第13話 忍び寄る影は見られていた。
「では、行きましょうか」
商隊は、町を出発をする。
きちんと、捕まっていた人たちは、解放をしてきた。
この町は怪しいから、一つ手前の村へ行くようにと説明をして。
ただ、見えていた領主の館。あの人が後ろで糸を引いているとなると、何処だろうが一緒だが。
昨日と同じように、適当に護衛をする。
ただ、仲間達には事情は伝えているから、全員が警戒をしている。
―― その日彼らは、いつもの様に、決められた仕事をこなしていた。
今の頭となってから、安全に盗賊が行えている。
街道とは違う、もう一本の道。
そこから先回りをして、街道を倒木や落石で塞ぐ、荷馬車が通れない程度に隙間を空ける。
商隊の後背を突けば、奴らは、荷物を置いて逃げ出す。
じゃまな男は逃がし、足の遅い女は捕まえる。上り坂を素早く逃げる奴は少ない。
荷馬車には、当然だが家紋などは入っていない。
奪った後は、商隊の振りをして、街へ帰れば良い。
「今日は、良い天気だなあ」
「全くだ。絶好の盗賊日和だ」
この盗賊団、弱い奴は弓隊。
そして、剣技を習えばサポート部隊。
そして上位は、実行部隊となっている。
むろんそのランクで、報酬に差が出る。
だがその区別により、安全が確保されている。
そして、いつもの場所。
峠よりは手前で、回り込み。町からは見えない所。
少し谷となり、尾根にはさまれた所。
いつもの様に、後ろから追いかける。
だが商隊は、止まることなく街道を進んでいく。
「あれ? 止めなかったのか、落石や倒木は?」
「知るか、失敗だ」
目の前を遠ざかる、満杯の荷物達。
その荷物の上で、仁王立ちをする赤髪の女。
少し前。
少し考えて、アシュアスだけが先行をする。
山の上側に、三十人程度の盗賊が待っている。
「自分なら街道を塞いで、逃げられなくする。ちょっと行ってくる」
山道を登る馬車など遅い。
一気に先頭を追い抜き、峠まで駆け上がっていく。
峠の手前で、街道上へ乱雑に置かれた、直径一メートル程度の岩達を発見する。
アシュアスがそっと崖下を見る。下に街道が通っていないことを確認をすると、ぽいぽいと崖下へ、岩を転がす。
設置すれば、もう用はないのか盗賊達は、少し下手。さっき気が付いた所に集まっているようだ。
少し峠側に進み、崖の上へと上がる。
奴らの道を見つけると、一気に駆け下りる。
道の脇に膝をつき、街道を見張る盗賊達。
全員が弓を構えている。
止まることなく、十メートルはある崖下へと、盗賊達を突き落としていく。
それは、滝壺へ落ちる水のように、端から順に崖下へ見事に落ちていく。
下では、クノープ達が待ち構えており、順に縛っていく。
三十人の弓隊。ひとつなぎの大盗族が出来上がる。
もっと下ると、二十人ほどの出番を待つ男達。
アシュアスは、音を立てないくらいで、雷をばら撒く。
これも、崖下へ投げる。
あと十人ほど、もう少し下に居る。
「結構面倒だな」
ぼやきながら走っていく。
「なぜ、馬車が止まらねえ」
「どうせ、へまをしやがったんだ。奴ら面倒ごとは新人にやらすから、綺麗に封鎖ができていなかったんだろう」
「失敗だ」
幾人が同様の判断をして、崖上に戻るつもりで、道となっている涸れ沢へ移動をしようとした。
だが、何かが駆け抜けると、体が動かなくなっていた。
アシュアスは持っていた紐で、ひとつなぎにして行く。
それを引きずり、坂を登っていく。
途中で見つけた、呻いている二十人をまた縛っていく。
そうしていると、仲間が降りてくる。
「商隊は、峠で休憩中」
「りょーかい。こいつらは、連れて行けば金になるんだろ」
「きっとなるでしょ」
そうして、馬車の後ろで引きずられていく盗賊達。
その頃、峠の反対側でも、盗賊達がハッスルをしていた。
こっちは、本来の手順通りに、乱暴狼藉中。
「くっ。人数が多い。それに、矢が面倒だ」
街道に置かれた岩を抜け、身一つで逃げ出した商人や護衛達。
逃げ遅れた商人を冒険者達が守っているが、かなり厳しいようだ。
そこに、馬車がやって来る。
「助かった」
安堵をした冒険者。
「おおい。手を貸してくれ。盗賊だ」
『海竜の天敵』というチーム。その代表であるエデュが、手を振る。
むろん、アシュアス達は分かっていた。
盗賊達を結んだ、殿の馬車。リーポスと代わって荷物の上にフィアが登り、弓で盗賊達を見張る。
気が付けば、岩がなくなっていた。
「あれ、いつの間に」
「ああ、あの若い子が崖下に投げちまった」
エデュの問いかけに、イーリスが雑に答える。
オッサンのエデュ。一応チームの代表だが横で腕を組み、仁王立ちをするイーリスが実質的に仕切っている。
イーリスは女性。
日焼けした肌。亜麻色の髪とブラウンの瞳。
肝っ玉母さん的な性格は、慕われている。
体型的にも、リーポスとかぶっているのが気になる所だ。
そう言っている間に、崖の上から盗賊達が降ってきて、崖下でも魔法が炸裂をしている。
「すげえな。良かったな。ありゃあ、相当の高ランクだ」
一緒に居た商人や、仲間達も呆然と見つめる。
「すごい」
いま、エデュに剣技を習っているアルトは呆然と見つめている。
弓使いのクリシュは、銀髪でブルーアイ。おとなしい彼女だが、皆が使う魔法を見て、習いたいと思う気持ちが湧いてくる。
「すてき……」
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