所へ向かいましょう。そこで入省手続きも出来ます。また、研究所は宿泊施設も完備されていて、当面はそこで暮らして頂きますので、手ぶらで大丈夫です。なお、我々の活動や、下田さんのような別の世界線の人達の存在は国家機密事項なので、口外されると罰せられる可能性があります。そのため、学校、ご自宅等への説明には、我々の専門チームが対応しますのでご安心下さい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます