悪夢

@hiragi1212

第1話

そこは、祖母の家だった。

母と、3つ年が離れた姉と一緒に、仏壇がある部屋に、私は座っていた。祖母はいなかった。


蒸し暑く、クーラーは無く、湯気が出そうなほど蒸されたその部屋は、とても息苦しかった。

私たちは、静かにそこに座っていた。


急な階段を登らなくてはいけない2階には、行ってはいけないと、小さい頃から母にずっと言われていた。

行ってはいけないと言われれば言われれるほど、そこは憧れの場所になる。


ふと足元を見ると、私は子どもだった。

階段を上がる。

時間帯は夜なのか、しんっとして、何も見えない。真っ暗闇の中。

突如大きな扉が薄っすら見えた。

ここだ。ここが憧れの場所。

私はガラッと勢いよくあけた。


そこは寒かった。部屋なのに、風が吹いているようだ。

あれ、ここは外だったか。そうだ、外にある古屋だ。昔、鶏をたくさん飼っていた、そこの隣にあった古屋。

鶏の餌や、竹で編んだザルなどが無造作に置かれていた。

地面は土で、蟻地獄が住んでいる。

蟻地獄が、三角に土を凹ませる。そこに、蟻が、落ちる。登れない!登れない!ともがく。

その様子を、私は見ている。


手で、蟻地獄ごとすくうと、ウスバカゲロウの幼虫が、わたわたと出てきた。


ふふふ、ケラケラ、と私は笑う。


ふと目の前を見ると、白い着物を着た、髪の長い女の人がたっていた。


彼女も笑う、ケラケラと。

何だか薄く、ボンヤリしたその知らない人に、私は恐怖を感じ、急いで後ろを振り返り、走り出した。


逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!

追いかけてくる。



怖い、怖い、怖い!


怖い!




そこで目が覚めた。

心臓がバクバク鳴っている。

汗をかき、その汗が冷え、冷たい。


夢、そうだ、夢だった。

また、悪夢だった。

何年も前から、毎日明け方に悪夢を見る。

寝起きなのに、ぐったり疲れているのも、もうすっかり当たり前になってしまった。



外では雨が降っていた。

静かな優しい音、パラパラと降り注ぐ雨。

乾いた世界を潤してくれている。


時計を見ると、4時だった。

だめだ、まだ5時間しか寝ていない。

もう一度寝なきゃ…


布団を被りなおし、目をぎゅっと閉じる。


毎日悪夢を見ること。

それは「悪夢障害」というらしい。

実際に病院で診察を受けたわけではなく、ネット調べただけなので、不確かかもしれないけど。

ストレスなどが原因で、そのような事が起こるらしい。


仕事は忙しいけど、毎日充実していると思っている。

私の、ストレスって…



考えているうちに、また眠ってしまった。

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